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ヨルダンへの原発輸出の問題点を 国会で指摘(JACSES)

2011-08-24 17:56:20

2011 年 8 月 24 日衆議院外務委員会参考人発表資料: 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝氏:

1. 冷却水確保に困難な乾燥地域・内陸部の立地:原発予定地のマジダルは世界有数の乾燥地域の内陸部であり、慢性的な水不足に見舞われている。同原発ではキルベット・アル・サムラ下水処理場を拡張して、その処理水を原発の冷却水に使用する予定であるが、冷却水の安定的な確保に課題がある。
2. 地震リスク:ヨルダンはシリア・アフリカ断層上に位置し、地震のリスクを抱える国である。巨大地震が発生した場合、原発本体への損傷のみならず、下水処理場の破損、停電等により、冷却水を供給できなくなる危険性がある。

3. 多い周辺人口と甚大な事故影響:原発予定地は、ヨルダンの首都アンマン(人口約120万人)より40キロ、同国第二の都市ザルカ(人口約80万人、ヨルダンの工場の50%が集中)より15キロの位置にあり、事故時の影響が甚大である。また、原発予定地の下流域には、野菜や果実の一大生産地であるヨルダン渓谷の灌漑地域が広がっており、事故時の農業への影響も計り知れないものになる。

4. 高いテロの危険性:近年、ロケット弾や爆弾を使用したテロが頻発しており、原発はテロの格好の標的となる危険性がある。2005年8月には南部アカバで米軍輸送艦や空港へのミサイル発射事件が発生した他、同年11月にはアンマンのホテル3カ所が同時に爆破され、60人が死亡100人以上が負傷する自爆テロが発生。2010年4月と8月にもアカバでロケット弾が発射されるテロ事件が発生している。

5. ヨルダン経済の脆弱性:ヨルダンの1人当たりGNIは3980ドルであり、依然として外国の援助に依存している。外務省ウェブサイトでは「都市・地方間の所得格差、高い水準で推移する貧困率・失業率、慢性的な財政ギャップなど構造的な問題を抱え、依然として外国からの資金援助、地域の治安情勢、外国からの短期的な資本流入の動向等に左右されやすい脆弱性がある」と指摘されている。このような国で、巨額なコストをかけて原発を建設することは、高い経済・財務リスクを伴う。また、原発事故が発生した場合、同国の財政に致命的な影響を与える可能性がある。

6. 不明確な使用済み燃料の処分方法:使用済み燃料は半永久的な管理が必要だが、処分方法が不明確である。上記の通りヨルダンは地震国で、テロの危険性も高いため、その処分には課題が多い。

7. 情報公開・市民参加の欠如:原発建設中止を求めて、首相府や地方政府庁舎前での抗議行動や署名活動が繰り返し行われている。また、原発に関する情報が公開されていないとして、NGOや市民グループが情報公開を求めている(The Jordan Times、2011年6月1日及び8月17日記事等)。

8. 豊富な再生可能エネルギーの代替策:JETRO「中東および北アフリカにおける再生可能エネルギー市場に関する調査」によると、ヨルダンの1日の平均日射量は5~7kWh/1㎡で、年間平均風速は高度10mで7m/秒を超えることから、太陽熱発電と風力発電の潜在力がかなり高いとのこと。

http://www.jacses.org/sdap/nuke/jordan110824.pdf

http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib2.php?u_day=20110824