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カナダ系ソーラーパワー社(SPN) 屋根の破損対策や非常時給電付きのショッピングセンター(ベイシア)での屋根借り発電展開へ(スマート・ジャパン)

2014-06-30 12:57:05

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カナダ企業の国内法人であるSolar Power Networkは、関東や中部地方にショッピングセンターチェーンを展開するベイシアから33カ所の屋根を借り、合計出力29MWの発電を始める。屋根の破損対応や、非常時の給電などベイシア側のメリットが大きな事例だ。[畑陽一郎,スマートジャパン]

 

公共施設や工場、店舗などの屋根(屋上)を利用し、太陽光発電システムを設置する事例が相次いでいる。地方自治体が施設の屋根を貸し出す事例も目立つ(関連記事)。屋根を貸し出す側は、「地代」を得ることができ、屋根を借りる企業側は固定価格買い取り制度(FIT)による売電収入が目的だ。

ただし、屋根貸しタイプの太陽光発電には、戸建て住宅への設置やメガソーラーなどとは異なる課題がある。例えば借り受けた屋根が太陽光発電と無関係に破損した場合、どのように対応すればよいのだろうか。発電期間が20年間にもわたるのであれば、破損は起こり得る。

別の課題もある。このタイプの太陽光発電では、ほとんどの場合、借りた側が発電設備を所有し、発電した電力を全量売電する。それでは非常時に屋根の上から電力を供給するような仕組み作りは可能なのだろうか。

 

大規模スーパーの屋根で発電


 

カナダ企業の国内法人であるSolar Power Network(SPN)は後ほど紹介するようにどちらの課題にも対応するという。同社は2014年6月、他企業が所有する33店舗の屋根を借り、合計出力29MWの「太陽光発電所」を2014年内から順次立ち上げると発表した。年間発電量は一般家庭9250世帯の消費電力量に相当する3万3500MWh(3350万kWh)、年間68万トンの二酸化炭素排出を削減する能力がある。

屋根を貸し出すのは東北地方南部から中部地方にかけて13の県に121店舗からなるショッピングセンターチェーンを展開するベイシアだ。図1にあるベイシア栗橋店(埼玉県久喜市)は、2005年に開店した店舗。売場面積が1万50m2という同社でも最大規模の「スーパーセンター」だ。


yh20140630SPN_shop_568px.jpg 図1 ベイシア栗橋店の屋根を使った太陽光発電システムの完成予想図 出典:Solar Power Network




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屋根の修理や交換に対応、電力も


「屋根に(太陽光発電とは無関係な)問題が生じた場合、屋根の補修期間中、当社が太陽電池を取り外して再設置する。1カ所当たり4回まで無償で対応する。ベイシアが屋根全体をふき替える場合も、1回は無償対応する。33カ所全ての店舗でこのような契約を結んだ。このような契約を用意している競合他社は少ないと聞いている」(SPN)。

「非常時の電力確保については、ベイシアから要望として受け取った。全ての店舗に売電用の大容量パワーコンディショナー以外に、店舗内に非常時にのみ電力を供給するための小容量パワーコンディショナーを据え付ける。店舗によって非常時に必要な最大出力が異なり、最も大型のものでは100kWだ」(SPN)。

ベイシアがこのような要望を出した理由は、同社が多数の地域の地方自治体と「災害時における物資の供給協力に関する協定」などを締結し、地域の災害支援拠点としての機能強化を進めているためだ。「店舗近隣の住民がベイシアに集まるため、非常時に電力が必要だと聞いている」(SPN)。

どのような発電所なのか


ベイシアの店舗屋根に設置する設備には1つ特徴がある。太陽電池モジュールの設置角度だ。一般には太陽の高度と雨による洗浄効果を期待して、関東地方などでは約30度に設置する場合が多い。「ベイシアの屋根ではほぼ0度に設置する。屋根と水平に設置することで、風荷重を少なくすることが目的だ。発電出力をモニターして汚れの影響を見る他、定期的なクリーニング点検で出力低下を抑える」(SPN)。

発電所第1号は2014年内に完成させ、2015年内に17の施設で発電設備を動かす。「電力会社から接続承認を得ている途中の店舗があるため、詳細な店舗名や出力を公開することはできないものの、2015年内に33カ所とも工事を完了させる予定だ」(SPN)。営業中の店舗の屋根だけではなく、新店舗にも据え付ける。新店舗のうち、最初にSPNの太陽光発電システムを備えるのは、2015年春に開店を予定する伊勢崎駅前店(群馬県)だ。

33カ所の発電設備は、設計・調達・建設(EPC)と管理運営(O&M)の全てをSPNが担当する。「施設の数、発電の出力とも巨大であるため、はっきりした数字は公開していないものの、総事業費は数十億円に及ぶ」(SPN)。