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被災ピアノ 胸に響く 楽器店社長が5ヵ月がかりで再生(河北新報)

2011-09-13 15:15:46

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東日本大震災の津波で泥に沈んだグランドピアノ1台が再生され、震災から半年を迎えた11日、宮城県石巻市湊小で開かれたコンサートでお披露目された。同市の楽器店社長井上晃雄(てるお)さん(82)がボランティアの力を借りて、5カ月がかりで修復した。その姿に共鳴した歌手のクミコさんが出演。再生ピアノは、復興への願いを乗せた旋律を奏でた。
 

「引き返すなら今だ でもやめない 私の人生だもの」。湊小体育館にクミコさんのしなやかで力強い歌声と、ピアノの伴奏が響いた。井上さんは最前列で、修復を何度も諦めかけた半年間を思い、涙をこぼした。

 3月11日。津波は石巻市の中心商店街を襲い、井上さんが営む創業90年の「サルコヤ楽器店」は1階がほぼ水没。ピアノ30台をはじめ、楽器類が海水や泥をかぶった。

 井上さんは一時、廃業も覚悟したが、「負けてたまるかという思いが湧いてきた」。4月中旬、ピアノの修繕を決意する。「残りの人生を懸けても、元に戻してやる」

 ボランティアで調律師ら延べ200人以上が修理に協力。根気の要る作業が続いた。

 鍵盤など木製の部品は乾燥させ、お湯で湿らせたタオルで包んで塩分を除去。さらに乾かした。200本以上の弦は全て交換し、約1ミリの金属製ねじは1本ずつ磨きあげた。

 この取り組みを短文投稿サイト「ツイッター」で知ったクミコさんは6月、井上さんに再生ピアノでのコンサートを提案。2人は震災半年の節目での開催を約束した。

 クミコさんは震災当日、石巻市内で予定されていた公演の準備中に被災し、公演は中止を余儀なくされた。石巻を離れた後も「被災者を置き去りにしたような思い」に苦しんだという。

 多くの思いが結実したコンサートのタイトルは「一歩だけ前へ…」。津波で会員3人を失った石巻シャンソン愛好会や石巻市女高合唱部も出演し、再生ピアノの伴奏で熱唱した。

 再生ピアノはクミコさん側が買い取り、「復興のシンボル」として生かす。井上さんは「やっと一歩踏み出せた。今後も1台でも多くのピアノをよみがえらせたい」と語る。

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/09/20110913t15010.htm