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伊方原発きょう全基停止 四国の電力不足せず (高知新聞)

2012-01-13 18:13:54

Ikata_Nuclear_Powerplant
 四国電力の伊方原発は13日深夜、2号機の定期検査入りで1~3全基が止まる。しかし「四国の4割を占める」とされる原発の電気が消えてなお、四国は今冬も電力不足にはならない公算だ。電力会社の発電能力はベールに包まれて不明な部分も多いが、四国の場合、「そもそも電力は余っていた」実態がはっきり浮かぶ。意外に知られていない「発電の実態」と、今後の需給状況をまとめた。

 供給力は確保

 四国の原発すべて停止―。福島第1原発事故後、各原発と同様に再稼働要件が整わないことなどから起きた事態だが、四国では何が起きるのだろう?
 予想から言うと、「特段のことは起こらない」。四電によると、休止中だった火力の再開、売電の停止などで、「綱渡り」(千葉昭社長)とはしながらも、冬の供給力は確保したという。
 
 長崎から購入

 「四国の電気の4割を占める」。原発のPRでよく聞かれるが、これは発電量ベースの話。設備容量で見れば、原発の割合は「2割余り」に下がる。
 四電が使える設備の容量は総計で857万9千キロワット。原発が止まっても冬が越せるのは、容量の余力があるからだ。
 内訳を見よう。火力57%を筆頭に原子力23%、水力17%、自然エネルギー1・5%で、全体の8割は四電自社設備が占める。
 残る2割は、高知県が持つ水力発電や、発電設備を持つ住友共同電力(愛媛県)など、自治体、企業などから買う電力だ。
 数ある契約先のうち、購入量が多いのは徳島県阿南市の電源開発(Jパワー)石炭火力。購入理由は自社で作るより安いためで、購入量は常時30万キロワット程度とみられる。
 長崎県の松浦市、西海市のJパワー石炭火力からも購入。量は50万キロワット程度だろうか。四国で使われる電気に、電線を伝ってきた〝長崎産〟が含まれるとは少々驚きだ。
 
 大都市圏に販売

 「設備の余力」つまり「電力余り」を生んだ理由の一つが、1980年代以降、全国で続いた原発の増設。
 四電の場合、77年の伊方1号を皮切りに80、90年代に2、3号と増やした。
 増設の〝熱源〟は、電気事業法が定めた料金制度「総括原価方式」。資産に一定の報酬率(四電は3%)を掛けた金額を電気料金に転嫁できるので、発電所を造って資産を増やすほど、電力会社は利益が膨らむ。
 一方、四国外の大都市圏に売る「売電」は、電力余りの副産物かもしれない。
 詳細は「民間同士の契約」を理由に明かされていないが、業界内では「融通」と呼ばれ、増設とセットのように継続してきた。
 四電の説明では、これまで常時30万~50万キロワットを販売。相手先は主に関電とみられる。
 地方から大都市圏に送電される構図は、量の多寡はあれ、福島第1原発が東京の電気消費を賄ってきた歴史ともダブる。
 
 夏は節電必至?

 問題は全基停止が今夏以降も続いた場合。夏のピーク需要を570万キロワットとして、推測を交え概算しよう。
 四国全体の設備容量857万9千キロワット。ここから伊方1~3号(202万2千キロワット)、休止中の阿南火力1号(12・5万キロワット)、夏に定期検査をする可能性がある坂出火力2号(35万キロワット)を引き、さらに天候に左右される水力発電の減少分を2~3割とみると、計算が立つのは550万キロワット程度か。数字上、ピーク時に一定の節電をすれば乗り切れる計算になる。
 ただし、3基停止に伴う火力の燃料費増で、1日3億~4億円の負担が生じると四電は説明。停止が続けば、電気料金が上がる可能性がある。
 初の3基停止。原発、電気のリアルな姿がおぼろげに見える。
 四電によると、停止は13日午後11時50分ごろの見通し。

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