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原発作業:偽装請負、全国で横行(毎日)

2012-02-03 14:37:18

玄海原発の定期検査で、作業を終えて続々と出てくる労働者を乗せた車=佐賀県玄海町で2011年12月14日
関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)の改修工事を巡る偽装請負事件で、職業安定法違反に問われた一瀬秀夫・太平電業大飯事業所長(当時)は「会社として長年やってきた」と供述した。同社が全国の事業所30カ所以上で偽装請負をしていることを示す資料も見つかっている。同社が会社ぐるみで偽装請負を繰り返すとともに、全国の原発でも偽装請負が横行してきた可能性が浮かぶ。

玄海原発の定期検査で、作業を終えて続々と出てくる労働者を乗せた車=佐賀県玄海町で2011年12月14日



 ◇違法認識「長年、会社ぐるみで」


 原発労働を巡っては、複数の派遣会社の介在による給料の中間搾取が問題視される。今回の事件でも指定暴力団工藤会(北九州市)関連の総進工業が絡むなど、暴力団の関与も指摘されてきた。

 捜査関係者によると、一瀬被告は「会社として長年やってきた。他の原発でも同じようにやっている」と供述した。同社執行役員の大阪支店長も事情聴取に「自社で多くの作業員を雇うことはできないので、違法と知りながら昔からやっていた」と話したという。

 原発関連で偽装請負が横行していることを示す証言が別の原発の周辺でも得られた。

 佐賀県の50代男性は約3年前、定期検査中の九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で作業に従事。「親方」と呼ばれる個人の人材供給業者を通じて建設会社に派遣された。親方は「建設会社から業務を請け負った」とするが、男性は建設会社員の指揮下で働いたうえ、「親方が5000円をピンハネし、手取り日当は8000円だった」と話す。

 ある派遣業者は「親会社から何人必要という書類が送られ、うちから名簿と作業員を出して親会社の指揮下で原発に入る。給料はうちの取り分を抜いてから作業員に渡す」と解説し、別の業者は「人集めに暴力団関係者が入ることもある。トラブルを抑えてくれるから使いやすい」と打ち明ける。

 このような違法な労働形態はなぜ見過ごされてきたのか。ある労働基準監督署の監督官は「原発は作業によって業者の親子関係が入れ替わるなどし、労働形態が把握しにくい。また、原発への立ち入りには、テロ対策のため事前連絡が必要で、抜き打ち調査も難しい」と話している。

 枝野幸男経済産業相は事件を受け、各電力会社に法令順守と暴力団排除対策を指示した。一方、原発労働に詳しい萬井隆令(よろいたかよし)・龍谷大名誉教授(労働法)は「偽装請負は昔から横行しており、本気で排除したら原発は動かなくなる。電力会社や元請けが作業員を直接雇用するしかないが、その覚悟がどこまであるのか」と指摘する。

 ◇偽装請負◇


 業務を受注した請負会社が労働者を送り込み、発注元の指揮下で仕事をさせる行為。請負会社が発注元から独立して仕事をする本来の請負とは異なり、発注元の裁量で労働者を低賃金で働かせたり、容易に人員削減ができる。使用者責任があいまいになることから、職業安定法や労働者派遣法で禁止されている。

 ◇事件概要◇


 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の改修工事に絡む偽装請負事件で、小倉区検(北九州市)は2日、福井県敦賀市、太平電業福井地区営業所長(当時・大飯事業所長)、一瀬秀夫(58)▽京都府舞鶴市、高田機工社長、富田好(59)▽北九州市若松区、ドリーム(当時・総進工業)役員、池上加奈枝(36)の3容疑者と太平電業(東京都千代田区)、高田機工(福井県高浜町)の2社を職業安定法違反などの罪で略式起訴した。

 小倉簡裁は同日、太平電業など2法人と一瀬、富田の両被告に、それぞれ罰金50万円、池上被告に罰金25万円の略式命令を出し、即日納付された。

 命令によると、3被告らは10年3~9月、請負契約を装って総進工業社員の男性を大飯原発の改修工事に従事する労働者として派遣し、太平電業の指揮下で工事に従事させた。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120203k0000m040083000c.html