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カーネギー財団:「福島」は避けられた (むささびジャーナル) 結局、日本人は「まぬけ」ということか

2012-03-13 16:23:45

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民間事故調の報告書とは別の話ですが、アメリカのカーネギー財団(Carnegie Endowment)のサイトを見ていたらJames M. ActonとMark Hibbsという核政策の専門家の書いたWhy Fukushima Was Preventable(福島が避けられた理由)という論文が掲載されていました。非常に長くて技術的な論文であり、とてもむささびの手には負えないものなのでありますが、ここをクリックすると読むことができます。

福島における原発事故をきっかけにして、原子力に対する反発が世界的に広がっているが、福島の事故は国際的にみても例外的に遅れた日本の原子力の安全体制によって起こされたものなのであり、日本以外なら防げた事故なのだ、と言っている。イントロの部分だけ紹介すると、








The Fukushima accident was, however, preventable. Had the plant’s owner, Tokyo Electric Power Company (TEPCO), and Japan’s regulator, the Nuclear and Industrial Safety Agency (NISA), followed international best practices and standards, it is conceivable that they would have predicted the possibility of the plant being struck by a massive tsunami. The plant would have withstood the tsunami had its design previously been upgraded in accordance with state-of-the-art safety approaches.
福島の原発事故は防ぐことができたものなのである。あのような深刻な事故になってしまったのは、東京電力と原子力安全・保安院が国際的に認められたきちんとした対処法と基準に従ってさえいれば、原発が巨大津波に襲われる可能性は予想できたであり、しっかりした安全性追求という考え方に沿って原発の設計がアップグレードされていたならば、あの津波にも耐えることができたはずである。


東電と保安院の津波による危険性の評価方法が国際基準から見ると大きく遅れていたのだそうで、特にコンピュータによる津波のモデリングが不十分であったことを挙げています。2008年に実施されたシミュレーションでは津波の危険性が示唆されていたのにそれが不当に低く見積もられていただけでなく、そのシミュレーションに対するフォローアップもなされず、大震災の4日前になってようやく保安院に報告された。さらに保安院もそのシミュレーションを検討して、しかるべきコンピュータ・モデリングのツール開発を行うことを怠ったとしています。

これはすでに言われていることですが、保安院が原発推進が仕事である政府機関(経産省)や原子力業界から独立していないこと、日本の原子力業界は地震に対する安全対策に力を入れるあまりそれ以外のリスクについては注意を怠ってきたことを指摘して










Bureaucratic and professional stovepiping made nuclear officials unwilling to take advice from experts outside of the field. Those nuclear professionals also may have failed to effectively utilize local knowledge. And, perhaps most importantly, many believed that a severe accident was simply impossible.
原子力に携わる官僚たちがお役所的・専門家的な縄張り主義にこだわりすぎて、自分たちの分野の外の世界のエキスパートからの助言に耳を貸さなくなっていた。さらにそれらの原子力の専門家たちは(原発が立地している)地元が持っている知識を効果的に生かすことにも失敗したのかもしれない。おそらく最も重大なのは多くの人々が深刻な事故など起こりっこないと信じていたということである。


と言っています。










▼ひょっとするとこの論文に書かれていることは、3・11以後すでにいろいろと言われていることなのかもしれないのですが、このイントロや民間事故調の報告書などを読んでいて心底悲しくなるのは、日本の「知」の世界に属する人々の信じがたいような閉鎖性です。民間事故調の北澤委員長が言うように、安全性神話に自縄自縛されてしまうような頭脳しかないのに地震と津波の巣窟のような日本に50基以上もの原発を抱えること自体が人類にとって危険なことなのではないかと考えてしまいますね。そのことがカーネギー財団のような国際機関によってしっかりPRされたようなものです。

http://www.justmystage.com/home/jiroharumi/backnumbers-236.html#no5