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福島・いわき市での地元企業主導による石炭火力新設計画、バイオマス専焼火力に切り替え。ただ、バイオマス燃料をどこから調達するか不明なまま。環境NGOらの懸念続く(RIEF)

2019-01-25 14:35:04

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 福島県の地元企業が、県内いわき市で計画中の石炭火力発電所新設事業を、当初の石炭混焼からバイオマス専焼発電に切り替えることになった。石炭火力新規建設に反対してきた環境NGOは、バイオマス転換を評価する一方で、東京電力福島原発事故による放射性物質汚染疑念のある森林資源等を活用する可能性等に懸念も示している。石炭火力問題とともに、再生可能エネルギー発電燃料の「トレーサービリティ(追跡可能性)」も問われている。

 

 いわき市の好間工業団地で石炭火力発電所「いわきエネルギーパーク新設計画」を計画中なのは、地元の発電関連企業の「エイブル」(本社・大熊町)。同社は東電事故前まで、東電福島第一、第二原発のプラントメインテナンス等を主要な業務としてきた。現在は再エネ事業も含めて幅広く電力関連事業を展開している。

 

 同計画は、工業団地内に、発電容量11万2000kWクラスの石炭火力発電所を建設するというもので、「いわきエネルギーパーク新設計画」と呼ばれている。当初は石炭に一部バイオマス燃料を混焼するとしていた。

 

 だが、環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、昨年11月5日に同社が福島県に対して出した環境アセスメント手続きで「事業内容修正」として、燃料主を石炭からバイオマス専焼に切り替える旨を示していたことがわかった。

 

 KIKOは、これにより、2012年以降に把握された日本国内の石炭火力発電所建設計画50基のうち、9基が中止・燃料変更となった(50基中、11基が稼働、3-基は建設中もしくは計画中)として、温暖化加速への影響の多い石炭火力発電所が一つ中止になったことを歓迎する、との声明を出した。https://www.kikonet.org/press-release/2019-1-24/able-cansel-biomass

 

 同計画は、国が定める環境アセスメント法の対象11.25万kWよりもわずかに規模が下回る11.2万kWで、国のアセスメントの対象からはずれ、福島県環境影響評価条例の対象として審査されてきた。県条例に基づき、2014年5月に環境アセスメントの方法書、2015年12月に評価書がそれぞれ公表され、すでにアセスメントの手続きを終えた形となっていた。

 

 しかし、地元住民らから石炭火力新設への強い反対の声が出ているほか、建設予定地の、いわき市議会でも質疑が続き、県の意見でもバイオマスの混焼率を高めるべきなどの指摘が相次いでいた。

 

 エイブルの燃料転換は、こうした県内外の意見を受ける形で、修正したとみられる。ただ、KIKOは木質バイオマス火力発電についても、「森林資源のマテリアル利用や、生物多様性の保全等の観点から、適正な利用を行わなければ、持続可能性の観点から大きな問題となる」と指摘している。

 

 バイオマス燃料をアジアなどのパーム椰子殻などに頼る場合は、提供国の食料供給との競合や森林資源保全問題が起きる。県下の森林資源等を活用する場合は、東電事故による森林の放射性物質残留の可否を明確にしなければならない。エイブル社は、現時点では「バイオマス専焼」の詳細は明らかにしていない。http://rief-jp.org/ct10/86273

 

 KIKOでは「今回の燃料転換については、環境影響評価条例の『環境影響の低減』を図ったものとして手続きが行われ、環境アセスメントを再度行う方針がとられていない」ことも懸念している。

 

 エイブルは県下でも太陽光発電を複数展開している。東電事故の反省の上に立つならば、火力発電にこだわらず、より自然を生かした発電に切り替える選択肢を検討してもらいたい。

 

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2019/01/20190124_press_release_able_biomass.pdf

http://www.abl-fukushima.co.jp/energy/