GEと日立の共同会社「GE日立・ニュークリアエナジー社」の小型モジュール原子炉（SMR）、米原子力規制委の許認可プロセス開始。低コスト化で、石炭火力のリプレース需要に狙い（RIEF）
2020-02-03 22:48:39
米GEと日立製作所の共同原発会社「 GE日立・ニュークリアエナジー（GEH）社」は、小型モジュール炉（SMR）の「BWRX-300」の設計で、米原子力規制委員会（NRC）の許認可プロセスが始まったことを明らかにした。同SMRは従来の原発より大幅にコストが安いほか、天然ガス火力や再生可能エネルギーにも競争力を持つとされる。GEHは温暖化対応で今後、閉鎖が相次ぐとみられる石炭火力のリプレース需要を目指すとしている。
BWRX-300は軽水炉型で、自然循環技術や受動型安全システムを備え、すでにNRCから設計認証（DC）を得ている高経済・多簡素化BWRの「ESBWR」を土台として開発された。GEが1955年に沸騰水型軽水炉を開発してから、10世代目にあたる。発電出力は30万kW。既存の承認設計を利用できるほか、機器類やサプライチェーンも技術的に実証済みのものを取り入れることで、コストを大幅に削減できるという。GEHは「スマート原子炉」と位置付けている。
NRCの許認可プロセスは昨年12月30日に受け付けられた。このほど、同プロセスの第一段階として、多数の許認可申請に共通する安全審査事項をまとめる技術文書（許認可トピカルレポート：LTR）をNRCに提出した。昨年5月には、カナダ原子力安全委員会による許認可申請前設計審査（ベンダー審査）も開始されている。
LTRの提出を受けて、NRCはBWEX-300設計の先行安全審査を開始する。その後、本格的な許認可プロセスであるDC審査に移行する。同社は「LTRは電力会社がNRCに提出する予備的安全分析レポートを開発するうえでの土台になる、と期待している」とコメントしている。
原発は、東京電力福島第一原発で起きた事故リスク対応の追加によって、安全性コストが上昇している。一方の風力発電や太陽光発電等の再エネ事業は、急速なコストダウンが進展し、原発のコスト面での競争力は厳しい状況が続いている。このため原発開発事業では、資本コストの削減が最大の課題だ。BWRX-300は設計開発の全段階を通じてコストを目標内に収めるアプローチを導入、採ったという。
その結果、設計を大幅に簡素化することで、従来型の大型原子炉や他の軽水炉型のSMRに比べ、大幅に削減できるとしている。原子炉の中での競争力向上だけでなく、今後の温暖化対策で“ライバル”になる天然ガス活用のコンバインドサイクル・ガス発電や、洋上風力発電等の再エネ事業に対しても競争力を回復できるとしている。
すでに、北欧のバルト三国のエストニアや東欧のポーランドが同機の建設に関心を表明し、GEHはフィージビリティスタディ実施に向けた覚書がすでに現地企業との間で結んでいるという。をカナダでも建設に向けた当局の審査が始まっている。
GEHのJon Ball上級副社長は「カーボンフリーエネルギーに対するグローバルな需要が増大している。われわれは今回の革新的なSMR技術に大いに期待を持っている。NRCの本ライセンス取得に全力で対応する」と決意を示している。
米国ではGE日立以外でもSMRの開発が進んでいる。これまでにNuScale Power社（オレゴン）が、60MWクラスのSMR軽水炉のデザイン認証申請を2017年1月にNRCに提出。2019年7月には第二、第三フェーズのレビューを完了しており、今年9月までに全フェーズのレビューを終える予定とされる。またSMRベンダーの「Holtec International社」もSMR-160の事前申請段階にあるという。別のベンダー企業、BWXTも準備を進めている。
GEHはすでに多くのエネルギー企業等と連携している。米エネルギー大手のドミニオン・エネルギー、テネシー川流域開発公社（TVA）、ベクテル、MIT等。
GEHは2017年6月にGEが6、日立が4の割合で共同出資して設立された。原子炉および原子炉関連のサービスを提供する世界有数の企業。ノースカロライナ州ウィルミントンに拠点を置く。日本法人の日立GEニュークリア・エナジー社は日立が8、GEが2の割合。
Research Institute for Environmental Finance