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ノルウェーの世界最大ソブリンウエルスファンド、ミャンマーの国軍と合弁企業を持つキリンホールディングスを「投資見合わせの観察対象」に指定。ビール事業が国軍の資金源の可能性(RIEF)

2021-03-08 07:40:11

Myanmmer001キャプチャ

 ノルウェーの世界最大のソブリンファンドである「ノルウェー政府年金基金」の資産運用を担当するNorges Bank Investment Management (NBIM)は、投資先のキリンホールディングスのミャンマー国軍との協力関係を精査するため、同社への投資を注視する観察対象に指定した。キリンはミャンマーの軍事政権時代の1995年に同国に進出し、国軍と合弁企業を設立する形で同国でのビール事業を展開してきた。ビール事業からの収益が国軍を支えているとの見方も出ている。

 キリンはミャンマーで、2件の合弁事業を運営している。首都ヤンゴンに拠点を置く「Myanmar Brewery Limited (MBL)」と第二の都市、マンダレーの「Mandalay Brewery Limited(MMB)」だ。ともに国軍と取引関係のあるMyanma Economic Holdings Public Company Limited(MEHPCL)との合弁事業で、特にMBLは、軍事政権下の1995年に設立された、もっとも初期の外資合弁会社の一つとして知られる。

 キリンでは国軍による軍事ク―データ―が行われた2月1日の4日後、「両ビール会社を通じてミャンマーの経済や社会に貢献することは今後も変わらず当社が目指すところだが、現在の状況に鑑みるに、国軍と取引関係のあるMEHPCLとの合弁事業の提携自体は解消せざるを得ない。当社はそのための対応を早急に開始する」とのコメントを発表している。両ビール会社からの収益はミャンマー国軍の資金源になっているとされる。

 NBIMはキリンのこの報道発表を受けて、理事会で検討した結果、「キリンへの投資は、軍事ク―データ―あるいは衝突という状況下で、個々の人権に対する深刻な侵害行為に貢献する受け入れ難いリスクにつながるため、観察対象とする」と決定した。ノルウェー政府年金基金のグローバル投資に定める「Observation and Exclusion of Companies」のガイドラインに基づく措置だ。

 観察対象後、改善がみられない場合は、投資除外扱いになるとみられる。今回のキリンの場合、改善措置は、キリン自体が明言しているように国軍系企業との合弁解消ということになるが、現下の情勢の中では、そうした経済取引行為を実行するのは困難とみられる。当面、操業停止と合弁企業の会社資産の流用を防ぐ措置を講じること等が考えられる。

 NBIMの今回の措置は、キリン自身のミスを問題にしているわけではないが、「ミャンマー国軍」のステークホルダーとしてのキリンの企業責任を問う形でもある。軍が政権を掌握していたり、人権侵害が著しい国においてビジネスを展開する場合、同国内の政権に内在するリスクをしっかり把握しておかないと、グローバル投資の視点からは「ステークホルダー責任」を問われることを覚悟する必要があるということだ。

 https://www.nbim.no/en/the-fund/news-list/2020/decisions-on-observation-and-exclusion/

https://www.kirinholdings.co.jp/english/news/2021/0204_01.html

https://www.kirinholdings.co.jp/news/2021/0204_01.html