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世界の若者をターゲットとする中国の衣料品ブランド「SHEIN」の「ウルトラファストファッション」製品に有害物質、労働環境も劣悪。グリーンピースが調査で摘発(RIEF)

2022-12-13 15:38:28

SHEIN001キャプチャ

 

 環境NGOのグリーンピースは、中国の衣料品ブランドの「SHEIN(シーイン)」が超低価格でトレンドの洋服を、若年層の女性顧客をターゲットに世界中で販売する「超高速ファッション(ウルトラファストファッション)」の製品に、人や環境に有害な物質等が含まれているとする調査結果を公表。同社に対して是正を求めるとともに、消費者の若者にも警告している。

 

 グリーンピースジャパンによると、SHEINは、毎日6000近くの新しいデザインを市場に出品し、 他のどのファストファッションブランドよりも多く、安価なファッションアイテムを生み出していることで知られる。しかし、販売する衣類の多くがポリエステルやナイロンなどのプラスチック繊維で作られ、SHEINの製品は「低品質で長持ちしない、使い捨てファッションアイテムであることが多い」と指摘している。

 

 ファッション製品の「使い捨て」傾向は、ファッションブランドが 流行の移り変わりを加速させることで、 服が使い捨てられるペースがどんどん速まってきた。 ファストファッションが生まれた15年前と比べると、現在、消費者が購入する衣料品の点数は 一人当たり平均して60%増えた一方、 手元に置いておく期間はおよそ半分になっているという。

 

 グリーンピースが問題視するのは、「使い捨て」による廃棄物の増加だけではない。グリーンピース・ドイツは、欧州のオーストリア、ドイツ、イタリア、スペイン、スイスの各国にあるSHEINのウェブサイトから 、男性、女性、子ども、幼児向けの衣服や靴など47点を購入して 独立研究機関のブレーメン環境研究所で分析した。その結果、靴から非常に高いフタル酸エステル類が検出され、子ども用衣類には、発がん性のあるホルムアルデヒドが含まれていることがわかった。いずれも EU規制値を超える有害化学物質を検出したとしている。

 

ドイツの研究所で分析した
ドイツのブレーメン環境研究所で分析したところ、有害物質が多数検出された。

 

 フタル酸エステル類は内分泌攪乱乱作用があるほか、生殖毒性、発達毒性、組織障害等の影響が報告されている。ホルムアルデヒドは、皮膚障害や呼吸器障害を起こすほか、発がん性、催奇形性、神経毒性等の影響が知られ、水生生物にも影響を及ぼすとされている。

 

 SHEINはオンライン販売だが、商品中にこれらの物質が含まれているとの情報は開示していない。グリーンピースは「消費者の安全を保障するために、製品に使用されている物質は公表されていなくてはならない。オンライン販売の大手ファッション企業が、除外するべき有害化学物質のリストを公表していないのは問題」と指摘している。

 

 製品だけではなく、製造工程での問題も指摘されている。英国テレビのChannel 4がSHEINの工場に潜入調査を行ったドキュメンタリー「Untold: Inside the Shein Machine」によると、同社の工場労働者は1日11時間、1カ月に29日間働くことが頻繁にある。 休日は一カ月に1日だけだったり、縫製工場では1日18時間もの長時間労働を強制していることも報道されているとしている。

 

 ある工場では基本給がなく、 服を1着を作るごとにわずか0.27元(約6円)の口銭が支払われるだけで、作業上でミスをすると罰金が課されるなどの劣悪な労働環境となっているという。

 

 SHEINは製品にリサイクル素材の使用などをアピールし、サステナブルな素材の使用を広告で強調している。しかし、グリーンピースの調査によると、実際には、女性服の60%近くがポリエステル製で、これら女性用の衣料品5万5000点のうちで、リサイクルされたポリエステルを使用した商品はたった237点だったという。その他にもナイロン、アクリルなど石油由来の素材を使用した製品が多くあるとしている。

 

ケニアの廃棄物処理場。大量の衣料廃棄物が山積みされている。
ケニアの廃棄物処理場。大量の衣料廃棄物が山積みされている。

 

 使用済み製品等の廃棄物問題も深刻だ。SHEINは2022年6月、ガーナの繊維廃棄物労働者と協力しているNGOに、1500万㌦の寄付を発表した。また、環境正義、教育、ファッション開発の分野で活躍する環境NGOのOr Foundationと生産者責任基金を設立した。

 

 しかし、グリーンピースはこうしたSHEINの寄付活動やNGOとの連携に対して疑問を投げかける。膨大な安売りファッション製品を市場に供給して地球の貴重な資源の浪費に依存し、持続可能性とは程遠いビジネスモデルを確立しながら、 寄付や基金団体の設立などで、環境へ配慮していると見せかける「グリーンウォッシング」で、現在のビジネスモデルを維持しようとしている、と疑念を向ける。

 

 グリーンピースは今年4月、SHEINが提携するアフリカ・ケニアの廃棄物処理場などの現地訪問を実施。そこに、欧州や中国等から大量の古着や新品の服が送られ「古着」として売られる一方で、送り込まれる洋服の量が多いために、処理できず、結局は埋め立てや廃棄物処理になっている実態を確認したとしている。2019年にケニアに輸送された古着は18万5000㌧。古着の約30~40%は市場価値がないので5万5500~7万4000㌧分が廃棄物になったとみられるという。

 

 グリーンピースは、「SHEINのようなウルトラファストファッションの流行によって、衣服は使い捨ての包装のようなアイテムに変わってしまった。アフリカなどの経済後進国に輸送される大量の繊維廃棄物を止めるには、ファストファッションアイテムの生産・販売を大幅に減少させる以外に方法はない。グローバルなファッションブランドは、生産する数を減らし、より高品質で長持ちし、修理や再利用が可能な服を生産するビジネスモデルに完全に変わる必要がある」と、サーキュラーエコノミーへの転換を呼び掛けている。

 

 グリーンピースは世界のアパレル産業に対し、有害物質の使用と排出を撤廃するよう呼びかけるキャンペーンを2011年から実施している。それに対して2018年までに、ユニクロやナイキやリーバイスなど、アパレル製品の世界シェアの15%を占める80社からキャンペーンに対する合意を得ているという。

 

 同時に、消費者に対しても、ファストファッションに「踊らされず」に、持っている服を捨てる前に直したり、誰かと交換したり、新品を購入する前にセカンドハンドでお気に入りを見つけるなどのファンションセンスの転換を求めている。「洋服の寿命を1年から2年に伸ばせれば、温室効果ガスの排出量を年間24%削減することができる」と。

https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2022/12/12/60506/