アフリカから中東に広がるサバクトビバッタの異常発生、衰えず。国連の緊急対応ファンドが1000万㌦の追加資金供給。4月の食糧収穫期が危機に。大群はパキスタンにまで迫る(RIEF)
2020-03-23 21:29:58
新型コロナウイルスの感染が世界的に広がる中で、昨年末から、東アフリカから中東にかけて広がり続けている「サバクトビバッタ」の勢いも依然、衰えをみせていない。4月の農作物の収穫を直前に控え、各国では危機感が深まっている。国連の「中央緊急対応ファンド(CERF)」は国際食糧農業機関(FAO)に対して新たに1000万㌦(約10億5000万円)のローン供給を緊急に決めた。CERFは1月にも1000万㌦の贈与をしており、追加の資金供給で対策強化を計る。
CERFは2005年に国連総会で設立を設立された国連のファンド。世界中で緊急事態が発生した際、人命救助を最優先した資金援助を実施する。資金規模は約3億㌦。欧州諸国や途上国等が主な出資国だが日本は出資していない。コロナウイルス対応でもWHO(世界保健機関)に1500万㌦を供給している。
CERFがFAOに追加資金供給するのは、昨年末から「アフリカの角」と呼ばれる東アフリカのケニア、ソマリア、エチオピア等の諸国を中心に異常発生しているサバクトビバッタ対策のため。同バッタは1㎢当たり4000万匹規模で密集する。一日に150kmを移動、一日に自分の体重と同量の植物を食べる。1㎢規模の群れの場合、一日で3万5000人分の食糧を食べ尽くすとされる。群れが通り過ぎた後は、文字通り、何も残らないという。
サバクトビバッタの異常繁殖は、昨年の干害後に気候変動の影響で10~12月にかけて、各地に激しい豪雨等が起き、そうした異常気象の中でバッタが大量発生したもの。バッタは、1㎢から数百㎢規模の群れを形成し、無数の波のようになって各地域を襲い続けている。さらに雌が産卵を続けることでバッタの数は幾何級数的に増大する。
現在、アフリカから紅海をわたって中東、さらにインド、パキスタンにまで広がっている。パキスタンと国境を接する中国は、バッタの侵入を防ぐため、パキスタンに別途、個別援助をしているという。武漢のコロナウイルスを何とかマネージできそうな一方で、西側でサバクトビバッタが侵入してくるリスクがチラついているわけだ。
こうしたサバクトビバッタ対策のため、今回のCERFの追加資金は、発生源でもあり、最も被害が大きい「アフリカの角」地域のソマリア、ケニア、エチオピアの3か国を中心に供給される。バッタの群れに対して、空中から殺虫剤を散布するためのヘリコプターや飛行機、駆除のための機材運搬用の車両の手配、さらに環境影響評価等のための費用等に充当するという。CERFは2017年にソマリアの飢餓対策で2200万㌦のローンを提供したこともある。
サバクトビバッタの襲来が続く東アフリカ地域では、すでに2000万人が食料不足にさらされているという。まもなく農作物の収穫時期という段階で、バッタの被害を防がないと、食料危機の悪化を避けられなくなってしまう。こうした事態への対応としてFAOは国際社会に対して、東アフリカ諸国を中心にして総額1億5300万㌦の支援を要請している。要請に対してこれまで1億700万㌦の支援確約があり、現在は、5000万㌦弱のギャップ分の埋め合わせが課題になっている。
各国支援や今回のCERF等の支援で、被害国でも対策は次第に強化されつつある。たとえばケニアでは、600人の若者たちを訓練して、各地域での監視業務を整備しているほか、同国政府に対して3機の航空機を新たに配備した。飛行機の追加で日量1500ha分の対策を拡大できることになった。ケニア政府は、今後、5000ha分の追加カバーを目指しているという。
エチオピアでも新たにFAOが航空機を配備し、殺虫剤の空中散布の常態化が可能になった。今月末には2機目の飛行機が同国政府に配備される予定だ。これらの航空機からの散布用の4万㍑以上の殺虫剤も確保されている。ソマリアでは殺虫剤による環境影響を防ぐため、自然のキノコから製造したバイオ殺虫剤での散布が行われている。同殺虫剤は、バッタが食べることで弱まり、最終的に死ぬ仕組みで、化学物質は使っていない。
http://www.fao.org/news/story/en/item/1267170/icode/
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html