食糧需要と競合しない次世代バイオ燃料施設、本格稼働間近(Reuters)
2012-05-22 08:29:42
【２０日ロイター時事】米バイオ燃料メーカーはここ１０年間、大きな期待を担ってバイオ燃料の開発を進めてきたが、成功か失敗かを左右する重要な岐路に差し掛かっている。次世代バイオ燃料の生産施設がまもなく本格稼働するからだ。
これらの生産施設は、バイオ燃料の定義をトウモロコシ由来のエタノール以外に拡大させるもので、同業界が「高度な」新型バイオ燃料に移行する役割を担っている。新型バイオ燃料とは、食糧需要と競合せず、生産過程の二酸化炭素（ＣＯ２）排出量がより少ないものだ。
現在、多くの企業が植物のセルロース、動物の排せつ物、それに植物の油脂を使って大量のエタノール、ディーゼル油、ジェット燃料、それにガソリン成分を生産しようとしている。
同業界を後押ししているのは米政府が掲げる向こう１０年間にわたる目標だ。政府は燃料メーカーに対し、米国の給油所で販売する燃料について、トウモロコシ由来のエタノールとは別に、何十億ガロンもの新型バイオ燃料を混ぜるよう求めている。トウモロコシ由来のエタノールは既にガソリン市場の約１０％を占めている。
この目標に促されて、各バイオ燃料メーカーは生産戦略や事業拡大計画を打ち出している。ただし、太陽光発電や風力発電業界と対照的に、減税措置や助成金に頼っていない。カウエン・アンド・カンパニーのアナリスト、ロブ・ストーン氏は、「これらのバイオ燃料企業は、（連邦政府の量的目標以外に）助成金を当てにしていないケースがほとんどだ」と指摘する。しかし、成長や新規投資が期待されるとしても、投資家がこの技術で大きなリターンを得られるにはまだ数年かかりそうだ。
新型バイオ燃料工場で最も期待されているものの一つが、ミシシッピ州コロンバスにある次世代再生燃料会社ＫｉＯＲの施設。今年下半期に生産を開始する見込みだ。同社は同工場で木製品をガソリンやディーゼル油の成分として使えるブレンドストックと呼ばれる原料に変える。この工場は栽培されたサザンイエローパイン（米南部に分布するマツの一種で、成長が良く硬い木材）をバレル当たり約２５ドル、つまり米国の原油価格の約４分の１で処理する。
業界誌のバイオフューエルズ・ダイジェストによると、米国では今年、量にして約４億ガロン（約１５億リットル）の新型バイオ燃料の新生産が始まる予定だ。さらに１３年初めから１５年までの間に１７億ガロンの能力を持つ施設が稼働開始すると予想され、総生産能力は２３億ガロン近くになる。
２００７年エネルギー独立・安全保障法に基づき、環境保護局（ＥＰＡ）の「再生燃料基準２」では、トウモロコシ由来エタノール１５０億ガロンの目標に加えて、高度バイオ燃料を２２年までに年間２１０億ガロンを出荷するよう求めている。
ただし業者が生産施設を十分に稼働できない場合、高度バイオ燃料目標は削減される可能性がある。石油業界の圧力団体である石油協会（ＡＰＩ）は既に、目標は非現実的として訴訟を起こしている。
http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012052100351
Research Institute for Environmental Finance