HOME12.その他 |スウェーデン、2022年8月から、ストックホルムからドイツ・ハンブルグ等への寝台列車運行へ。気候対策と「ソーシャルディスタンス」維持、欧州の再発見も。他の国にも広がる機運(RIEF) |

スウェーデン、2022年8月から、ストックホルムからドイツ・ハンブルグ等への寝台列車運行へ。気候対策と「ソーシャルディスタンス」維持、欧州の再発見も。他の国にも広がる機運(RIEF)

2020-07-25 16:50:44

Sweden0011キャプチャ

 

 スウェーデン政府は、2022年8月1日から同国首都のストックホルムからドイツ・ハンブルグ等を結ぶ「夜間列車(寝台鉄道)」ルートを新設すると発表した。気候変動対策で、若者を中心に航空機利用を敬遠する動きが広がっていることと、欧州をもっとじっくり旅したいとのニーズに対応する。同国の環境活動家、グレタ・ツゥンベリさんが実践してきたCO2排出量の少ない鉄道利用を政策に反映させる措置といえる。フランスや、チェコなどでも寝台列車復活の動きが広がっているという。日本でもどうですか、JRさん。

 

 スウェーデン政府の発表によると、寝台列車を走らせるのは、ストックホルム~ハンブルグ、同国最南端のマルメ~ブリュッセルの2ルート。ハンブルグ便では、ストックホルムからデンマークに入り、デンマークとドイツの国境で寝台車サービスを提供するという。同国政府は「欧州の新しいルネッサンスの始まり」と位置づけている。

 

 現在のスウェーデンは社会民主党と中道左派、緑の党等の連立政権。グレタさんが毎週金曜日に同国議会前で効果的な気候変動対策の実施を求め続けた相手となる政治家たちが、「寝台列車」の復活で、グレタさんの要請に少し答える形になる。

 

鉄道で欧州各地を訪ねて歩いたグレタさん
鉄道で欧州各地を訪ねて歩いたグレタさん

 

 財政市場相のPer Bolund氏によると、今年秋の予算編成で3000万ユーロの予算を計上するという。同氏は「鉄道利用は、欧州をもっとも持続可能な方法で再発見することにつながる」と指摘。気候変動対策と共に、「ディスカバー・ヨーロッパ」をアピールしている。当面、4年間の運航を予定。その後、利用状況を見て延長も検討するという。

 

 欧州では、寝台列車への人気が、気候変動対策と共に、新型コロナウイルス感染拡大問題を避ける「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」を確保した旅行手段として、じわじわと人気を回復しているという。欧州議会の運輸委員会議員のKarima Delli氏は「スウェーデンの寝台車復活計画は大歓迎だ。すべての国で輸送手段の見直しを進めるうえでの始まりとなるだろう」と指摘している。

 

 スウェーデンの発表を受ける形で、フランスの運輸相のJean-Baptiste Djebbari氏は「2017年に廃止されたパリとニースを結ぶ夜間列車を、フランス鉄道(SNCF)の再建策の一つとして検討したい」と語った。チェコでは最近、首都プラハから5カ国を経由してクロアチアのアドリア海に面する港湾都市リエカを結ぶ列車を運行させた。地中海旅行を計画する観光客に大人気だという。

 

寝台列車は、今も欧州では人気
寝台列車は、今も欧州では人気

 

 今年初めには、ウィーンとブリュッセルを結ぶ寝台列車ルートもスタートした。しかし、コロナウイルスの影響で現在は運休状態が続いている。

 

 6月初めには、ベルギーの寝台列車愛好家グループの「Back on Track Belgium」は、欧州議会とベルギーの政治家に対して、ブリュッセルを欧州の寝台列車サービスのハブに位置付けて、寝台列車ルートの拡大を推進するよう要請をした。ブリュッセルを中心に、スペインのバルセロナ、スウェーデンのマルメ、ベニス、ウィーン、ワルシャワ、プラハその他の欧州の都市を結ぶ構想だ。英仏トンネルを経由するロンドン便も視野にある。

 

 欧州議員のDelli氏は、鉄道による移動は、航空機より時間はかかるものの、CO2排出量は航空機に比べて、1km当たり14分の1も少ない。さらに、飛行場までの自動車利用によるCO2排出量や、空港内での待ち時間等を考慮すると、極めて環境負荷が少なく、かつ利便性も高いと指摘している。

 

 今年年初に、欧州委員会は欧州グリーンディール(EGD)の一環として、気候変動対策で鉄道利用を促進するため、2021年を「鉄道の年」にすることを宣言している。

 

 わが国でも、かつては寝台列車が「ブルートレイン」として人気を博した。だが、現在、定期運行している寝台列車はサンライズ瀬戸・出雲だけという。コロナ対応、気候変動対応を考えると、「ソーシャルディスタンス」のとれる列車旅行は、まさに「次世代の移動手段」としてふさわしいかもしれない。

 

 満員の通勤電車を解消できる見込みのないJR東日本、西日本も、ぜひ、寝台列車の復活を検討してもらいたい。東海道新幹線で大儲けしているJR東海も、その利益をリニア列車などの「スピード偏重」型の鉄道開発に振り向けるだけではなく、宿泊と食事サービス付きの「寝台のぞみ」なども検討してみてはどうか。(RIEF)

https://www.government.se/press-releases/2020/07/night-trains-to-europe-will-now-be-procured/