英国で野生のビーバー復活実験が大きな成果。「ビーバーのダム」で、気候変動による洪水リスク減少、生態系の回復も顕著。英環境省、英全土の自然にビーバー導入支援へ(RIEF)。
2020-08-16 18:59:07
気候変動の激化で、洪水リスクが高まっている英国の田園地帯に野生のビーバー導入を試みる5年間の実験が、生態系の回復等に「大成功」だったとの成果が出た。ビーバーたちは自然林内の河川や湿地帯に自然の調整池となる「ダム」を建設するため、洪水リスクが減じられるほか、ダム周辺での生態系の回復が目覚ましいことが検証された。
ビーバー導入実験は、英国イングランド南部のサマーセット郡のデボンを流れるオッター川沿いの自然林一帯で、英環境省とDevon Wildlife Trustが共同で実施してきた。このほど5年間の実験の成果を検証したところ、ビーバーの生息地ではビーバーが作り出した新たな湿地が多数出現、水質の改善、洪水リスクの減少、魚類や両生類等の生物の増加等がみられたという。
環境相のRebecca Pow氏は「オッター川でのビーバー導入実験は、素晴らしい成功を示した。生態系の回復や気候変動に対する地域のレジリエンスを高め、自然景観の回復にもつながっている」と評価している。 Devon Wildlife Trustの自然保全担当のPeter Burgess氏も「英環境省の方針転換は、英国の野生生物保護にとって画期的な決断だ」と称賛している。
自然保護管轄の公的機関「Natural England」は、今回の成功を踏まえて、「ビーバー導入の次のステップ」を目指している。同団体の会長のTony Juniper氏は、「元々、英国の自然に生息していた動物たちを再導入することは、生態系全体に有益であるとともに、水質改善や洪水リスクの減少にもつながっている。オッター川だけでなく、英国の広い地域にビーバーを導入し、自然再生地域をネットワーク化することを目指したい」としている。
ビーバーの導入によって、デボンの西にあるClyst William Cross Countyの野生保護地区では、洪水多発地帯での安定的な静水地域が、導入前に比べて1400㎡増えて、6880㎡になったという。現在、英国内ではデボン以外にも、スコットランドや北ヨークシャー、イングランドのサマセット、ドーセットなどでも導入実験が進んでおり、さらに他の地域にも拡大される計画という。
https://www.gov.uk/government/news/five-year-beaver-reintroduction-trial-successfully-completed