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世界での森林火災の警報、4月時点で、すでに昨年を13%上回る。生態系破壊とCO2排出増の両方の負荷を表面化。WWFとボストンコンサルが共同報告書で指摘(RIEF)

2020-09-07 17:03:20

WWF00111キャプチャ

 

 環境NGOのWWFとボストンコンサルティンググループ(BCG)は、今年の森林火災の警報数が4月時点で、昨年より13%増えていると指摘。世界で観測される森林火災、野火の75%は人間活動に責任がある、とする報告書をまとめた。すでに今年も、シベリア、米カリフォルニア、アマゾン地域等で大規模な森林火災が発生しており、森林火災の防止と森林保護が急務となっている。

 

 報告書は「火災、森林、未来:暴走する危機」と題したレポート。それによると、2020年4月の世界の火災警報の数は2019年と比べ13%増加した。主な要因は、農業用地への転換を主な原因とする森林破壊と気候変動の影響によって、長期間にわたって高温で乾燥した天候が続いていること。があげられるという。

 

 世界で観測される野火(wildfire; 森林、サバンナ、草原などの火災)は、全ての生物相に影響を与えている。消失した森林の面積は、火災により焼失した面積全体の約10%だが、森林の持つ高い炭素貯蔵力が破壊されることから、火災に伴って発生するCO2放出量の4分の1が森林火災で占めるという。

 

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 地球上で発生する野火の増加は、意図的または人間活動によるものがほとんど。北半球で生じる大半の野火は、ゴミや瓦礫の焼却、労働災害、農業による過剰利用など過失によるものとされる。ブラジル・アマゾン地域等で問題になるように、放火によって拡大することもある。



 一部の熱帯および亜熱帯地域では、森林火災は主に土地利用の変化、耕作、および新たな農業地の開拓のために意図的に起こされている。森林火災が自然に発生するか、人間活動により故意に発生するかに関わらず、その影響はここ数十年で増大している。

 

焼き畑農業による意図的な焼却が多い
焼き畑農業による意図的な焼却が多い

 

 焼失した面積、火災の頻度、深刻度の3つの要因から、気候変動の影響がこれらの火災の増大に関係していることが明瞭だとしている。火災は森林を減少させ、生物多様性や生態系保護に打撃を与えるだけではなく、火災により放出されたCO2の増大は、地球温暖化を加速させ、その結果、異常気象が高まり、森林火災が起きやすくなるなど、さらなる悪循環を生みだしていると指摘している。



 温暖化の加速と、森林火災増大の「負のサイクル」は、温暖化によって極端に高温となり乾燥した気候が、より頻繁に激しい火災を発生させる。その結果として、森林の炭素排出量を増加させるサイクルとなる。今後も森林焼失の増大傾向が続く場合、炭素の放出量は何百万㌧という膨大な規模に上ることが予想されるため、長期にわたって破壊的な影響が地球全体に及ぶ。



 さらに火災によって生物多様性が壊滅的な状態に陥ることは、昨年、発生したオーストラリアでの森林火災の影響で、多数のコアラ等の貴重な動植物が焼け死んだり、絶滅した記憶が真新しい。また生態系の破壊は、人類の生命維持にも直接影響する。人々の生命・財産・暮らし・経済を脅かし、世界中の数百万人に深刻な健康問題が長期的に発生するリスクを伴うためだ。

 

 こうした分析を踏まえ、報告書は、パリ協定に基づく各国の国別削減貢献(NDCs)の強化の必要性を指摘している。

ttps://www.wwf.or.jp/activities/data/20200905Forest01.pdf