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DOWA、環境株という看板の重み(各紙)

2012-06-07 07:16:16

金属リサイクル事業に力を入れるDOWA(写真は東日本事業所)
DOWAホールディングスの子会社の廃液処理問題が波紋を広げている。関東の利根川水系の浄水場で水質基準を超えるホルムアルデヒドが確認された問題で、原因物質とされるヘキサメチレンテトラミン(HMT)を含む廃液を、群馬県高崎市の産廃業者が排出していた。その廃液処理を委託したのはDOWA子会社のDOWAハイテック(埼玉県本庄市)だったと伝わり、5月25日の株式市場ではDOWA株に業績への影響を嫌気した売りが出た。一時は前日比14%安の429円まで下落。年初来安値を更新した。

金属リサイクル事業に力を入れるDOWA(写真は東日本事業所)




 

ハイテックは、太陽光パネルや薄型テレビ向けの銀粉製造を一手に引き受ける拠点だ。HMTも銀粉製造に関連して生じたもの。DOWAは「国内産太陽光パネル向け銀粉で約4割のシェア」(DOWAの山田政雄社長)を握っている。7月の再生可能エネルギー全量買い取り制度の開始で太陽光パネル市況が回復し、業績への追い風となることが期待されていた。そんなタイミングで今回の問題が起きた。

 

DOWAの業績全体に与える直接の影響は大きくないとの見方は多い。SMBC日興証券の原田一裕シニアアナリストは「仮にハイテックが生産ラインを止めたとしても、数億円のコスト増にとどまる」と推計する。そもそもHMTは現時点で法規制の対象でない。埼玉県は週内にもまとめる最終報告に基づきなんらかの行政処分を下す方向で検討しているが、再発防止策の提出程度にとどまればDOWAが負うべき追加コストはさらに限られそうだ。DOWA株は週明けの5月28日以降3日続伸し、その後はもみ合いとなっている。

「環境のDOWAとしてアピールしてきた事業イメージを損なった」(外資系証券アナリスト)と市場が受け止める懸念はいまのところ収まったかに見える。実際、ハイテックと産廃業者の言い分に食い違いがあり、現時点ではどちらに責任があるのかは明らかではない。とはいえ、社会的な存在感の大きさゆえに、「委託先選定が適切だったか」「監督不十分の面はなかったか」など、一段高い次元でのリスク管理が問われる可能性もある。

金属リサイクル事業や微量ポリ塩化ビフェニール(PCB)処理事業に力を入れるDOWAは、非鉄金属株というより環境株として位置付けられることが多い。環境への配慮や企業の社会的責任の観点で投資銘柄を選定する、環境株ファンドや社会的責任投資(SRI)ファンドなどに組み入れられている。ある国内証券アナリストは「今回の問題を受け、各ファンドのポートフォリオ見直しの際にDOWA株の投資比率を減らすことも想定される」とみる。環境という重い看板を掲げる以上、ひとたび問題が起きると、法規制より高い行動規範を期待する視線が注がれる。これは株式市場にも当てはまる教訓といえる。