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英対外諜報組織「MI6」のムーア長官、気候変動対策での各国国際公約の順守状況の「グリーン・スパイ作戦」を宣言。日本の「46~50%」削減宣言は大丈夫(?)(RIEF)

2021-05-01 00:13:10

MI6001キャプチャ

 

 スパイ映画の007やジョン・ルカレの小説でも知られる英国のスパイ組織MI6の長官が、気候変動対策で各国が国際公約として打ち出した「2050年ネットゼロ」あるいは「2030年中間目標」等が、本当に守れるかどうかを「スパイ」すると公言した。いわば「グリーン・スパイ」。MI6に課せられている海外の機密情報収集の一環という。

 

 出遅れた「エイプリルフール」みたいな話だが、本気のようだ。現在のMI6長官のリチャード・ムーア(Richard Moore)氏がタイムズ紙のラジオ番組(Times Radio)でのインタビューで明かした。英インデペンデント紙によると、ムーア長官のインタビューは、バイデン大統領が開いた「気候リーダーズサミット」の数日後に行われた。

 

長官のコードネームは「C」
長官のコードネームは「C」

 

 同サミットでは、米国が30年目標を50~52%(2005年比)としたほか、日本も46~50%(2013年度比)、カナダ40~45%(05年比)等と、削減率を競うように発表した。中国、ロシア、ブラジル等も前向きな姿勢を示した。英国は35年に78%削減と、30年目標からさらに10ポイント引き上げた。

 

 ムーア長官はこうしたことを念頭に置く形で、「『グリーン・スパイ』は我々の仕事の一部でもある。気候変動対応は、英国にとっても、地球全体にとっても、もっとも重要な国際外交課題」「(各国の)気候変動政策(の妥当性)については、誰かが言ったように『信用せよ、しかし検証せよ(Trust but Verify)』だ。全員が参加し、公正に行動する必要がある場合、彼らがそうやっているかを時々、チェックする必要がある」と語った。

 

 ムーア長官が引用した「Trust but Verify」は、冷戦時代の核兵器削減交渉で、当時のレーガン米大統領が再三口にした言葉だという。疑心暗鬼が漂う困難な交渉においては、結局、お互いにどこまで信じあえるかという点と、それでも提示された数字を検証する冷静な視点を失ってはならない、という教訓だ。

 

MI6004キャプチャ

 

 英国の35年目標は、法律に基づく5年ごとの独立専門家委員会による検証に基づく提言を受けたものだ。他の国では、「バナナのたたき売り」のように、数値交渉を重ねた挙句、「くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が」(小泉進次郎環境相)などとの説明も出ている。こうした国は、明らかに検証対象だろう。

 

 MI6の「グリーン・スパイ」活動で、「実はあの国は、ブラウンだ」と見抜かれて、化けの皮を剥がされないようにしたほうがいい。国際的に恥をかくだけでなく、気候変動対策を真剣にやっている国から相手にされなくなり、市場でも「売り」の対象になってしまうからだ。MI6の長官は、コード名「C」で知られる。サインはグリーンのインクでするのが恒例。グリーンとは無縁ではないのだ。

https://www.sis.gov.uk/