国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)のオンライン会議、15日で終了。「昆明宣言」を取りまとめ。採択は来年4月~5月の対面会議で(RIEF)
2021-10-15 17:07:40
生物多様性の保全等を議論するためにオンラインで開かれていた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は15日、終了した。5日間の会議では、2010年に採択された「愛知目標」に代わる新たな目標の「昆明宣言」を取りまとめた。宣言は4月に予定する対面での会議で採択を目指す。
期間中、議長国・中国の習近平国家主席は、「経済発展と環境保護の両立を進める」と指摘し、発展途上国の生態系保全のために15億元(約260億円)を拠出して「昆明生物多様性基金」を設置すると表明した。
昆明宣言は、「生態文明(“Ecological Civilization)」と題して、「地球上のすべての生命のために共有される未来を築く」としている。
現行の愛知目標は、日本が議長国だった2010年のCOP10で採択された。世界の陸域の17%、海域の10%を保護地域にするなどの2020年までの10年間に達成すべき20項目を掲げた。だが、達成期限となる20年には条約事務局は「完全に達成された項目は一つもない」とする厳しい報告書を出していた。
昆明宣言は、こうした「未達成」の愛知目標に代わって、17の項目を盛り込んだ。宣言の主な内容は次の通り。
①「ポスト2020」のグローバル生物多様性フレームワークを効果的に発展、適用、実施を確実にする
②バイオセイフティに関するカルタヘナ議定書を踏まえた発展、適用、実行計画を支援
③(企業等の)政策判断でサステナブルバイオダイバーシティのメインストリーム化を促進する
④国ごとの生物多様性戦略と行動計画の発展を加速する
⑤地域ごとの保全の効率性を改善する
⑥人々のニーズに合致した生物多様性の持続可能な使用を強化する
⑦生物多様性を守るため、グローバルな環境法的枠組みを高める
⑧遺伝子資源の利用から生まれる公正で衡平なベネフィットの共有化を確実にする
⑨バイオ技術の開発のための手法を強化する
⑩生物多様性損失に対応するため、エコシステム・ベースのアプローチの適用を増やす
⑪人為活動から海洋生物多様性を保護する
⑫持続可能な生物多様性に貢献する「ポスト・パンデミック」回復計画を確実にする
⑬生物多様性を支援するすべての金融資金フローに適合する努力の一部として、生物多様性を害する補助金を廃止する
⑭「ポスト2020」のグローバル生物多様性フレームワークを実行するため、途上国への支援を増やす
⑮同宣言に先住民の人々が参加できるようにする
⑯持続可能な生物多様性への一般の認識を高める
⑰国連の気候変動枠組み条約のように生物多様性を促進するため、他国籍な環境協定と協力を深める
同宣言は原案段階だが、会議に参加した9カ国首脳と、99の各国大臣、それに国連事務総長のアントニオ・グテレス氏の支持を得た。CBDは今回の宣言案について、「今後、フレームワークはCBD条約に基づき、実行のために必要な手段の条項を含める必要があるほか、モニタリング、レポーティング、評価の適切なメカニズムの盛り込みも必要」と説明している。
CBD事務局長のエリザベス・ムレマ(Elizabeth Mrema)氏は、「昆明宣言の採択は、『ポスト2020』グローバル生物多様性フレームワークで反映されるべき『野心』のレベルを世界全体で示すことになる」と期待を表明している。
オンライン会議期間中、金融機関で組織する 「Finance for Biodiversity Foundation」を代表する形で、資産運用会社Amundiの代表であるJean-Jacques Barbéris氏は「次のフレームワークは、生物多様性を守り、回復させるために必要な野心のレベルと、緊急性のセンスをもっと正確に反映すべき」と、物足りなさを指摘した。
同氏は「生物多様性のフレームワークは、グローバルな生物多様性の目標とターゲットに対して企業と、官民金融機関が、適切な規制手段と金融的インセンティブに支えられて、それらの活動に適応し、資金を供給するための明確な期待を含むべき」とも述べている。
https://www.cbd.int/doc/c/df35/4b94/5e86e1ee09bc8c7d4b35aaf0/kunmingdeclaration-en.pdf