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熱波と40℃以上の異常高温が続く欧米。世界気象機関(WMO)は、「異常気温はさらに頻繁に、長く、激しくなる」と警戒警報。イタリアで欧州最高の48.8℃。スイスでも森林火災(RIEF)

2023-07-19 23:33:04

Wildfiregreeceキャプチャ

 

  欧州を中心に北半球で厳しい熱波や高気温が続く中で、世界気象機関(WMO)は、「異常気温上昇は、より頻繁となり、長くなり、激しくなる」との警戒警報を発した。イタリアの地中海に浮かぶシシリー島では17日に48.8℃と、これまでの欧州での最高気温(2021年記録)と同じレベルを記録した。米国アリゾナ州のフェニックス市では、18日まで19日間連続で気温110℉(43.3℃)となり、これまでの記録を上回った。

 

 (写真は、ギリシャで広がる森林火災=Al Jezeeraより)

 

 これまで欧州での最高気温を記録しているイタリアでは、地中海に浮かぶシシリー島東部のシラクサで同じ最高気温の48.8℃を記録した。サルディーニャ島でも45℃を記録した。首都のローマも41.8℃で、昨年6月の40.7℃の最高記録を上回った。各都市では高齢者を中心に緊急に搬送される人が続出しているという。

 

 ギリシャでは熱波の影響で森林火災が発生、首都アテネの南東の村のクバラス(Kouvaras)では17日に山火事が発生。折からの時速70kmに及ぶ強風の影響で瞬く間に広がった。周辺の住宅にも火が移り、現時点で少なくとも5棟が燃えたという。住民は避難している。火災の危険は、近くのリゾート地のラゴニッシ(Lagonisi)にも及んでいるという。

 

ギリシャの山火事の消火活動
ギリシャの山火事の消火活動

 

 ギリシャでの山火事は、19日時点で81件に達し、避難住民の数は数千人に達しているという。気温の上昇と強風のため、さらに火災が増えるとみられている。熱波による森林火災はスペイン、ポルトガルでも起きているほか、避暑地で知られるスイスでも南部のヴァレー州で17日に森林火災が起き、警察は同州のいくつかの山村の住民に対して避難命令を出した。

 

 スイス南部の同地一帯は、南欧地域が、地中海全体が熱波で覆われているのと同様の影響を受け、7月としては例年にない気温上昇に直面している。ヴァレー州でも30℃を超える気温が続いている。

 

 米国フェニックス市では、異常高温が原因とみられる住民の死亡が毎年増大。昨年は425人を数えた。今年は現時点では12人が高温が原因での死亡と判定されている。さらに55人の死亡が死因の調査中。まだ7月中旬の段階でこれだけの死者が出ていることから、今後の被害の増大への懸念が高まっている。

 

 こうした高温の広がりに、WMOのシニア熱波アドバイザーのJohn Nairn氏は18日、北半球全体の熱波と高気温はまだ続くと警告を発した。同氏は「夜間に高気温が繰り返されることは、特に健康に危険をもたらす。日中の高温に加えて夜間の気温も高いと、継続する高温に、体が回復できないためだ。最悪の場合、心臓発作や死の増大につながりかねない」と指摘した。

 

 昨年の夏は、欧州だけで約6万人が異常気温の影響で死亡している。昨年も事前に早期警戒警報が発せられ、欧州各国は、高齢者等の弱者の健康維持等を重視した熱波対策を準備したが、結果として、これだけの犠牲者を出した。WMOは今年も各国に対して異常高温の長期化・激化に対処するインフラの整備や、弱者対策を緊急に進めるよう要請している。

 

 熱波による死者増加のリスクは欧州だけでなく、アジア、北アフリカ、米国と北半球全体に共通する。Nairn氏は「異常な暑さは、増大し急速化する都市の過密化や、人口の高齢化、異常高温の増大等の影響で、これまで以上に急速に人々の健康リスクを高めている」と指摘している。

 

 同氏はこうした熱波の増大と高温は予想外ではなく、「予報通り」と断言する。「東太平洋でのエルニーニョの発生は、気候変動の影響による異常熱波の発生と増大を増幅する効果を発揮しているだけ」と指摘し、温暖化の要因である人類の経済活動による温室効果ガス(GHG)排出量を抑制しない限り、熱波や異常高気温といった現象は継続し、さらに増大するとの見方を示している。

https://news.un.org/en/story/2023/07/1138802