HOME8.温暖化・気候変動 |ブラジル・アマゾンの森林伐採、昨年は前年比で半減。ルラ政権の自然保護策が効果。代わりに隣接するセラード・サバンナでの開発が増大。農業ビジネスとの調整が課題(RIEF) |

ブラジル・アマゾンの森林伐採、昨年は前年比で半減。ルラ政権の自然保護策が効果。代わりに隣接するセラード・サバンナでの開発が増大。農業ビジネスとの調整が課題(RIEF)

2024-01-07 18:29:11

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写真は、森林伐採が随所で行われてきたブラジル・アマゾンの熱帯雨林帯=AFPより)

 

 ブラジル政府は、同国内の世界最大規模の熱帯雨林帯であるアマゾンの森林伐採が、前年(2022年)に比べて約50%減と半減したと発表した。昨年1月に就任したルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ氏は前任のジャイル・ボルサナロ政権による開発優先姿勢を転換する政策を打ち出しており、その成果が実績として示された。それでも、東京都の面積の2.3倍以上の森林が消失した。また熱帯雨林帯の次に位置するセラード・サバンナでの伐採は逆に前年比で43%増加するなど、課題を残している。

 

 同国の国立宇宙研究所(INPE)による衛星観測データ等で確認した調査結果に基づく。アマゾンは世界最大の熱帯雨林で、その面積の6割は、ブラジル内にある。アマゾンでは生息する多くの樹木が大気中のCO2を吸収し、酸素を放出する循環活動を展開しており「地球の肺」とも呼ばれている。https://rief-jp.org/ct12/104870?ctid=

 

 INPEの観測データによると、2023年中にブラジル国内のアマゾン地域で破壊された森林面積は5152㎢で、2022年(11568㎢)から半減以上(約55%)減少した。ルナ政権は、前任のボルサナロ政権下で開発が進んだアマゾン森林帯の保全のため、違法伐採を根絶する措置として、300万haの保護区を新たに設定したほか、連邦警察による監視拠点と監視員を増強や衛星を使った定点監視の強化等を実施している。

 

 前政権下では、度々アマゾンでの大規模火災発生や、大雨によるダム決壊による大洪水などの自然環境破壊に伴う問題が顕在化した。ルナ政権は、こうしたことへの対策として、自然保護を重視するとともに世界有数の食糧生産国である同国を環境大国にするという方針を打ち出している。環境担当閣僚の環境相には環境保護政党REDE(持続可能性ネットワーク)所属で環境活動家のシルバ上院議員が就任している。https://rief-jp.org/ct12/131354?ctid=

 

 同政権のアマゾン森林対策では、前政権時代の監視体制の緩さが、違法伐採による農場転換・資源開発等の抜け穴となり、森林伐採・同破壊につながっていたことから、それらを封じる策を講じる一方で、違法業者等が森林伐採のために使用してきたチェーンソーや、違法な金採掘等のための掘削機等を有料で回収する措置により、違法業者の撤退を促す措置も導入した。https://rief-jp.org/ct8/136172?ctid=

 

 また違法伐採等がなくても地域経済が成り立つように支援するため、持続可能な方法での認証付きの森林製品の生産や、そうした手法を生産者に対して教える技術支援の仕組み、インフラの整備、エネルギーやインターネットの配備、エコツーリズムの促進等にも取り組み、アマゾン各地の再生・支援にも取り組んでいる。

 

 一方で、INPEの監視プログラムによると、アマゾンの熱帯雨林地帯に隣接して、独特の自然植生が展開するセラード・サバンナ地帯では、昨年、皆伐が年間新記録を更新し、2022年から7800㎢以上の原生植生が失われたことも判明した。消失面積では、アマゾンの森林減少を上回った。森林減少率は43%増。森林伐採事業者等が、監視の目が厳しくなったアマゾン森林帯からセラードでの開発にシフトした形だ。

 

 環境NGOのWWFブラジルのマリアナ・ナポリターノ( Mariana Napolitano)氏は、「2023年には、環境に関していくつかの重要な勝利が見られた。アマゾンの森林伐採の大幅な減少は、そのハイライトといえる。しかし、残念ながらセラードでは同じ傾向が見られない。同地域での生態系開発の進展は、生物多様性を損傷し、極めて重要な生態系サービスに有害な影響を及ぼしている」と指摘している。

 

 ルラ政権が、国際的に注目を集めるアマゾン地域の保全を強化する代わりに、国内で政治圧力の強いアグリビジネス・ロビーを宥めるために、国際的にあまり知られていないセラードの破壊には目をつぶっている、と非難している。アマゾンとセラードの両地域を合わせると、2023年に破壊された総面積は12,980㎢となり、2022年から18%減少した。

 

 ボルソナロ政権時代(2019-2022年)は、ブラジル・アマゾンの年間平均森林伐採量は10年前と比べて75%増加し、国際的な批判を浴びた。アマゾンとセラード両方の森林伐採・同破壊の主な要因は、大豆と牛肉の世界最大の輸出国であるブラジルでの農業と牧畜産業の拡大によって引き起こされている。

https://phys.org/news/2024-01-deforestation-brazilian-amazon-halved.html

https://today.rtl.lu/news/science-and-environment/a/2154640.html