EU欧州委員会。「森林伐採規則(EUDR)」の今年末での施行の再延期問題。対象を小規模事業者に限定する案で合意。延期期間は未定。最終決定は欧州議会とEU理事会の調整に移行(RIEF)
2025-10-22 12:49:13
EU欧州委員会は21日、今年末に予定している森林伐採規制(EUDR)の適用開始問題をめぐって、先にIT問題による遅れを理由に、1年間の延期案を打ち出していたが、最終的に延期は、全対象企業ではなく、規制対象の農林業商品を市場に流通させる小規模事業者に絞ることに変更する方針になった。欧州議会関係者がメディアに明かした。
それによると、欧州委が同日に開いた同問題での再審議の場で、環境担当欧州委員のジェシカ・ロスウォール(Jessika Roswall)氏と、規則の1年延期案を支持する欧州委副委員長のテレサ・リベラ(Teresa Ribera)氏との間で激しい議論になった末、EUDRは予定通り12月末(31日)に発効し、規制延期の適用対象を縮小する案に変更することになったという。https://rief-jp.org/ct12/161225?ctid=65
延期措置が適用されるのは、カカオ、コーヒー、木材、パーム油、家畜、ゴムなどの製品を扱う小規模・零細事業者だけに絞られる案とする。これらの小規模事業者の規制延期期間については、当初の延期案通りの1年後の2026年12月までとなる可能性があるとしているが、最終的な延期期間での合意はまだできていない模様。
また延期対象となる小規模生産者は、デューデリジェンス宣言(EU市場向け商品生産に伴う森林伐採がなかったことを証明する文書)についても簡素化された措置を適用されることになる。EUDRは本来、昨年末に施行される予定だったが、EU内外の関係業者等の反対で、すでに1年先送りされている。
ただ、今回の修正案は欧州委内の環境派が巻き返した形だ。だが、延期対象が最終的に確定するには、EU理事会(各加盟国で構成)と欧州議会による承認が必要だ。両機関とも、EUDRの適用に懸念を示す政治勢力が、依然、少なくないとされる。このため、最終決定は12月に入ってからになる公算もある。
EUDRは2023年6月に成立した。法律の内容は、EU域内で販売されるパーム油や大豆、コーヒー、ゴム等の農林産業製品等について、輸入先国で森林破壊や土地劣化等の問題を抱える場合は輸入を禁止する。法の対象となる森林については、「低」「標準」「高」の3段階で評価するカテゴリーに加え、「リスクなし」のカテゴリーを新設する等としていた。https://rief-jp.org/ct12/136242?ctid=
だが、同規制の影響を受けるEUの産業界のほか、輸入先の途上国のコーヒーやカカオなどの生産業者等の双方から不満の声が高まり、対象品目のチョコレートなどの消費財の品不足、値上がり等の影響が広がる等の問題が起きた。また3段階のカテゴリー分類をめぐり、「高リスク」への分類に対する当該国の反発等をどう処理するかがネックとなっていた。https://rief-jp.org/ct4/150031?ctid=
欧州委は、EUのサステナブルファイナンス関連の法整備の一貫として、EUDRの施行についても先送りをしてきた。同法案施行への反対勢力には、途上国だけでなく、トランプ政権の米国の生産者、流通・小売りメーカー等も加わっており、「修正圧力」が強まっている。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance