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米国・イスラエルのイラン攻撃・ホルムズ海峡封鎖の影響、最も大きいのは、石油・ガスの化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー転換が遅れている日本。国際リサーチ機関が分析(RIEF)

2026-03-03 18:13:26

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写真は、ホルムズ海峡を航行する各国のタンカー群=ZCAの報告から引用)

 

 米国によるイラン攻撃の影響で、イラン側は対抗手段としてホルムズ海峡閉鎖を宣言した。国際リサーチ機関のゼロカーボン・アナリティクス(ZCA)の分析によると、同海峡閉鎖により、中東からの原油・ガス供給の制限による世界経済への影響が生じるが、同影響を最も受けるのは、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が遅れているアジア勢で、その中でも日本が受ける影響が最も大きい、との分析を示している。

 

 ZCAは、米国エネルギー情報局(EIA)の推計により、2024年にホルムズ海峡を通過した石油の84%、液化天然ガス(LNG)の83%がアジア市場向けであると指摘。そのうち、中国、インド、日本、韓国の4カ国だけで、同海峡経由の石油の75%、LNGの59%を占めている。同海峡経由の石油・LNGの最大の単一輸入先は中国とインドだが、供給ショックの影響をはるかに受けやすいのは日本と韓国で、中でも日本の影響が大きいと指摘している。

 

 化石燃料依存度が高い日本と韓国の経済は、エネルギー供給ショックへの脆弱性が最も高い。それぞれ、エネルギーの87%と81%を化石燃料輸入に依存している。これに対して、中国の輸入依存度は20%、インド35%で、日韓の化石燃料輸入依存度は突出している。特に日本ではホルムズ海峡経由の航路を通じた石油・ガス貿易の割合が高く、輸入石油・ガスへの依存度も高いため、供給混乱のリスクが最も直接的に迫っている。ZCAでは、韓国が2番目にリスクが高く、インドが3番目、中国が4番目、とみている。

 

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 さらに、台湾も同様に深刻な影響を受ける。ZCAによると、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのアンヌ=ソフィー・コルボー(Anne-Sophie Corbeau)の分析として、台湾は輸入天然ガス(LNG)に完全に依存しており、輸入LNGの3分の1が同海峡を経由して輸入しているという。同氏は、国内で一部ガスを生産しているものの、パキスタンも同様の状態にあるとしている。

 

 韓国、台湾、パキスタンなどの国々でのエネルギー不安が現実化すると、これらの国々が抱えている政治・軍事的不安に影響が波及する恐れもある。

 

 ZCAは、日本をはじめとする石油・ガス輸入国は早急に、再生可能エネルギー発電への投資と経済の電化を進めることで、大規模な供給ショックへの脆弱性を軽減できる、と呼び掛けている。すでに欧州では、2022年から2024年にかけてガス輸入量を18%削減しており、化石燃料依存度を迅速に削減できることを示している。

 

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 同海峡は幅約3.2kmの航路を大型タンカーで通過する必要があり、世界のエネルギー供給における主要なボトルネックとなっている。米国rとイスラエルによるイランの最高指導者ハメネイ師の殺害に対するイラン側の報復攻撃は、ペルシャ湾岸諸国の駐留米軍基地のほか各地に広がり、同海峡もすでに事実上封鎖状態になっているとみられる。

 

 同海峡はアラビア半島に位置し、イランとオマーンの間を隔ててペルシャ湾とアラビア海を結んでいる。海峡内の航路は両方向ともわずか2マイル幅と狭いが、世界の石油とLNGの約20%がこの海峡を通過していく。サウジアラビア、イラク、イランなどの中東の主要産油国から輸出される石油の主要ルートであり、カタールやアラブ首長国連邦(UAE)からの LNG が世界市場に流入する唯一のルートとされる。

 

 LNGの場合、中東産が途絶えると、オーストラリアや米国、カナダなどのLNGでの転換で補う可能性も指摘される。だが、オックスフォードエネルギー研究所によれば、海峡が1年間閉鎖された場合、中東からの供給の急激な減少はオーストラリア、米国、カナダからの新規供給量では部分的にしか補えず、世界のLNG供給量は2024年水準から15%減少する見込みとしている。

 

 ZCAは、この供給能力喪失の結果、日本のLNG価格は約170%急騰する可能性があると指摘している。日本は過去に石油・ガス価格の高騰を経験しており、直近では2022年の高騰は日本のエネルギー価格上昇・インフレ加速につながった。当時の平均的な家庭の電気料金は25.8%上昇し、ガソリン価格は1㍑当たり1.5㌦(230円強)に達した。

                            (藤井良広)

https://zerocarbon-analytics.org/insights/briefings/asian-countries-most-at-risk-from-oil-and-gas-supply-disruptions-in-strait-of-hormuz/

https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2024/overview-and-key-findings