第11回(2025年)サステナブルファイナンス大賞インタビュー⑪サステナブルボンド賞:東京都。 「TOKYOレジリエンスボンドの発行。『都市の回復力』高めて災害の備えを強化」(RIEF)
2026-03-09 13:23:42
(写真は、サステナブルファイナンス大賞の表彰式で、審査員の光成美樹氏=FINEV代表取締役㊥から、表彰状を受け取る東京都財務局公債課課長代理の辻野和昭氏㊧。㊨は環境金融研究機構代表理事の藤井良広)
第11回サステナブルファイナンス大賞のサステナブルボンド賞に、「TOKYOレジリエンスボンド」を海外で発行した東京が選ばれました。海外市場で、国際認証を取得した世界初のレジリエンスボンドを発行したことが評価されました。東京都財務局主計部公債課課長の橋口牧子氏にその狙いや今後の展開を聞きました。
――「TOKYOレジリエンスボンド」発行はいろんな面で注目されました。まず、発行の背景にはどんな事情があったのでしょうか。
橋口氏:いま、都市のレジリエンス(回復力、復元力)が問われています。気候変動を起因とした自然災害等が各地で多発し、世界共通の課題となっています。
東京都は、こうした危機に直面する中にあっても、都民の生命と暮らしを守り、日本を支える首都東京の経済活動も維持するため、関東大震災から100年となることを契機に、その前年にあたる2022年12月、「TOKYO強靭化プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトでは、風水害のほか、地震や火山噴火、電力・通信等の途絶、感染症の拡大のリスクに備え、2040年代に目指す強靭化された東京の姿や、その実現に向けた方向性を明らかにしています。
プロジェクト実現に向けた総事業規模は、概算で約17兆円、うち当初の10年間で約7兆円を見込んでいます。この「TOKYO強靭化プロジェクト」を財政面から下支えるため、「TOKYOレジリエンスボンド」を発行しました。

これまで東京都は、2017年度に全国の自治体として初めてグリーンボンドを発行し、調達した資金を都有施設への太陽光発電設備の導入や緑化の推進などの環境対策に活用しました。2024年度には、充当対象に海洋環境の保全等も加えたグリーン・ブルーボンドにバージョンアップし、発行を続けています。また、2021年度からは、ソーシャルボンドを発行し、道路のバリアフリー化や特別支援学校の整備などの社会課題の解決を推進しています。今回のレジリエンスボンドは、これらに続く、東京都の新たなSDGs(ESG)債になります。
――「TOKYOレジリエンスボンド」の発行時期の発行額など概要を教えてください。
橋口氏:同ボンドは、2025年10月に、海外市場において、ユーロ建てで、3億ユーロ(約528億円)分を発行しました。
調達した資金の使途は、6つの事業に充てることを予定しています。具体的には、気候変動の激化による気候災害に対処するため、局地的な集中豪雨などによる洪水を防ぐ調整池の整備や、平均海面水位上昇による浸水を防ぐための防潮堤のかさ上げ、強風被害の回避に向けた無電柱化の取組などが含まれています。
――海外で発行した意味を教えてください。
橋口:国際社会に対して東京都が強靭化の取り組みを進めていることアピールすることを狙いとしています。また、ユーロ建てで発行することによって、世界的にレジリエンスの分野に資金が流れていく動きを促進することもできると考えました。
――ボンドの発行に際しては、調達資金の用途が目的と合っているかどうかをチェックしてもらう国際認証をとったそうですね。

橋口氏:SDGs債の発行にあたっては、国際基準に照らして調達した資金の用途が目的に合致していることを明示し、投資家への訴求力を高めることが重要です。しかし、これまでレジリエンスの実現を目的とした債券の国際基準はありませんでした。
こうした中、英クライメート・ボンド・イニシアチブ(CBI)が、気候変動による適応事業への投資を促すため、レジリエンス・タクソノミーを策定していることを知りました。CBIは、民間の非営利団体ですが、債券発行基準の作成において国際的に権威がある活動をしています。自主的基準の制定のほか、データの分析や政策提言など、科学的根拠に基づく枠組みを通じたESG債市場の成長にも貢献しています。
東京都は「TOKYOレジリエンスボンド」発行検討の早い段階からCBIにアプローチし、1年近くにわたって調整をしてきました。そうした中、2025年8月、CBIは気候レジリエンスに関する独自の認証基準を策定しました。「TOKYOレジリエンスボンド」はこの制度による第一号の認証を受け、初の国際認証付のレジリエンスボンドとして発行できました。
認証を得るには、対象事業について科学的根拠が求められます。例えば、調節地の整備や防潮堤のかさ上げなど、レジリエンス向上に繋がるとイメージされやすい事業であっても、その必要性や効果を具体的に示して初めて、「真にレジリエンスに資する」との評価を得ることができます。もちろん認証をとらなくても発行は可能ですが、海外の投資家に対する訴求力が違います。CBI認証によって、調達した資金が適切な事業に使われるということを投資家に明示することができます。
――発行に当たっては、実際に投資家とも面談したとのことですが、反応はどうでしたか。
橋口氏:6月に実施した海外IRの際には、過去に大地震があったポルトガルや、気候変動によって海面上昇の問題に直面しているオランダの投資家から、レジリエンスの重要性について共感を得られました。また、実際の発行時には、投資家から、「マーケットを切り開いた素晴らしい取り組みだ」「東京都の取り組みをきっかけにレジリエンス市場が拡大することを期待している」といった具体的な声をいただきました。非常に注目度が高く、東京都の取り組みを広くアピールできる発行になったと感じています。
――今後の展開ですが、すでに何か決まっていることはありますか。目指す方向性などがあれば。
橋口氏:2026年度は新たに国内向けにもレジリエンスボンドを発行し、国内外での発行額を合計1,000億円に倍増させる予定です。 今後も、環境対策や都市の強靱化等を強力に推進するとともに、国内外から幅広く投資資金を呼び込み、サステナブル・レジリエントファイナンスを先導する都市を目指していきます。
(聞き手は、加藤裕則)

































Research Institute for Environmental Finance