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2013年、世界各地で異常気象の年明け(National Geographic) “異常”が「日常」になる時代へ突入

2013-01-21 09:09:33

エルサレムに降りしきる雪の中、観光客が嘆きの壁の前で記念撮影。
エルサレムに降りしきる雪の中、観光客が嘆きの壁の前で記念撮影。
エルサレムに降りしきる雪の中、観光客が嘆きの壁の前で記念撮影。


またしても世界が異常気象に襲われている。エルサレムは吹雪となり、オーストラリアでは山火事が収まらず、中国は寒波に見舞われ、ブラジルは熱波の真っただ中にある。年明けの2週間から判断するかぎり、2013年も2012年の気象傾向がそのまま続きそうだ。エルサレムでは1月10日に20センチの雪が積もり、市内の交通がストップした。この時期としては20年ぶりの大荒れの天候だった。雪の重みで多くの木々が倒れ、公園では人々が雪合戦を始めた。イスラエルのシモン・ペレス大統領が官邸前でボディーガードの手を借りて雪だるまを作っている写真まで公開された。

オーストラリアでは全土で記録的な猛暑となり、同国気象庁は、前例のない気温に備えて、地図の色分けに摂氏50度以上の紫色と52度以上のピンクの2色を追加した。元日からの8日間は記録的な暑さで、とくに1月7日は平均気温が40度と、過去最高を更新した。

世界のほかの地域も同じように異常気象に見舞われた。アメリカ東部と北ヨーロッパの広い範囲で春のような天気に恵まれた一方で、東京では14日に市街地で8センチの積雪となった。これは平年の年間累積降雪量の半分以上にあたる。

中国では1月上旬の平均気温がマイナス4度まで下がり、ほぼ30年ぶりの寒さとなった。渤海の莱州湾(らいしゅうわん)では、1000隻以上の船が氷に閉じ込められた。

同じ時期に、ブラジル北東部は熱波と干ばつに襲われ、当局は10年ぶりに電力の配給制の導入を検討している。リオデジャネイロでは43度という史上最高気温を観測した。

◆新たな標準

11日に公表された全米気候評価(NCA)報告書の最新版の草稿を執筆した240人のアメリカの科学者は、このような異常な気候が標準となりつつあると警告している。報告書の冒頭に付けられたアメリカ国民への公開書簡には、異常気象の頻度と長さは、気候変動の明確な兆候であると書かれている。

「夏は長く、暑くなり、酷暑の時期が、存命中のアメリカ人の誰もが経験したことがないほど長期間続くようになっている。冬は全般に短く、温暖化している。雨は激しく降るが、多くの地域で、雨の降らない乾燥した期間が長くなっている」。

NCAの報告の1週間前には、米国海洋大気庁(NOAA)国立気候データセンターが、2012年はアメリカ本土で観測史上最も暑い年だったと発表した。全米で9900万人以上が38度以上の日を10日以上経験した。2012年の平均気温は、20世紀の平均気温よりも約1.8度高かった。

◆これからも異常気象は続く

気候変動の厄介な兆候はほかにもある。北極海を覆う氷の面積が、2012年の後半から、過去最小のレベルにまで縮小しているのだ。アメリカ国立雪氷データセンター(NSICD)によると、9月半ばには、北極海の半分近くの海面から氷が消えた。北極海の海水温が上がると北極圏上空のジェット気流のパターンが変化し、低緯度地方でも異常気象の可能性が高まるという説を唱える科学者もいる。

このように年明けから奇妙な天候ばかりだが、エルニーニョがこの冬に、多くの専門家の予想通りに発達していたなら、もっとひどいことになっていたかもしれない。エルニーニョの時期には、太平洋上の低気圧のパターンにより、暖かく乾いた天候の地域が増えるのが普通だ。その結果オーストラリアなどでは深刻な干ばつに襲われたり、熱波が長く続いたりする。

しかし、エルニーニョは予想に反して昨年11月に消えてしまった。もし消えていなければ、オーストラリアの熱波はもっと激しくなっていただろう。

民間気象予報サービス会社「ウエザー・アンダーグラウンド(Weather Underground)」の気象学者ジェフ・マスターズ氏は、アメリカの「2012年の大干ばつは、いまや2年越しの干ばつになろうとしている」と話す。「現在のような規模と程度の乾燥した状態がこのまま春まで続いたら、今年の夏も激しい干ばつに襲われる可能性が高い。またしても数百億ドルの被害が生じるだろう」。