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仙台市発注の損壊建物解体工事 多重下請け横行(河北新報) 行政が「手抜き」監視、利権業者に丸投げ

2013-01-28 07:58:23

元請から下請け、孫請け、7,8次請けと、丸投げが続く解体工事
元請から下請け、孫請け、7,8次請けと、丸投げが続く解体工事
元請から下請け、孫請け、7,8次請けと、丸投げが続く解体工事


仙台市が発注した東日本大震災の損壊建物の解体工事で、多くの業者が下請けに連なる「多重下請け」が横行し、実際に施工した業者が赤字で請け負うケースが相次いでいたことが27日、複数の関係者への取材で分かった。各段階で工事費が抜かれるため、元請けや下請け上位の地元業者らが大きな利益を得ている格好。多くの業者は「復興のためと請け負ったが、あまりに理不尽」と憤っている。

 複数の業者らによると、仙台市が2011年秋に発注した市北部の住宅解体工事では、元請け業者の下に、建設業者ら計7社が下請けに入る「7次下請け」になった。各社が別の業者に工事を仲介するたび、工事費の5~10%の金額を抜いた。その結果、施工業者が請け負った金額は元請けや1次下請け段階の半分近くだったという。
 この業者は「7次下請けは珍しくなく、これ以外に8次、9次の下請けの工事もあった。解体工事費の4~5割は工事を別業者に仲介し、下請けさせるだけの業者の懐に入る」と明かす。
 昨年夏に発注された市中心部の建物解体工事数件は、いずれも5~6次の下請け。下請け上位では1坪当たりの工事費が4万円近くだったが、施工業者の段階で約2万円になっていた。
 請け負った業者は「建物の構造や場所によるが、坪単価が2万円近くになると採算割れになり、1万円台の場合もある。仙台の解体工事を多く請け負ったことが原因で業績が悪化し、倒産した仲間もいる」と嘆く。
 関係者によると、元請けや下請け上位に入る仙台市内の一部業者には震災特需となり、経常利益が20~40倍に膨らんだ業者もいる。「作業員の賃金といった実費がほとんどなく、ただ下請けさせるだけの利益率の高い仕事が多いことの裏付け」(関係者)という。
 ある業者は「損壊建物の解体は復興の第一歩。請け負ったら赤字になると分かっていても我慢した」と証言。「市に抗議しても取り合ってくれなかった」と話す。
 発注者の市震災廃棄物対策室の担当者は「下請け間の問題は民間企業の商取引なので、市は関与しない。解体工事費は元請けまでが公金だが、元請け以降は民間の金」と説明している。

◎2社に4割前後抜かれ 3次で採算割れも

 仙台市発注の解体工事では、7次、8次でなくても多くの工事費を抜かれ、施工業者が採算割れとなったケースがある。
 市が昨年秋に発注した市東部の建物解体工事は下請けに3社が連なる「3次下請け」となった。3次の施工業者は多重下請けの工事は採算が取れないことを知っていて避け続け、この物件の解体は安心して請け負ったという。だが、下請け上位2社に工事費が4割前後抜かれた。
 この施工業者は「結局、赤字になったため、多重下請けに入った場合と変わらなかった。長く仕事をしているが、1社当たり20%前後も工事費を抜くケースは体験したことがないし、聞いたこともない」と語る。
 全国の建設、解体業界に精通する関係者は「現場の業者や作業員を優先的に手厚く処遇しなければ、復興作業が進まない」と市側に注文を付ける。元請け業者らには「復興特需でもうけることばかり考え、復興を最前線で成し遂げる建設、解体業者の本分を忘れている」と指摘する。

[仙台市発注の解体工事] 国庫補助事業で、市民や中小企業が所有する全壊や大規模半壊の建物の解体費を負担する。昨年9月末までの期限内に申請が約1万1000件あった。今月末見込みで約1万件の解体工事が終わり、約210億円が支出される。工事発注は仙台建設業協会の会員業者と宮城県解体工事業協同組合が元請け受注する2ルートに分かれ、業者選定は協会や組合に任せられる。

 

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/01/20130128t13008.htm