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ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ) 日本企業進出予定地で 強制立ち退き問題、住民が日本政府へ懸念の書簡を提出 (メコン・ウォッチ)

2013-03-13 22:19:03

開発予定地を視察する日本ビジネスマンたち
開発予定地を視察する日本ビジネスマンたち
開発予定地を視察する日本ビジネスマンたち


現在、日本政府が官民を挙げてODAなどにより支援を進めようとしているビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業、および、同関連事業について、3月7日、地元の住民から強制立ち退きに関して懸念の声を伝えるレターが、日本政府に提出されました。

住民によれば、強制立ち退きを迫られているのは、1033家族の計3898人。今年1月31日にビルマ当局が発した通知には、「14日以内の立ち退き」と「立ち退かない場合の30日間の拘禁」が明記されていました。

2月14日に地元で開催された説明会では、当面、「14日以内の立ち退き」について延期される見通しが伝えられたものの、ビルマ当局側は、住民をあくまでも「不法占拠者」と断定。移転地や補償措置については現在もまったく用意されていない状況が続いています。このままでは、多くの住民が、居住地を確保できないまま、生計手段も喪失し、短期間で非常に危機的かつ深刻な困窮状況に陥ることが懸念されます。

今回の日本政府に提出したレターのなかで、住民は主に、

・1033家族の計3898人が強制移転させられようとしている ・「不法占拠者」として見做され、十分な協議も移転計画もない ・ミャンマーの関連法が遵守されていない

等の現状を日本政府に伝えています。また、国際協力機構(JICA)の環境ガイドライン等を遵守すべき機関がこうした状況を知り、地元の農民に配慮すべきという考えを示しています。

日本政府はこれまで、同地域での移転問題について、ティラワSEZ開発を行なうディベロッパーの責任であるとの見解を示しています(今年2月26日開催、開発協力適正会議 第8回会合)。しかし、ビルマ政府側にのみ対応を任せるのではなく、日緬政府が締結した「ティラワ経済特別区開発のための協力覚書」(2012年12月21日)に明記されているとおり、「国際的な環境基準に沿うべきであることを認識」し、より積極的な対応をとっていくことが求められています。

<本件の連絡先> メコン・ウォッチ 〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F メールアドレス: info@mekongwatch.org
携帯:090-6142-1807




<ティラワ地域の住民から日本政府へのレター・和訳> ※レターの原文はビルマ語です。本和訳は原文の英訳に基づくものです。

外務大臣 岸田 文雄 様 経済産業大臣 茂木 敏充 様 財務大臣 麻生 太郎 様 国際協力機構 理事長 田中 明彦 様 ティラワ経済特別区マネージメント委員会 委員長 セッアウン 様

2013年3月7日

題目:立ち退かされる貧しいティラワ地区の地元住民による現状に関するレター提出

1.2013年2月14日に住宅省オフィス(タンリン郡)で開催された、地元農民、および、立ち退き命令を出したヤンゴン管区政府当局との間での会合は、彼らが発した命令の再確認以外の何物でもありません。地元農民が提示した2つの質問、つまり、どこに行けばよいかわからない「立ち退かされる農民に対する移転計画があるか」、また、「違法に徴収された作物代が法に則り、解決されるか」という質問に対し、回答はないままだったので、要は、無条件で立ち退き命令を受け入れろということです。

2.農民は同事業に反対しているのではなく、むしろ、立ち退かされる際に移転計画があるのかについて、問うています。

3.この強制的な非自発的移転を通じて影響を受けるのは、1,033家族の計3,898人になるので、決して少人数ではありません。 (参照:JICAガイドライン(2010年)パラ7「非自発的住民移転」)

4.ここに挙げたあらゆる要素が、地元住民は不法占拠者以外の何者でもないということを根拠に、これ以上の議論や協議が行なわれないことを暗示しています。

5.「不法占拠者」という用語自体を使うことは、居住してきた土地に対し、義務である土地税を過去16年間支払ってきた地元の私たちを、国際的な場で辱めようとする企み以外の何物でもありません。

6.義務である税金を払ってきた者は、法に則り、土地所有権を保有する資格が付与されます。同様なことは、2012年に作られた新しい土地所有法の下でも言うことができます。そこでは、事業が実施されない土地に対する一義的な土地所有者が農民であることが明記されているからです。

7.私たち住民はまた、立ち退かされる住民が元の水準より劣らない場所に新しく移転すべきことを保証している、ミャンマー・経済特別区法の第36項の規定においても軽視されています。この法的な権利をまったく享受できていない私たちにとって、同法の履行は無意味です。

8.もし、私たち住民が上述のパラ5、6、7について想起するのであれば、現状は、広く普及している法律を無視している以外の何物でもありません。私たちが協力できるように、事業から得られる恩恵に関し、農民に情報を提供したり、議論をしたり、協議をしたりするのではなく、当局はただ先に進み、14日以内に同地から立ち退かない者は1ヶ月間拘禁するという命令を発しているのみです。

高度な教養をもった日本のガイドラインを遵守しなくてはならない投資機関は、こうした状況を知らされるべきだと私たちは考えています。

こうした考えを抱き、また、地元の農民の状況が軽視されるのではなく、深く、かつ、注意深く配慮されるべきという信念を持ち、私たちはここに本レターを提出します。

村の代表者のリスト (以下、13名の住民リーダーの氏名、および、署名等)

—————————————————- <同事業に関する過去のプレスリリース> 2013年2月8日 ODA支援案件「ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区開発」で強制立ち退き500世帯
強引な立ち退きと人権侵害の防止を訴え、外務省・JICAに要請書を発出


http://mekongwatch.org/resource/documents/pr_20130311.html