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ミャンマーの住民らが記者会見 「人権侵害なのにJICAは支援するのか。出てきて話を聞いてほしい」(メコン・ウォッチ)

2013-10-10 15:28:35

ティラフ開発事業の予定地
ティラフ開発事業の予定地
ティラワ開発事業の予定地


日本が官民連携で進め、ODAでの支援が検討されている、ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業において、用地取得や移転の対象となる住民に対し、補償合意文書への署名の強要や脅しが行なわれたなど、人権侵害の疑いが生じています。

 

【2013年9月27日 メコン・ウォッチ プレスリリース】

http://www.mekongwatch.org/resource/documents/pr_20130927.html)

10月10日、こうしたビルマ政府当局による人権侵害の状況、また、現在の移転・補償計画案の問題点等を訴えるため、地元の住民グループが記者会見を開催しました。同住民グループは、彼らの懸念を伝えるため、同事業への投資を検討している国際協力機構(JICA)に対しても直接会合を求めていますが、JICAから依然として回答がない状況で、こうしたJICAの態度についても批判しています。

 

地元では、ヤンゴン管区政府当局の高官が「農民を法的措置に訴える」という発言をするなど、問題を訴える住民グループらの動きに対する当局からの圧力も懸念されています。地元での人権状況に十分配慮しながら、住民の声をしっかりと聞き、早急にしかるべき対処をとることがJICAに求められています。

 

以下、10月9日付で現地住民グループが発出したプレスリリースを日本語訳でご紹介します。

 

テジラワSEZ開発事業に伴い、立ち退きを迫られている住民グループ(ティラワ社会開発グループ)と現地NGOによるプレスリリース(2013年10月9日)

ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業
人権侵害にも関わらず、日本政府は支援をするのか
――脅迫、不公平な補償、住民参加と透明性の欠如を村人が指摘――


 

2013年10月9日 ビルマ・ラングーン(ヤンゴン)発――明日10月10日(木)午後1時から、ミャンマー・ジャーナリスト・ネットワーク事務所(所在地:ラングーン)において、ティラワ地域の住民グループの代表らは、日本がビルマでの投資を決めている事業が、深刻な人権侵害を引き起こしていることに関し、記者会見を開催します。

 

国際協力機構(JICA)の資金供与が予定され、日本の総合商社である三菱商事、丸紅、住友商事が主導して進めるティラワ経済特別区(SEZ)開発事業(2,400ヘクタール)では、工業団地等が開発される予定ですが、6村の1,017家族(3,869個人)が移転を余儀なくされます。村人は同事業に反対はしていませんが、十分な補償や移転地に関する選択肢がないまま同事業が進められれば、自分たちが土地なし農民となり、困窮状態に陥るのではと恐れています。

 

村人は、ビルマ政府が人権侵害を引き起こしており、JICAの環境社会配慮ガイドライン(以下、ガイドライン)に違反していると主張しています。同ガイドラインは、JICAの資金提供を受けるために事業者が遵守しなくてはならない条件です。ビルマ政府は、長年、同土地において農業で生計を立て、納税もしてきた農民に対し、土地の補償や代替地を提供することを拒むばかりか、直接的な脅迫を通じて補償合意文書への署名を村人に強要しています。また、事業に関する情報を公開せず、移転計画(RAP)や環境影響評価書(EIA)の策定にあたっても、コミュニティーの参加を許容していません。こうしたことは、JICAのガイドラインで求められているにもかかわらずです。

 

「9月21日に開かれた協議会で、(ティラワSEZマネージメント委員会委員長)セッアウン氏は私たちに対し、もし土地の補償を要求するなら、裁判所に行くことになると言いました。だから、私たちは将来に希望を持てず、選択肢のない隅のほうに追いやられている感じがしています。土地がなければ、私たちの生活も終わりです。」ティラワ社会開発グループのリーダーであるミャライン氏はこう述べました。

 

先月、ビルマ政府は、ティラワSEZ開発事業の開発・管理の責任を負っている政府機関を通じ、RAP最終版が完成していないにもかかわらず、また、RAPドラフト版やEIAドラフト版の全文が影響を受けるコミュニティーに対して公開されていないにもかかわらず、先行開発区域400ヘクタール(クラスA、つまり、フェーズ1)内の住民らを脅しながら説得し、補償合意文書に署名させようとしました。これは、JICAのガイドラインに違反しています。

 

9月24日から10月1日にかけ、ティラワSEZマネージメント委員会、ティラワSEZ支援委員会(タンリン郡、および、チャウタン郡の住宅省事務所が拠点)、そして、村の行政官らは、フェーズ1地域に暮らす村人に対し、「もし今日、署名をしなければ、一切補償を受け取ることはないだろう。」「署名しなかったとしても、家がブルドーザーで壊されるだろう。」と脅しました。現在、フェーズ1地域(400ヘクタール)では、84家族中7家族を除いた全員が補償合意文書に署名しました。

 

「私たちは、こうしたことに対応する力がないので、非常に心配です。私たちは長い間、脅威の下で生活をしてきました。今、私たちの国は民主化していると言いますが、私たちの場所では依然として、この種の脅迫が起きています。ここでは何も変化は見られません。」アルワンソ村のヒンタダ氏はこう述べました。

 

ティラワ社会開発グループのコミュニティー代表らは、JICAのガイドラインにビルマ政府が違反しているという主張を含め、彼らの懸念について話し合うため、直接会合を持つよう、JICAに要請しています。コミュニティー代表の度重なる要求にもかかわらず、JICAは今日まで、影響を受ける村人との会合について合意していません。

 

チャウタン郡住宅省で10月2日に開かれたミーティングに出席した地元の村人によれば、JICAとの会合を要求したコミュニティーに対し、ヤンゴン管区政府農業・家畜省長官ソーミン氏は、21人の農民を訴えるだろう、と述べたとのことです。JICAとの会合を要求するレターを最近提出した21人のコミュニティー代表らは、この発言について、もし彼らが活動を続けるのであれば、彼らに対して法的措置をとるという直接的な脅迫であると考えています。

(以下、連絡先)

 

※同事業の詳細はこちら
http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

 

http://mekongwatch.org/resource/news/20131010_01.html