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もう一つの一本松 “亘理の一本松”命の証し 壊滅の荒浜、復興見守る(河北新報)

2014-06-01 13:38:52

荒れ地にたたずむ大きな一本松。脇には永浜さんが手作りした鳥居が置かれている
荒れ地にたたずむ大きな一本松。脇には永浜さんが手作りした鳥居が置かれている
荒れ地にたたずむ大きな一本松。脇には永浜さんが手作りした鳥居が置かれている


東日本大震災で深刻な被害があった宮城県亘理町荒浜地区に、津波に耐えた大きな松がポツンと1本残っている。周囲にあった集落は壊滅し、地域は災害危険区域に指定された。幸運にも生き延びた亘理版“奇跡の一本松”。住民たちは「いつまでも地域を見守って」と、心を寄せている。

松は、荒浜5丁目行政区(現あぶくま行政区)の永浜紀次さん(74)の被災した自宅敷地にある。永浜家は代々漁師の家系で、6代目の永浜さんも以前は荒浜漁港で船に乗っていた。明確な由来は定かではないが、永浜さんは「200年以上前に初代が植えたか、その前から自生していたのではないか」と推測する。ipponmatsuwataari220140531037jc
高さは隣接する永浜さんの自宅の屋根を優に上回り、幹回りは大人2人でようやく抱えられるほどの太さ。震災前から周囲に巨木は少なかったそうで「海で操業中にも松が見えた」と懐かしがる。

 

震災の津波で、荒浜地区でも海に最も近い5丁目は約150戸が全壊。永浜さんの自宅も1階の天井まで冠水した。近くの小学校に避難した永浜さんは、津波の衝撃に耐えて倒れなかった松の姿を見たという。

 

「残ってくれたので家の守り神にしたい」。永浜さんは震災後、根の近くに手作りの鳥居を置いた。塩害にも耐え、今も青々とした葉がピンと伸びる。診察した樹木医も「枯れていない」と太鼓判を押したという。

 

仮設住宅で暮らす永浜さんは、近く、荒浜地区の松が望める別の場所に建てた新居に移る。「窓から松を見るのが楽しみ」と心待ちにしている。

 

5丁目は町の災害危険区域に指定された。町の震災復興計画では、元の自宅周辺は公園が整備される見込みだ。「松は自分の心の古里。できれば残ってほしい」と永浜さん。これからも、復興に向かう荒浜を見守り続けてくれるよう期待する。

 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201406/20140601_15017.html