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カンボジア・メコン河支流のセサン下流2ダム建設。影響住民が事業中止を求める共同声明を発信(メコン・ウォッチ)

2014-10-08 23:32:21

共同声明を読み上げる住民たち
共同声明を読み上げる住民たち
共同声明を読み上げる住民たち


10月3日(金)、プノンペンにて「セサン下流2ダムに関する住民参加型調査レポート発表ワークショップ」が開催され、ダムによって影響を受ける住民が、カンボジア政府と企業に対して「事業の即刻中止」と「既に伐採された貯水池内の森林に対する補償」を求める共同声明を発表しました。【1】  

 

このダムは、メコン河支流セサン川に建設される「支流ダム」ではありますが、建設されればトンレサップ湖、メコン河本流やその支流の漁業や生態系に甚大な影響を及ぼすといわれています。【2】 また、貯水池だけでも33,560ha(東京ドーム約7,000個分)もの面積を水没させるため、広範囲の森林が伐採されるだけでなく、セサン川とスレポック川沿いの7か村に暮らす約1,100世帯(5,000人)の人びとが移転を余儀なくされます。

 

ワークショップには、貯水池内に位置するストゥントレン州セサン郡クバールロミア村、スレコー1&2村、チュロブ村の住民と、ダム上流のラタナキリ州、そして下流のトンレサップ湖の住民が参加しました。

 

同席した環境省副大臣、同省環境影響評価担当大臣の他、ストゥントレン州副知事、クバールロミア・コミューン長、およびクバールロミア村長の前で住民が共同声明を読み上げ、これらの役人に直接提出しました。

 

先日もお伝えした通り、9月29日にはストゥントレン州のクバールロミア村とスレコー1&2村の住民が、移転を拒否する公開声明を提出しています。【3】 今回の共同声明の要求は一層強く明確に、セサン下流2事業を直ちに中止すること、を要求しています。

 

カンボジア政府や企業がこの住民声明を真摯に受け止め、適切な対応が取られることを期待します。

 

以下に、日本語訳をご紹介します。


住民共同声明


 

セサン下流2水力発電ダムに関する住民参加型調査レポート公表ワークショップ
於:インペリアルガーデンヴィラ&ホテル、プノンペン(2014年10月3日)

 

2014年10月3日付

(原文はカンボジア語。同英訳を和訳)

 

私たちは、カンボジア・ストゥントレン州・セサン郡のセサン川およびスレポック川沿いに位置するセサン下流2ダム(LS2)影響村、クバールロミア村、スレコー村、チュロブ村、の住民と、トンレサップ湖およびラタナキリ州の住民代表です。私たちは、発電能力400MWのセサン下流2水力発電事業(LS2)の引き起こす影響について非常に懸念しています。

 

私たちは、LS2による移転や補償受取を拒否し、事業を直ちに中止することを求める共同声明をここに発表します。

 

– 私たちは、豊かな自然資源をもたらす村での生活に非常に満足しています。私たちの日々の生活はこれらの自然資源に支えられています。更に、文化的にも民族的にも、私たちは、先祖が我々や次の世代のために残してくれたこの土地と精神的につながっています。

 

– 私たちは、生活を支え、食糧や収入源を提供してくれる豊かな自然資源や美しい土地を持っています。これらの自然資源とは、農地、次世代に残す土地、放牧地、先祖の墓地、聖なる禁制の森や精霊の森、川やその川岸であり、河川の中や土地の上に存在します。これらの自然資源は金銭に換算できない貴重なものです。

 

– これらの自然資源はまた、私たちにとって欠くことのできない文化や伝統、日々の生活に非常に強いつながりがあります。私たちは、毎年、クロホームコー(赤い首)精霊に祈りを捧げる儀式をセサン川沿いにあるクロホームコー精霊の祠で行っています。儀式では、自分たちの幸運と、環境や自然資源、特に川の自然な流れを次の世代に残すため精霊が守ってくれるよう祈ります。クロホームコー精霊は私たちと先祖たちをつなぐ大切なものです。もしこの神聖な場所をLS2によって失えば、私たちは自分たちの文化や伝統を失うことになります。一度これらの自然資源や文化伝統を失えば、二度と取り戻すことはできません。

 

– 私たちの文化、伝統、守護者である精霊や先祖たちの墓は、金銭で補償することも他の場所に移すこともできません。

 

– もし私たちがこの村から移転すれば、私たちは先住・少数民族としてのアイデンティティを失うことになります。私たちを守る精霊、先祖の墓、禁制の森や精霊の森は他の場所に移すことはできません。

 

– 先住・少数民族の権利に関する国際法や、中国政府の「対外投資協力環境保護ガイドライン」によれば、先住・少数民族のアイデンティティや神聖な場所に危害や悪影響を与えるあらゆる活動や開発事業は、実施すべきではありません。

 

– LS2は、川の流れを遮断し、上流や下流に甚大な悪影響を及ぼします。特に、このダムは魚類の回遊を遮るため、影響はメコン河やトンレサップ湖など流域全体に及びます。

 

– LS2はポルポト政権時代よりもいっそう悲惨な絶望感を与えます。しかし政府は、LS2は「開発」をもたらすと言います。開発事業は、私たちのようなカンボジア国民をより幸せにするものであるはずです。私たちよりも権力もあり教育も受けている役人の方々は、私たちを苦しめるのではなくこの問題の解決策を見つけるべきです。

 

 

私たちは、カンボジア政府に対し以下のことを要請します。

 

・カンボジア政府は、LS2事業を直ちに中止すること

・カンボジア政府と企業は、LS2貯水池の伐採行為により失われた木々に対して補償すること。この森は、私たちが日々非木材林産物を集める場所であり、野生動物の住処であった。これらの自然資源を失ったことは、私たち住民に悪影響を及ぼす。

 

より詳しい情報が必要な場合は、以下にご連絡ください。

1. フゥッ・クアン氏 ストゥントレン州スレコー2村住民代表 携帯:097 7 797 —
2. ダム・ソムナン氏 ストゥントレン州クバールロミア村住民代表 携帯:088 5840 —
3. スレイ・リベ氏 ストゥントレン州チュロブ村住民代表 携帯:097 5 001 —
4. ネン・ソキット氏 クバールロミア村住民代表 携帯:097 877 6 —
5. ロング・ソチャット氏 ポーサット州カンボジア漁民代表 携帯:012 989 —

 

宛先:
鉱工業エネルギー局(ストゥントレン州)
経済財務局(ストゥントレン州)
環境局(ストゥントレン州)
地方開発局(ストゥントレン州)
セサン郡評議会
スレコー/クバールロミア・コミューン長
スレコー/クバールロミア村長
セサン下流2水力発電企業(ハイドロランチャンとロイヤルグループの合弁企業)
カンボジア国民議会
鉱業エネルギー省
経済財務省
環境省
地方開発省
中国大使館
開発パートナー
メコン流域国および国際社会のメディアと市民団体

 



【1】原文および英語訳はこちら(PDF)。
原文(カンボジア語)http://www.mekongwatch.org/PDF/news20141008_LS2_joint_Khmer.pdf
英語訳http://www.mekongwatch.org/PDF/news20141008_LS2_joint_Eng.pdf
【2】セサン下流2ダムについてはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html

【3】詳しくはこちらのメールニュースをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20140930_01.html

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

http://mekongwatch.org/resource/news/20141008_01.html