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青函トンネル内で特急から煙、緊急停車。乗客124人徒歩で5時間半かけて脱出(毎日) トンネル約9割というリニア新幹線は大丈夫?

2015-04-04 23:46:26

青函トンネル内に一時閉じ込められた乗客はバスに誘導されて青森市内に向かった=青森県外ケ浜町で2015年4月3日午後9時51分
青函トンネル内に一時閉じ込められた乗客はバスに誘導されて青森市内に向かった=青森県外ケ浜町で2015年4月3日午後9時51分
青函トンネル内に一時閉じ込められた乗客はバスに誘導されて青森市内に向かった=青森県外ケ浜町で2015年4月3日午後9時51分


3日午後5時15分ごろ、北海道と青森県を結ぶ青函トンネル(全長53・85キロ)で、走行中の函館発新青森行き特急スーパー白鳥34号(6両編成)から煙が上がり、旧竜飛(たっぴ)海底駅から青森側約1キロ地点で緊急停車した。

乗客124人は避難場所となっている同駅まで歩いて避難した。トンネル内の事故で乗客が避難したのは、1988年の開通以来初めて。【鈴木勝一、三股智子、野原寛史、江連能弘】


 ◇5時間半かけ地上に


 

JR北海道によると、乗客から車掌に「煙を見た」との通報があった。調べたところ先頭から2両目の5号車で異臭がして、床下モーター付近で火花が出ているのを確認。非常ブレーキを作動させて緊急停止し、運転士が午後5時半ごろに消火器で消火したという。

 

旧竜飛海底駅は青森県外ケ浜町の海面下約140メートル地点にある。JR北海道によると、同駅から地上に出るには、約500メートル離れた避難所に移動し、ケーブルカーに乗って10〜15分かけて上昇する。走行距離は778メートル。一度に乗れるのは約20人で、第1陣が地上に出たのは2時間半以上過ぎた午後8時ごろ。9回に分けて運び、全員が出たのは同11時前だった。青森地域広域事務組合消防本部によると、体調不良を訴えた70代と50代の女性が病院に搬送されたが、命に別条はないという。seikantunnel2キャプチャ

 

救助された乗客は地上口にある「青函トンネル記念館」にいったん入った。JR側は大型バス3台を用意し、午後10時5分ごろから順次、乗客を乗せて約55キロ離れた青森市内に向かった。最後のバスは同11時15分ごろに出発し、ホテルに分散して宿泊した。

 

JR北海道によると、先頭から2両目の5号車床下にあるモーターで、電気を送る配線3本に過電流が流れ配線を覆う膜が焦げて煙が出たとみられる。車両は2002年製で、3日朝の点検で異常は無く過電流が流れた原因を調べている。

 

このトラブルに伴い、青函トンネルを通る海峡線は終日運転を見合わせ、後続の特急など9本が運休。JR北海道の西野史尚副社長は4日午前0時すぎから記者会見し「お客様にトンネルの中を歩いていただくという不快な思いをさせ、世間の皆様には大変な心配をお掛けした。大変申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 

竜飛海底駅は青函トンネルの開通時、吉岡海底駅とともに避難用として設置された。しかし、来春開業予定の北海道新幹線が通過するための工事に伴って駅としての機能は14年3月で廃止。ケーブルカーなどの避難設備は残した。


 ◇一列で歩いた 暗くて怖かった


 

青函トンネル内に一時閉じ込められた乗客は、ぐったりした表情で青森市内のホテルに到着し、発煙トラブル発生時の状況を話した。

 

乗り合わせた仙台市在住の60代の男性によると、車内はビニールが焼けたようなにおいがして急ブレーキがかかり、その後停電。後部車両に誘導されて車両を降り、真っ暗なトンネル内でJR側から渡されたライトを照らしながら一列になって歩いた。約30分かけて旧竜飛海底駅に到着。駅には明かりがついており、「ほっとした」と振り返った。

 

一方、煙が出た5号車に乗っていた北海道八雲町の女子中学生(14)によると、トラブル発生時、白い霧のような煙で、前がよく見えなくなったという。車外に出てから同駅に着くまで不安だったが、他の乗客がマスクを差し出してくれて落ち着くことができた。この中学生は「みんなパニックになることはなかったが、暗くて怖かった」と話した。【伊藤奈々恵、森健太郎、佐藤裕太】

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 ◇青函トンネル内での最近の主なトラブル


 

2000年12月 貨物列車が脱線し、後続の快速がトンネル内で足止め

02年 6月 吉岡海底駅付近で作業車両火災

05年12月 特急白鳥が故障で停止し、乗客530人が足止め

06年 4月 貨物列車が電気系統のトラブルで停車

11年10月 特急スーパー白鳥が部品の不具合で停車

12年 1月 寝台特急北斗星がトンネル内で燃料漏れ

7月 電気系統の故障で貨物列車が立ち往生

13年 1月 保守車両のエンジンが停止し急行に遅れ