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インドネシアのバタン石炭火力事業。インドネシア国家人権委員会が「日本は人権を重視し、慎重な融資検討を」と、安部首相や衆院議長らに直接書簡で要請(FOE)

2016-01-05 13:35:20

日本が官民を挙げて推進しようとしている東南アジア最大級となるインドネシア・バタン石炭火力発電事業(発電容量2,000MW。総事業費約4,800億円)に関し、2015年12月21日付で、インドネシア国家人権委員会(人権委)が安倍首相、および、衆議院議長に対し、同事業に伴う多くの人権侵害を指摘し、日本の慎重な関与を求める書簡を提出していたことがわかりました。



人権委は2012年以降、地元住民の申立てを受けて調査を実施しており、これまで複数回にわたり、インドネシア政府機関、および、事業者に対し、人権状況の改善を勧告してきました。



今回の日本に対する「インドネシア・バタン石炭火力発電事業への日本の投資に関する人権の尊重について」と題された書簡のなかでも、人権委は、政府・事業者らがインドネシア国内法(1999年法律第39号、2005年法律第11号、2005年法律第12号。情報、参加、表現・結社・集会の自由、職業選択等に関する人権を含む)で規定される人権について十分な保護措置をとらなかったこと、土地収用手続において地元住民に対する脅迫など、さまざまな人権侵害がみられること等を明確に指摘しています。



また、同事業が継続される場合に、政府・事業者らが住民のあらゆる権利と将来の生活を保障し、経済・社会・文化・環境影響の低減化を行なう必要があること、また、「人口が少数で紛争の可能性の少ない地域」に事業地を移転させることなど、これまでの人権委の勧告内容を示し、日本に対しては、「人権を重視し、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資関与について慎重に検討するよう」求めています。



 ※インドネシア国家人権委員会の日本に対する書簡、および、事業者・政府機関に対するこれまでの勧告書の全文(和訳)は本ページの下にあるリンクからご覧ください。

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同事業は、電源開発(J-Power)、伊藤忠が出資を決め、JBICが2,000億円近くの融資を検討中ですが、農業・漁業などの生計手段、および、健康への影響を懸念する地元住民の根強い反対により、3年以上着工が遅れてきました。



現在も約 60 名の地権者が土地売却を拒んでおり、土地収用は完了していませんが、現場では、昨年8月末のジョコ・ウィドド大統領も出席して行なわれた着工式後、買収済みの土地で国軍の重機による更地化が着々と進められている他、昨年11月末には、インドネシア当局が地権者に対し、土地収用法(2012年)(同法律適用の違法性については行政裁判で係争中)に基づく「土地権無効」を一方的に告知した形となっており、未収用地での強制執行がいつ始まるか予断を許さない状況となっています。



日本政府・JBICは、同事業において適切な人権配慮がなされてきたか、また、今後もなされるかを精査するにあたり、今回の人権委による書簡のように、住民からだけではなく、第三者からも深刻な人権侵害が指摘されていることを重く受け止め、融資判断を慎重に行なうべきです。

 

>インドネシア国家人権委員会から日本に対する書簡はこちら(PDFファイル)
 ・2015年12月21日付 安倍首相宛て書簡(和訳)
 ・2015年12月21日付 衆議院議長宛て書簡(和訳)

>インドネシア国家人権委員会から事業者・政府機関に対する過去の勧告書はこちら(PDFファイル)
 ・2012年12月11日付 勧告書(和訳)(政府機関、事業者宛て)
 ・2013年8月1日付 勧告書(政府機関、事業者宛て)
 ・2015年4月23日付 勧告書(和訳)(政府機関、事業者宛て)
 ・2015年4月23日付 勧告書(和訳)(国軍宛て)
 ・2015年4月23日付 勧告書(和訳)(バタン県知事宛て)
 ・2015年4月23日付 勧告書(和訳)(事業者社長宛て)
 ・2015年9月3日付 勧告書(和訳)(大統領宛て)
 ・2015年9月16日付 勧告書(和訳)(政府機関、事業者宛て)

(以上)


※インドネシア・バタン石炭火力発電事業に関する詳細はこちら
 http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/index.html