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ドイツのベンチャー企業、小型電気ジェット機開発へ9000万㌦の資金調達に成功。2019年に実用機試作。2025年には「空飛ぶエコタクシー」実現を目指す(RIEF)

2017-09-11 08:00:51

 

 ドイツのベンチャー企業、リリウム(Lilium:本社ミュンヘン)は、垂直離着陸ができる「小型電気ジェット機(Lilium Jet)」の実用化に向けた追加の資金調達9000万㌦(約99億円)に成功した、と公表した。その結果、合計で1億㌦以上の資金を手にし、2019年の実用機の開発に踏み出した。2025年にはウーバーのようにスマートフォンで呼び出せる環境に優しい「空飛ぶエコタクシー」サービスを予定している。

 

 リリウムは2015年に、ミュンヘン工科大学(TUM)の航空関連の若手専門家らが共同で設立したスタートアップのベンチャー企業。今年4月には、プロトタイプの2人乗りの試作機による垂直離着陸(VTOL)から水平飛行に移行する世界初の飛行に成功している。今回、5人乗り実用機の開発に向けた資金調達に成功したことで、「夢」は現実に一歩、踏み出した。

 

Lillium3キャプチャ

 

 実用機は一回の充電で最高速度300kmの速度で、1時間の飛行が可能という。米国NYのマンハッタンからJFK国際空港までは19 kmだから、リリウムジェットならば、5分で着いてしまう。

 

 電気ジェットエンジンなのでCO2など大気汚染物質の排出量はゼロ。ジェット機につきものの騒音も、電動なので限りなく低い。このため計画通りに「空飛ぶタクシー」として実用化されると、都市部の交通混雑の改善と同時に、環境汚染の改善も図れる期待がある。

 

 今回発表した「シリーズB」での資金調達に参加したのは、中国IT大手のテンセント(Tencent)、リヒテンシュタイン王室保有のプライベート銀行のLGT、スカイプ共同創業者のニクラス・ゼンストローム氏のアトミコ(Atomico)、ツイッター共同創業者のエヴァン・ウィリアムズ氏が創業したオブビアス・ベンチャーズ(Obvious Ventures)ら。

 

4月に飛行に成功した2人乗り試作機と、リリウムの共同創始者たち
4月に飛行に成功した2人乗り試作機と、リリウムの共同創始者たち

 

 リリウムの共同創設者のひとりで、CEOのDaniel Wiegand氏は「今回の投資資金の確保は、リリウムが実用化するうえでの非常に重要なステップとなる。資金支援者は、リリウムの革新的な垂直離着陸技術を評価してくれた。経済性とスピード、航続距離、低騒音を兼ね備えた電気ジェット機は他に例をみない」と強調している。

 

 投資グループの一つ、TencentのChief Exploration OfficerであるDavid Wallerstein氏は「輸送技術は我々の日常生活の基本的な役割を果たしている。リリウムの電気駆動のVTOL飛行機は、世界中の人々に利益となる新たな輸送手段を提供する。交通網が未整備な途上国での地域間輸送の改善や、先進国の都市の混雑・渋滞、スプロール化対策などにも、抜本的な効果が期待できる」と高く評価している。

https://lilium.com/