国内外で、拡大する違法漁業などによる水産資源の乱獲、海洋汚染等を防ぐため、環境・海洋NGOなど8団体が共同で、政府に対してIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策の対策、規制等の導入を2020年までに実現するように求める共同宣言を公表した。IUU水産物の輸入規制と、国内でのトレーサビリティー(追跡可能性)制度導入を求めている。
共同宣言を出したのは、WWF ジャパン、株式会社シーフードレガシー、セイラーズフォーザシー日本支局、グリーンピース・ジャパン、オーシャン・アウトカムズ、トラフィック、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー、 GR Japan株式会社の8社・団体。8社は「IUU漁業対策フォーラム」を組織、共同宣言を取りまとめた。
日本は世界最大級の水産資源国だが、一方で、違法・無報告・無規制で漁獲されたIUU水産物が大量に流通しているという問題がある。共同宣言は「IUU漁業は、世界の持続可能な水産資源管理にとって脅威であるとともに、正規の漁業者を不公平な競争にさらす、大きな国際問題」と指摘。主要先 進国が規制やトレーサビリティ確保に対して積極的に取り組む中、「世界最大級の水産資源大国である日本は他 国に遅れをとっている」と問題提起している。
こうしたことから、共同宣言は、日本政府に対して、早急に IUU 水産物の輸入規制と国内におけ るトレーサビリティの確保について対応すべき、と要請している。求める制度としては、①海外で漁獲されたIUU水産物の日本市場への流入を防ぐため、輸入時にIUU漁業に由来しないことを確実とする制度②IUU漁業に由来する水産物の日本市場における流通を防ぐため、国内において水産物のトレーサビリティを確保する制度、の2点をあげている。
トレーサビリティ―制度については、全魚種を対象とするが、I UUのリスクが高い魚種(マグロ類、カニ類、ウナギ類、ヒラメ・カレイ類、イカ類など)については、優先して制度の対象とすること。また、養殖(及びそれに用いる餌の原料)及び加工品も対象とすること、を求めている。
新制度では、水産物の輸入の際に、漁獲・陸揚げ・池入れ情報(魚種名、重量、漁船情報、漁法、漁獲水域、漁獲日、陸揚げ港等)及び輸入に至るまでの取引に関する情報を、電子的な方法で政府に報告するシステムとする。輸入水産物がIUUでないことを確認する手段としては、旗国政府認証の漁獲証明書の提出、輸入業者による確認などを取り入れる。
報告される輸入水産物に関する情報の正確性を担保するために、ガバナンス体制が不十分な国に対しては、政府間協議を通じて当該国において適切な漁業及び水産物流通の管理体制が整備されるよう働きかけることも求めている。
市場に紛れ込むと判別できないIUU水産物
国内で漁獲される水産物についても、同様にトレーサビリティの確保のための制度導入を求めている。また、国産水産物及び輸入水産物について、漁獲・輸入から小売までのサプライチェーン上の事業者間で、水産物のロットごとの漁獲・陸揚げ・池入れ情報が伝達される仕組みを作ることも要請している。