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パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置の対象に。同社に多額の融資をしている日本の3メガバンクは、環境・社会配慮方針を適用できるか。環境NGO3団体が要請(RIEF)

2018-11-09 08:30:33

RAN1キャプチャ

 

   環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)とともに、インドネシアのパーム油大手インドフード社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から制裁措置を通告されたことを受け、同社に融資をしている日本の3メガバンクに対し、各行の環境・社会面配慮の投融資方針に沿って、同社への融資を禁止するよう要請した。

 

 (写真は、パーム油の椰子殻を拾い集める児童労働と思しき情景)

 

 今回のRSPOによるインドフードへの監査は、RAN、OPPUK、ILRFの3団体が2016年10月に行った苦情申し立てに基づき、実施された。苦情申し立ての前から、インドフードが所有・運営する農園で深刻な労働権侵害が明らかになっていた。

 

 インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一つだが、RSPO基準や国内外の基準と法律に違反し、労働搾取の慣行に関与していることがわかった。指摘された労働搾取の慣行の中には、非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など危険性のある労働条件が含まれる。

 

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 RSPOの監査で、インドフードが所有・運営する一部のアブラヤシ農園で、RSPOが求める「原則と基準」分野で20件以上の違反と、インドネシア労働法の分野で10件の違反が見つかった。監査の範囲は、苦情の対象になった農園に限定しており、実際の違反はさらに多いと推測される。

 

 またRSPOは、RSPO認証を取得しているインドフードのパーム油搾油工場1カ所と農園3カ所でも監査を実施した。その結果、「重大かつ組織的な性質の違反」があり、対象になった工場と農園のRSPO認証について即時停止が必要、と指摘した。同社子会社でRSPO認証を取得している他の全ての認証ユニット(農園、工場レベルなど)でも3カ月以内の全面的な監査を求め、監査の監視が必要であるとした。

 

 RSPOの制裁措置に先立ち、インドフードと取引のあったネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、マースなど多くのパーム油購入企業は同社との取引をすでに停止した。

 

 インドフードは2018年9月30日の時点で、日本の3メガバンクから730億円以上の融資を受けている。3メガバンクは今年5月と6月に、それぞれ社会と環境に配慮した投融資方針を公表し、全銀行が違法行為への融資を禁止すると誓約した。

 

 たとえば、インドフードへの最大の貸し手であるみずほフィナンシャルグループは、パーム油に特化した方針で「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行う」と説明している。

 

 また三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)は、児童労働を行う事業へのファイナンスの禁止をうたっている。さらにSMFGは、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することを方針の中で明記している。

 

 NGOらは、3メガバンクが今年、自ら作成した環境・社会配慮方針に沿った形で、インドフードに対する融資を全面的に見直し、融資資金の回収を急ぐよう求めている。日本のメガバンクと比較するように、シティグループは今年4月にインドフードのパーム油事業への全融資を禁止に踏み切っている。

 

 RANの「責任ある金融」シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケン氏は「メガバンクは合法性、人権尊重、環境保護を方針に定めている。今回のRSPOによる制裁を受けて、メガバンクにはインドフードへの資金提供を停止することが求められる。 インドフードと同社の子会社に投資しているブラックロックや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もあらゆる資金を引き上げる必要がある」と強調している。

 

 OPPUKの専務理事 ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「インドフードは最悪企業の一つで、『持続可能な』パーム油認証を受け続け、パーム油産業全体とRSPOの評判を落としてきた。労働者のための正義を実現する第一歩として、インドフードは、今や何度も確認された長年にわたる労働権侵害を是正しなければならない」と強調している。

 

  ILRFの副事務局長のエリック・ゴットワルド氏(Eric Gottwald)は「今回の制裁措置は、RSPOやパーム油購入企業、金融機関にとって、労働搾取を禁止するための方針と方針実施を強化するための判断基準となるべき。ただ、RSPOは決定までに2年もかけた。その間、労働者は基本的人権の侵害に苦しみ続けてきた。多大なリスクを抱えながら違反を報告した労働者たちには、もっと迅速で効果的な苦情処理プロセスが約束されねばならない」と述べている。

 

 RANなどはインドフードに対して、包括的かつ期限を定めた「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を、自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業社にも導入し、実践するよう求めている。

 

 RAN、ILRF、OPPUKの3NGOはインドフードが労働法違反を改善するための必要事項をまとめ、実施を求めている。

 

1) 農園での主要作業にかかわる全ての労働者に終身雇用を即時に約束して昇格させること


2) 労働者に生活賃金を保障し、天引きされた給料や給付金、昇給、そして無給業務を過去にさかのぼって補償すること


3) 結社の自由を全面的に尊重し、組合加入について全ての労働者に報復がないことを保証すること


4) 所有・運営する農園の女性労働者に起きている悪質な差別の解消に取り組み、女性の権利を保証すること

 

5) 労働者や労働者団体、独立した労働組合と協議の上、適正かつ透明性のある生産目標設定を確保すること

http://japan.ran.org/?p=1291