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中国・長江でダム建設準備工事を開始=自然保護区が水没へ(Reuters)

2012-03-30 21:49:55

長江の三峡ダム(09年12月2日、中国湖北省宜昌市)
【北京29日ロイター時事】中国の長江三峡集団公司は29日、小南海ダム(事業規模300億人民元=約3900億円)建設のための準備工事を始めた。このダムの建設が完成すれば、長江(揚子江)の中間区域のうち、これまでダムや堤防によって流れを阻害されていなかった最後の部分が水没することになる。

長江の三峡ダム(09年12月2日、中国湖北省宜昌市)




 環境保護論者は、約40種の川魚を保護するために設けられた自然保護区が水没し、人工の貯水池になってしまうとして、同ダムの建設に反対してきた。

 例えばダム建設を阻止しようと2年以上活動を続けてきた環境保護論者の馬軍氏はロイター通信に対し、ダムが完成すると、長江の中間部分は一連の貯水池に変わるため、「魚の居場所がなくなる」と述べた。その上で「ここは2000キロメートルにわたる長江流域のうち、絶滅危惧種や土着の魚のために残されている最後の部分だ。ここが彼らの最後の生息地だ」と語った。

 長江三峡集団の広報担当者によると、道路建設や送電線と水道管の設置といった、ダム建設に向けた初期段階の準備を始める式典が行われた。同担当者は「ダム本体の建設は今後、政府からの最終承認を経て開始される」と述べたが、建設費用の見通しについては明らかにせず、「政府は環境への影響など全ての要因を考慮して承認するかどうか判断するだろう」と付け加えた。

 小南海ダムは長江に建設される一連の12カ所のダムのうち最後に建設されるダム。残りは既に完成しているか、あるいは建設中だ。

 この一連のダムは三峡ダムよりも内陸に位置する。三峡ダムの建設により、全長600キロメートルに及ぶ貯水池ができ、重慶市による内陸港開発が可能になった。完成後の小南海ダムの発電能力は1.76ギガワット(GW)になる予定で、三峡ダムの最大発電能力22.50GWに比べるとはるかに少ない。

 重慶市政府は現在、権力闘争の渦中にある。野心的だった薄熙来党委員会書記が今月解任されたためだ。薄氏の側近だった王立軍副市長(前公安局長)はこれより先、米総領事館に駆け込んだあと中国公安に拘束されている。

 ダム建設を暫定承認したのは、中国国家発展改革委員会。同委員会は、ダム本体の建設の最終承認の権限も持っている。