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雪が降ると発電するデバイスを米UCLAの研究チームが開発。降雪地帯でのモニタリング装置等の電源や、太陽光発電の発電効率アップも期待(RIEF)

2019-05-07 09:10:01

UCLA1キャプチャ

 

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス(UCLA)の研究者たちが、降雪から電気を作り出す方法を開発した。雪が起こす静電気を利用する。蓄電池無しで発電ができ、 降雪地帯でのモニタリング機器等の電源になるほか、降雪で発電力が低下する太陽光パネルと接続すれば、継続的な発電効率の向上も期待できる。

 

写真は、開発者のMaher El-Kady氏㊧とRichard Kaner氏)

 

 「雪から発電」という魔法の手法を開発したのは、UCLAの有名な研究者のRichard Kaner氏と 同僚のMaher El-Kadyis氏。Kaner氏は、米科学者機関から2019年の科学パイオニア賞を受賞したほか、これまでも多くの研究成果をあげている。

 

 「降雪発電」の仕組みは、簡単だ。El-Kady氏は「雪は常に帯電している。そこでわれわれは、他の素材でマイナス電極を起こさせれば、電気を作り出せるのでは」と考えた。雪はプラスに帯電しており、電子を放出する。雪が積もる材質がマイナス電極となると、降雪時に、両極間で電荷が生じて静電気が発生する。

 

 研究チームは、多様な素材を実験して、もっとも効率的に電気が発生する素材を探し求めた。その結果、シリコンなどの合成ゴム素材の帯電率が最も高いことがわかった。

 

スノーシューズに装着することも可能
スノーシューズに装着することも可能

 

 発電量は単一の電極モードで、㎡当たり0.2ミリワット、電圧は開路電圧(OCV)で8ボルト、電流密度は㎡当たり40マイクロアンペア。発電量は多くないが、複数の電極を組み合わせれば、一定量の電力を確保できる。また蓄電装置が不要なので、降雪自体での気象観測装置等のモニタリング機器に応用できるほか、多様な展開が考えられるという。

 

 研究チームは3Dプリンターでシリコン層と電極を持つデバイスを設計・製造した。雪ベースの「摩擦帯電型ナノ発電機(snow-based triboelectric nanogenerator, or snow TENG)」と名付けている。

 

 開発したデバイスを太陽電池パネルに接続すると、雪がパネルに積もった際でも電力を連続的に発電できる。またデバイスは小さく薄く柔らかいため、スポーツウェアや靴などに組み込んで、スポーツウエアや冬山登山時の保温、あるいは遭難時のシグナルを送信装置などにも応用できそうだ。

 

 Kaner氏の研究室は、これまでも多様な「発明」をしている。たとえば、タンカー等による原油流出時にオイルを自ら分離する処理膜は、シェールオイルの開発にも転用されているという。また燃焼を遅らせる素材を開発、消防士の衣服や靴等に活用されている。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211285519302204

http://newsroom.ucla.edu/releases/best-in-snow-new-scientific-device-creates-electricity-from-snowfall