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タバコ企業支援の財団が、「Smoke-Free(禁煙) インデックス」開発へ。禁煙活動に貢献するタバコ企業への投資を奨励(?)。国連支援の責任投資原則(PRI)代表も関与(RIEF)

2019-05-16 13:59:40

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    タバコ会社だけを対象とした「 The Smoke-Free(禁煙) Index」が2020年にも立ち上がる。米財団が推進しているもので、グローバルなタバコ企業15社を選び、各企業が実施している禁煙活動を量的に評価できるようにするという。ただ、同財団は大手タバコメーカーの支援を受けていることから、環境NGOらは懐疑的だ。財団の理事には国連支援の責任投資原則(PRI)代表も名を連ねている。

 

 初の「禁煙インデックス」の立ち上げを進めているのは、米国の財団「The Foundation for a Smoke-Free World(FSFW)」。2017年にWHO(世界保健機関)で要職を経験した南アフリカ出身のデレック・ヨ(Dreck Yach)氏が、米タバコ大手のフィリップモリスの支援を受けて立ち上げた財団だ。理事にはPRIの代表のマーティン・スカンケ氏や、日本の医薬品関連事業の大塚ホールディングス取締役、東條紀子氏らがいる。

 

 FSFWは、欧州の市場調査会社のEuromonitor International と、英国のコンサルティグ会社のSustainaAbility社とそれぞれコンサル契約を結び、Smoke-Free Index®の開発に取り組んでいる。インデックスが公表されるのは2020年6月の予定。

 

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 インデックスの詳細は開示されていないが、欧州メディアの報道によると、世界のタバコ会社15社を選び、それぞれの企業が世界35カ国の市場での活動を毎年評価する。インデックスの目標は、各社が「世界を禁煙化」するためにどのような活動をとっているか、を定量的に評価し、インデックスに組み込む形をとるという。

 

 FSFWのデレック・ヨ氏は「タバコ産業はその活動を変えねばならない、『The Smoke-Free Index® 』は紙巻きタバコこの生産を止めるために、各社がとる対策を進展させるために必要な評価を提供することを目指すものだ」とコメントしている。インデックス開発に協力しているEuromonitor International とSustainAbilityの2社について、「両者とも市場に尊敬される独立したグローバルなリサーチ会社だ。彼らが価値あるツールを作り出してくれることを期待している」としている。

 

 タバコ産業が禁煙活動をキャンペーンする形だが、禁煙推進団体や金融界などからは警戒感も少なくない。年金等の機関投資家に、タバコ産業への投資停止を求める活動を展開しているオーストラリアのキャンペーングループ「Tobacco Free Portfolios (TFP)」は、「今回のインデックス開発の動きは、これまで金融機関による反タバコ・ファイナンスとして成し遂げられてきた ポジティブ・インパクト活動への(タバコ業界からの)直接の挑戦だ」と警戒。TFPの関連投資家に対して、FSFWの活動に参加しないよう呼びかけている。

 

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 金融機関の反応も微妙だ。オランダのNNグループ傘下の資産運用会社の NN Investment Partnersは、2018年に投資ポートフォリオから タバコ産業を除外した。「タバコ産業について、ベストインクラス・アプローチをとることはわれわれとは相容れない」としている。

 

 ベストインクラス・アプローチとは、タバコや化石燃料、ギャンブル、アルコールなどの社会的に問題視される産業を投資対象から除外する「ネガティブアプローチ」ではなく、それらの企業の中でも、同業他社よりも環境配慮や自社製品の負荷削減に努めている企業を選んで投資を認める手法だ。日本の資産運用機関が、エンゲージメントとして好んで採用する手法でもある。

 

 しかし、NN Investmentは「タバコ産業に対して、こうしたエンゲージメント手法で対応しても、規制の強化や重要なESGリスクを軽減できない。製品そのものの影響の大きさは変わらない」と指摘し、インデックスでESG配慮や禁煙活動をしているタバコメーカーを評価する手法は、投資として限界があるとの立場をとっている。

 

 また同じくオランダの大手銀行ABM AMROのESG担当、Ruben Zandvliet氏も「『責任あるタバコ会社』という設定自体が自家撞着だ。タバコの健康被害はWHOで明確に確認されている。タバコという製品自体が健康被害を引き起こしていることが根本的な問題。インデックスを作っても、問題を置き換えることはできない」と批判している。ABM AMROは2017年にタバコ産業への投融資を全面停止している。

 

 温暖化対策で石炭火力や化石燃料産業を投資対象から除外するDivestment運動が世界的に広がっている。同様に、タバコ産業についても、Divestmentの対象とする金融機関や機関投資家も増えている。スウェーデンの公的年金AP4やオランダの公務員年金ABP、仏銀BNPパリバ、資産運用のRobecoなどは、すでに資産運用対象だったタバコ会社株を売却している。

 

 国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が推進する「 Tobacco-Free Finance Pledge 」キャンペーンには、各国の資産運用機関140社が署名しており、運用資産総額は7兆1000億㌦に達する。国連のグローバルコンパクトも、2017年以来、タバコ産業の参加を禁じている。

 

 こうした懸念に対して、 FSFWのスポークスパーソンは「タバコ産業はタバコ生産と、紙巻タバコの使用の終了をグローバルに推進する必要がある。そうした環境下で、このインデックスは、市場をそうした方向に向かわせるための革新的技術開発等を導入するうえで、適切な役割を果たすと信じている。革新的技術の進展はタバコ産業の転換に役立つ。インデックスの開発には多くのステークホルダーの参画を得て進めたい」とコメントしている。

 

 FSFWの活動を資金面で支援している世界最大のタバコメーカーのPhilip Morris Internationalは、現在、同社製品の顧客の30%が紙巻タバコの愛好家だが、2025年までに、紙巻タバコの販売を停止する計画を立てていることを強調している。ただ、新規開発のインデックスがそうした計画にどう関連、あるいは影響するのかについては説明していない。

https://www.smokefreeworld.org/newsroom/leading-global-research-firms-selected-create-first-ever-smoke-free-index

https://www.smokefreeworld.org/