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アマゾン流域の森林伐採、再び増加へ。6月は前年同月比6割増。ボルソナロ政権の「資源開発政策」を反映か(RIEF)

2019-07-04 15:52:09

サッカー場のように伐採していく(2017年の撮影)

 

  ブラジル国立宇宙研究所(INPE)の衛星を使ったアマゾン側流域の観測で、同地域の熱帯雨林が破壊が加速し、6月は伐採去れた森林面積が6月は769.1k㎡と昨年同月比約6割増と急増した。1秒ごとにサッカーコートの1.5倍の森林面積が消えたことになる。昨年8月から5月までの累計でも4%増で、3年ぶりの高水準に戻っている。環境保護団体は、同国で今年1月に就任した右派ボルソナロ大統領の政策が森林破壊に影響しているとの警戒している。

 

 INPEはDETER(Deforestation Detectio System in Rial Time )と呼ぶ観測衛星システムで、アマゾン川流域の森林を常時監視している。これまで乱開発が続いていたアマゾン地域の森林伐採は2004年をピークとして減少に向かっていた。2004年の年間伐採量は2万7000k㎡前後まで延びたが、その後、ほぼ毎年減少し、2012年には年間5000k㎡を切る水準にまで下がった。04年の5分の1以下だ。

 

 その後は、微増傾向ではあるが、ほぼ横ばいで推移してきた。今年1月に就任した右派のボルソナロ大統領は、アマゾンの森林をブラジルの資源とみなし、森林伐採・農地転用を促進する立場を鮮明にしている。そうした政権の政策スタンスの変更で、今年に入って伐採面積の増加が目立つようになったという。6月の森林消失面積は769.1k㎡で、前月5月の739.68k㎡より3%の増加。前年比では6割増だった。

 

森林伐採は増加基調に転じたか?
森林伐採は増加基調に転じたか?

 

 アマゾンの森林の3分の2以上はブラジルにある。現地の環境保護団体は、ボルソナロ大統領は選挙公約で、ブラジル経済の回復に向け、アマゾンの開発を進めるとの姿勢を打ち出し、「資源としての森林」を重視する政策を推進していることが、実際の森林伐採の急増につながっているとの見方を示している。

 

 同国の環境NGO連絡会、オブセルバトリオ・ド・クリマ(気候監視団)のカルロス・リットル事務局長は、ボルソナロ政権が選挙公約通りにアマゾン地域での環境規制を解除し、違法伐採等への監視体制を緩めていると指摘する。その結果、森林の違法・不正伐採やそれに伴う農地の拡大、鉱物の採掘などが加速しているという。

 

アマゾン地域の年間森林伐採の推移
アマゾン地域の年間森林伐採の推移

 

 環境NGOのグリーンピースは、米トランプ政権にシンパシーを示しているボルソナロ政権を「気候バランスへの脅威」と呼んで警戒を強めている。ブラジルは、同政権前まで、気候変動対策でも途上国の先頭を切って対策推進に動いてきたことで知られる。だが、現政権に代わってそのスタンスは明らかに変わり、開発優先の姿勢になっている。一方で、そうした政策転換で同国の対外イメージは大きく後退しており、NGOらは「長期的にみると、ブラジルは大きな経済的代償を払うことになる」と警告している。

 

 アマゾンは同川の流域面積705万k㎡で世界最大の規模を持つ。その広さはオーストラリア大陸全体の面積に匹敵する。流域の生態系は、世界最大の熱帯雨林地帯を形成、地球全体の大気中の酸素の約20%を供給するとされる。

 

http://www.inpe.br/noticias/noticia.php?Cod_Noticia=5129