HOME8.温暖化・気候変動 |英国ナショナルトラスト、ビーバーの自然ダム建設能力を、洪水防止と生態系維持に活用する取り組み、来春から開始。気候変動による豪雨・洪水対策をビーバーにお願いするわけ(RIEF)。 |

英国ナショナルトラスト、ビーバーの自然ダム建設能力を、洪水防止と生態系維持に活用する取り組み、来春から開始。気候変動による豪雨・洪水対策をビーバーにお願いするわけ(RIEF)。

2019-11-21 11:53:32

beaver1キャプチャ

 

  河川の洪水対策や生態系維持のため、英国の慈善団体ナショナル・トラストが、かつて欧州でも生息していたビーバーを再導入する計画を打ち出した。来春に英国南部の森林地帯2カ所に試験的に導入する。ビーバーは河川に自らダムを造ることで知られる。ビーバーのダムは、乾季に水を貯留するほか、雨期の鉄砲水等の緩和にも役立つという。日本でも検討できるかも。

 

 ビーバーはかつて、英国にも生息していた。しかし、その毛皮や肉、じゃ香腺への需要が高まり、乱獲された結果、16世紀には絶滅した。その後、2006年からスコットランド西部などでは、元の生息地でのビーバー復活計画が進められ、飼育・繁殖されているという。

 

 ナショナルトラストのビーバー復活作戦は、ビーバー保護だけでなく、ビーバーの自然災害抑止力と生態系維持力を重視する形で進められている。ビーバーは周辺の樹木を集めて河川の一部をせき止めてダムを造ることで「天然の土木技師」と呼ばれる。このダムは、河川の流量を一定に保つ機能と、周辺の湿地環境を支える機能を持つ。また土壌の流出も防ぐ。

 

ビーバー・ノンノン、なんちゃって
ビーバー・ノンノン、なんちゃって

 

 人間が作るコンクリートのダムとは違い、ビーバーのダムからは常に一定の水が流れ出ていることから、豪雨時に満水になって緊急放水するような事態にはならない。

 

 ナショナルトラストでは、ビーバー3家族を試験的に自然界に放ち、河川の「管理能力」を試すという。イングランド南部のサマーセット地方のExmoorのHolnicote地区に2家族、サリー州と西サセックスの境界のBlack Down地区に、もう1家族を放つ予定。

 

 Holnicote地区のプロジェクトマネジャーのBen Eardley氏は「われわれの目的は、ビーバーに、この地区の生態系維持を守る重要な役割を担ってもらい、自然全体の健康と豊かさを高めることを目指す点だ」と語っている。

 

 ビーバーを導入する地区は、いずれも2~4ha(2万~4万㎡)で地区全体はフェンスで囲う。ビーバー導入による地域の生態系や河川への影響を事前評価したうえで導入する。導入するビーバーはスコットランドで飼育されているものを移送する。

 

 繁殖して増えると、他の地域に広げていく。新たにビーバーを導入する地域での管理等は、同トラストの慈善資金とボランティア活動で賄う予定。今回のビーバー計画には、Exter大学等の研究者も参加、生態系への影響についてもフォローしていく、としている。

 

https://www.nationaltrust.org.uk/join-and-get-involved

https://www.theguardian.com/environment/2019/nov/20/beavers-to-be-released-in-plan-to-ease-flooding-and-aid-biodiversity