HOME12.その他 |清水建設、ベトナム戦争時の米軍による枯葉剤攻撃で残留したダイオキシンによる土壌汚染の洗浄処理実証で平均95%の除去率。熱処理技術と組み合わせ、100%無害化目指す(RIEF) |

清水建設、ベトナム戦争時の米軍による枯葉剤攻撃で残留したダイオキシンによる土壌汚染の洗浄処理実証で平均95%の除去率。熱処理技術と組み合わせ、100%無害化目指す(RIEF)

2019-12-27 17:42:53

Shimizu1キャプチャ

 

 清水建設は、ベトナムのビエンホア空港敷地で、ベトナム戦争時の米軍による枯葉剤由来の残留ダイオキシンによる土壌汚染を浄化する実証実験を実施、洗浄処理土の除去率平均95%を実現したと公表した。同実験は、ベトナム政府機関と共同で実施したもので、米国とベトナム両国政府が2020年6月にもスタート予定の本格除染事業での採択を目指すとしている。

 

 (写真は、ベトナム・ビエンホア空港内に設置したオンサイト型の土壌洗浄プラント)

 

 清水建設はベトナムでの土壌浄化除染の取り組みを、同国の環境問題を担当する政府機関「NACCET(National Action Center for Chemical and Environmental Treatment)」と共同で進めている。清水は2018年6月、NACCETの前身である同国国防省傘下の研究機関「CTET(CENTER FOR TECHNOLOGY OF ENVIRONMENTAL TREATMENT)」と実証試験の共同実施に関する覚書を結んでいる。

 

米軍がベトナム戦争でばらまいた枯葉剤は㌧
米軍がベトナム戦争でばらまいた枯葉剤は確認されただけでも8万㌧以上とされる

 

 この覚書に基づき、清水は日本国内から土壌洗浄プラントを海路でベトナムに分割輸送、2018年11月にビエンホア空港内でのプラント建設に着手した。2019年1月末に完成したプラントは、試運転を経て、3月下旬から実証運転に入った。

 

 実証実験では、空港内からの土壌から採取した汚染濃度の異なる複数の土壌試料(総量約900㌧)を洗浄処理した。その結果、洗浄処理土のダイオキシン成分の除去率は平均95%で、室内実験での確認除去率と同等の高い除染効果を得た。同社では汚染土壌の70%近くを浄化土として再利用できる見込みが立った、としている。

 

Shimizu3キャプチャ

 

 また、汚染土壌全量の完全無害化を実現するため、2019年11月末から、洗浄処理後の残渣を熱処理する追加実験も米企業と共同で実施中だ。洗浄処理後に出る濃縮汚泥を熱処理することでダイオキシン汚染土壌の100%の再利用が可能になるとしている。

 

 同社では、汚染土壌の洗浄処理は熱処理に比べて低コストかつ環境負荷が低いことから、同技術と熱処理を併用することで、環境負荷と浄化コストを最小限に抑制できるとしている。両方式の組み合わせによる浄化手法の有効性確認のため、熱処理の追加実験を2020年3月までに終え、両方の試験結果を総合した報告書をまとめる予定だ。

 

 ベトナム国内には、ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤に由来するダイオキシン汚染土壌が、今も多く残されている。今回の除染対象となったビエンホア空港には約85万㌧及ぶダイオキシン汚染土壌があるとされる。同国最大規模のダイオキシン汚染サイトだ。

 

 清水建設では、2014年から、日本国内で多くの処理実績がある土壌洗浄技術による枯葉剤由来汚染土壌への適用可能性の調査に取り組んできた。今回の実証試験を通じて汚染土壌処理技術の有効性を証明し、ダイオキシンや重金属、農薬等の汚染土壌処理をはじめとする環境改善事業をベトナム全土で展開、同国の経済発展に貢献したいとしている。

 

 清水の土壌洗浄技術は、汚染土壌をふるい分けした後、粒子の大きさに合わせて水洗いや擦り洗いをし、分離した汚染物質を泡の表面に付着させて除去するフローテーションなどを行う。日本国内でこれまで実施した洗浄処理実績は累計300万㌧という。

 

 ダイオキシン汚染土壌は焼却処理(850℃以上)により無害化できる。だが、処理コストが高く、厳しい排気ガス管理が必要になる。これに対して、洗浄処理は、低コストで、かつ排水、排気ガスは発生しない利点がある。

https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/

https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019038.html