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オーストラリアの山火事の影響で、カンガルーが大挙しゴルフ場に逃げ込む。重度のやけどを負ったカンガルーは地元獣医によって安楽死処分(各紙)

2020-01-12 00:44:02

CNN3キャプチャ

 

   CNNの報道によると、山火事が続くオーストラリアの南東部ビクトリア州マラコータで、火災から逃れてきたカンガルーたちが、大挙してゴルフ場に逃げ込んでいるという。しかし、その中には、重度のやけどを負ったカンガルーが少なくなく、保護に駆け付けた獣医は安楽死処分をせざるを得ない状況だ。ゴルフ場のコース上には安楽死させられたカンガルーが何匹も横たわり、戦場に似た光景になっている。

 

 (社員は、ゴルフ場に逃げ込んで安楽死させられたカンガルーをチェックする地元の獣医)

 

 報道によると、地元の獣医のクリス・バートンさん(70)は9日朝、ゴルフ場に逃げ込んだ4匹のカンガルーを安楽死処分にした。彼らは前脚と顔にひどいやけどを受け、それらはすでに腐敗しており、手の施しようがなかったという。

 

足がやけどで焦げてしまったカンガルー
足がやけどで焦げてしまったカンガルー

 

 カンガルーは飛び跳ねて移動する。だが、やけどのため跳ねることもできない子どものカンガルーもいた。バートンさんはまず、ダート銃を使ってこれらのカンガルーに鎮静剤を打つ。動かなくなったところで頭部をライフル銃で撃ち、一瞬で絶命させる。迅速な安楽死措置で、やけどを負ったカンガルーにそれ以上の痛みを受けることはないという。

 

 バートンさんは取材に対して「悪夢だ。獣医を40年やっているが、いまだに慣れない。動物を大量に殺さなくてはならないのはつらすぎる。どうしても目に涙があふれてくる」と語っている。

 

麻酔銃を撃ってから安楽死処分へ
鎮静剤で眠らせてから安楽死処分へ

 

 カンガルーの安楽死処分は困難で気の滅入る作業だ。しかし回復不能の彼らをそのままにしておくと、長い時間をかけてより激しい痛みを味わったうえで死ぬことになる。バートンさんをはじめとする現場の獣医にとってさらに耐え難い。

 

 マラコータ周辺の土地がほぼすべて焼き尽くされた状況といえる。このため、バートンさんらは逃れてきたカンガルーを保護するものと安楽死させるもととに区分けすることで、火災の被害に一つの区切りをつけたいと考えている。次の作業は、燃えた森林や草原を元の植生に戻し、保護した野生動物が住める自然の状態を復活させる取り組みだ。

 

 ただ、ビクトリア州に隣接するニューサウスウェールズ州では最大5億匹の動物が被災し、そのうち数百万匹が焼死した恐れがあると専門家は推定している。このため、一部の生物種の個体数には致命的な影響を受けたものもあるとみられ、元の生態系に戻せるか不明との懸念の声も出ている。

 

火災から救出したコアラのウィルバーを抱くボランティアのジャック・ブルースさん
火災から救出したコアラのウィルバーを抱くボランティアのジャック・ブルースさん

 

 雨が降ることで森林地帯は急速に回復する可能性がある。多くの犠牲を出したコアラがエサとするユーカリの森も、雨が降ると焼け残った木から芽が吹き、次第に元の姿に戻ると期待される。カンガルーが逃げ込んだゴルフ場から車で少し走ったところで、CNNの取材班は、2人のボランティアが5日間保護した1匹のコアラを樹上に返そうとしている場面に出くわした。

 

  その場所は、火災の被害を免れた山林が残っていた。ボランティアたちは、そこで「ウィルバー」と名付けられた雄のコアラを入れたケージを開放した。10分ほど迷っていたウィルバーだったが、最後にはケージからはい出し、新たな住み家となる木によじ登っていった。

 

  樹上には別のコアラがいた。赤ちゃんを背中に乗せた元気なコアラの母親の姿だ。火災から逃れた鳥たちのさえずりも聞こえてきた。ボランティアたちは、「山火事で動物たちが苦しむのを見るのは悲しい。でも、生き残るチャンスを少しでも与えるためには立ち向かわなければならない。希望はあると思う」と述べている。

https://www.cnn.co.jp/world/35147874.html