HOME8.温暖化・気候変動 |地球温暖化の影響、今度はアフリカでバッタの大量発生。東アフリカから中東まで広がる気配。食糧危機を深刻化、社会対立や紛争激化の要因にも。国連食糧農業機関(FAO)が警告発す(RIEF) |

地球温暖化の影響、今度はアフリカでバッタの大量発生。東アフリカから中東まで広がる気配。食糧危機を深刻化、社会対立や紛争激化の要因にも。国連食糧農業機関(FAO)が警告発す(RIEF)

2020-01-27 08:53:50

lotust6キャプチャ

 

 温暖化による気候変動の影響で、東アフリカで過去25年間で最悪となるバッタ(サバクトビバッタ)が昨年から大量発生し、地域住民1900万人の食糧や家畜に大きな被害をもたらしている。被害はアフリカから、中東、インドにも広がる形勢だ。国連食糧農業機関(FAO)は警戒警報を発している。

 

 (写真は、雪が降っているのではない。無数のバッタが飛び舞っている)

 

 FAOによると、バッタの大量発生は、ソマリア半島周辺の「アフリカの角」地域で昨年末から激化している。同地域一体は昨年10~12月に激しい豪雨や干害等の天候不順に見舞われた。その後、1㎢から数百㎢規模のサバクトビバッタの群れが発生、無数の波のようになって同地域を襲っているという。

 

サバクトビバッタはこんな顔をしている
サバクトビバッタはこんな感じ

 

 FAOの確認によると、最大の群れは40km×60km(総面積240㎢)の広さで移動しているという。この群れは、人間8500万人が一日で食べる食糧規模と同量を一日で食べ尽くす。1㎢当たり最大で8000万匹がひしめき合っているというから、最大群れでは20億匹ほどになる計算だ。

 

 サバクトビバッタの特徴として、滞空時間が非常に長く、1日当たり130km以上も移動する点がある。草原、牧草地、農作物等の植物をすべてを餌にする。バッタの中でも速い繁殖能力を持つ。このため「最も破壊的なバッタ」とされる。

 

 同地域では2007年にも同バッタが大量発生している。だが、今回はそれよりも何倍もの規模での発生だ。被害が深刻なケニアでは、過去70年で最悪の状況という。同国政府は群れを縮小させるために、飛行機4機で殺虫剤を空中から投与するなどの対策にすでに500万㌦(約5億4500万円)を出費した。

 

「ソマリアの角」地帯から、紅海を超えて中東へ飛び火
「アフリカの角」地帯から、紅海を超えて中東へ飛び火

 

  エチオピアやソマリアの被害も深刻化している。エチオピアはすでに昨年7月くらいから、バッタ被害が発生していたという。これまでに同国の国土429㎢以上がバッタの群れで覆いつくされたという。バッタはすでに繁殖を重ねて膨大な規模に膨れており、同国からケニア、ソマリアに移動している。

 

 それらのバッタは、今年1月に、エチオピアとケニアをつなぐ穀倉地帯のRift Valleyに移動した。エチオピアではすでに850万の人が食糧不足に直面しており、穀倉地帯がバッタ被害を受けると、同国の食糧危機がさらに悪化する懸念が深まっている。ソマリアでも670万人、ケニアは310万人が食糧不足の状態にあり、さらなる悪化が予想されている。

 

 FAOではこれら3か国での被害を食い止められないと、被害はさらに拡大し、南スーダンやウガンダなどの他の東アフリカ諸国に広がると指摘している。食糧被害の広がりは、これらの地域での社会不安や地域間紛争を激化させる要因になりかねない。

 

航空機から殺虫剤を散布。バッタの繁殖率を抑えられるか。
航空機から殺虫剤を散布。バッタの繁殖を抑えられるか。

 

 現地で対策に当たっている地元団体の関係者によると、地域の農作物や牧草地などは、すでに広範囲に被害を受けている。ただ、バッタの群れが次々に襲来してくるので、全体の被害規模を把握できない状態という。投与される殺虫剤で一定の効果は出ている模様だ。しかし、その効果も、新しいバッタの群れが絶え間なく続くので、確認しきれていない。

 

 FAOはバッタの群れの増加は6月まで続くと予測している。このため半年間の緊急行動計画を作成し、7000万㌦を投じて、地域の群れの発生を根治する計画を進めるとしている。

 

 事態の深刻さを示すのが、バッタの群れが紅海を超えて、中東のオマーンやイラン南部、イエメン、サウジアラビア南部沿岸地帯等にも、すでに飛び火していることだ。成虫のバッタがスーダンとエリトリアの国境沿いで産卵していることが確認されている。さらに、インドとパキスタンの国境沿いでも群れが見つかっている。バッタは卵から2週間で孵化し、新たな群れを倍加させる。サウジとスーダンもは今月、航空機による殺虫剤散布に踏み切った。

各地に広がる。バッタ、恐るべし
各地に広がる。バッタ、恐るべし

 

 温暖化の加速による気候変動の増大はすでに多様な形で現実化している。日本が昨年、超大型台風の連続襲来で受けた大規模な自然災害の激化、オーストラリアでの異常乾燥の長期化による森林火災の増大、米国西海岸地域やシベリア等での森林火災、そして今回のアフリカでの生態系への異常な影響による生物種の過剰発生等ーー。

 

 気候変動は、すでに後戻りできないレベルを超えているのかもしれない。若い世代はそれに気づいて声を上げ始めた。だが、現世で権力を持つ大人の世代の多くは、「まだ大丈夫」と気づかない素振りである。自然現象の「異常さ」の増加と同様に、人類の認知の「異常さ」も際立ってきたようだ。

 

http://www.fao.org/emergencies/crisis/desertlocust/intro/en/

http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html