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コンクリートがれきと廃材から、リサイクルコンクリート。既存のコンクリートより強度上昇。CO2も減少。サーキュラーエコノミーと温暖化対策に貢献。東大生産技術研と民間の協働(RIEF)

2020-02-10 23:20:02

concrete1キャプチャ

 

 コンクリートがれきと廃材から、新たな土木・建設用の材料を生み出すことに、東大の研究者と民間企業のコラボチームが成功した。いわば「リサイクルコンクリート」で、曲げに対する強度は既存のコンクリートより10倍も高まるという。製造時に新たなセメントを使わないことから、CO2の発生量も減る。廃棄物減量によるサーキュラーエコノミーと温暖化対策の両面の効果が期待される。

 

 (写真は、製造したリサイクルコンクリート。上段は㊧が廃木材、㊨がコンクリートがれき。下段は、右にいくほど、コンクリートがれきの割合が多い)

 

 開発をしたのは、東大生産技術研究所講師の酒井雄也氏と、材料メーカーのバイオアパタイト(滋賀県彦根市)、大野建設(神奈川県愛甲町)のチーム。

 

Concrete2キャプチャ

 

 製法は、コンクリートがれきと廃木材を粉砕して混合し、熱を加えながら、加圧成形するホットプレス方式で作る。混合・加熱することで木材に含まれるリグニンが接着剤のような働きをして、材料の強度を高めるという。製造条件をうまく調節すれば、既存のコンクリートよりも強度が高くなる。

 

 リグニンは木材以外にも多くの植物に含まれる。このため、野菜くずや落ち葉、製紙工程で副産物として発生するリグニンなども同じようにコンクリートがれきと混ぜ合わせる原料になる。リグニンは難分解性だが、特定の木材腐朽菌によって生分解される。リサイクルコンクリートを使うことでがれきの処分が容易になり、環境負荷が低下することが期待される。

 

Cocrete3キャプチャ

 

 わが国では、ビルの建て替え等で毎年約3500万㌧のコンクリートがれきが発生している。コンクリートがれきのリサイクル率は98%と高いが、そのうちの約9割は路盤材料として、道路建設の際に舗装の下に埋められている。資源の循環(サーキュラー化)にはつながっていない。またわが国の道路整備はかなり行き渡っていることから、路盤材としての再利用需要は減少傾向にある。

 

 コンクリートがれきのリサイクル率の残りの1割は、砂や砂利を取り出して新しいコンクリートの製造の際に再利用している。ところが、取り出した砂や砂利の表面に付着物があると、製造したコンクリートの性能が低下するので、付着物の除去が必要で、その工程のためには多くのエネルギーと手間がかかる問題がある。

 

Concrete4キャプチャ

 

 廃木材も、毎年約800万㌧を超える量が発生している。その多くは最終的に焼却や埋め立て処分されており、こちらもリサイクルされていない。今後、昭和40年代に作られた建築物の更新や国内の木材資源の活用に伴い、より多くの廃木材の発生が予想されており、リサイクル化が課題となっている。

 

 これらのがれき・廃材のリサイクルコンクリート化は、がれきや廃材の高付加価値化につながる。まさにサーキュラーエコノミーに資する技術だ。また同技術を応用して、CO2排出量の多いセメントの代わりに、植物で砂や砂利を接着した新たなコンクリートの製造も可能という。都市再開発が進む海外でも応用が期待される。

http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3241/