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「エコフレンドリーな死後ケア」。火葬、土葬よりも、「コンポスト葬」のパイロット事業が米国で成功。死後の堆肥化で、環境負荷を下げ、草花の一部に(RIEF)

2020-02-19 22:54:12

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 「エコフレンドリーな死後ケア」が欧米で話題になっている。死体を土葬でも、火葬でもなく、コンポスト(堆肥)化するのだ。野菜屑の様に堆肥にして、花や木の肥料にする。土葬のように場所をとらず、火葬のように焼却によるエネルギー消費やCO2発生がないので「エコフレンドリー葬」だという。それに「死後、焼かれる」という「不安(?)」もない。すでに米国では世界初の「コンポスト葬儀」のビジネス化も予定されているという。

 

 (写真は、ウッドチップ等とともに堆肥化されるイメージ)

 

 先週末、米シアトルで開いた「American Association for the Advancement of Science」の会議で、ワシントン州立大学のLynne Carpenter-Boggs教授が「コンポスト葬」について説明した。同教授は「コンポスト葬」を進める米社「Resomation」と共同で、パイロット事業として6人のコンポスト化の実証実験を行い、安全かつ効果的な堆肥化に成功したという。

 

 ワシントン州は昨年5月に全米で初めて、コンポスト葬を法的に認めている。自然有機還元として知られる手法で、一人の死体を4~6週間で、手押し車2台分の堆肥に変えることができるという。教授らのパイロット事業では、死体を六角形のスチール製のコンテナの中に、ウッドチップやアルファルファ、麦わら等とともに格納した。湿度とCO2、窒素、酸素の量を注意深くコントロールすることで、同システムは、通常の堆肥化を一気に加速する好熱熱菌などの高温を好む微生物が、もっとも活動し易い完全な環境を作り出すことができるという。

 

こんな感じで、あなたも死後は「堆肥」に(?)
こんな感じで、あなたも死後は「堆肥」に(?)

 

 Carpenter-Boggs教授は「死は我々の人生のプロセスにおいて、それほど大きな環境インパクトを及ぼすものではないのは確かだ。しかし、それでもわれわれは土葬や火葬ではない葬儀の仕方を探し求めたい」と取り組みの意義を指摘する。そして、「十分な原材料があると、微生物の活動が始まり、好熱菌の働きが驚くほど活発になる」と、コンポスト葬の実現可能性を強調している。

 

 コンポスト葬では、人の骨や歯なども安全に堆肥化される。ただ、ペースメーカーや入れ歯、その他の人工物は回収され、リサイクルされる。また堆肥土壌にはごく少量の大腸菌群も含まれるが、堆肥としての安全性に問題はない。したがって、堆肥を草花、野菜の肥料として十分に使えるという。亡くなった人の「命」を栄養にしたバラが咲いたり、キャベツやトマトが食べられたりするわけだ。

 

 同教授によると、米国では火葬に際して、一人当たり80万バレルの石油で燃やすという。これはロンドンからローマへの飛行機の燃料と同量。CO2排出量も相当多い。土葬の場合でも、埋葬する場所の確保が問題になることに加え、死体に施す防腐剤が地下水に影響するケースもある。また棺桶は木製やメタル製(米国)などで、自然資源を使用し、リサイクルせずに埋めてしまう。これに対して、コンポスト葬はサーキュラーエコノミー風でもある。

 

 コンポスト葬だけではない。アルカリ性の水溶液で加水分解する「水葬」も米国の複数の州で認められている。水葬用のシステムも別途、開発されている。コンポスト葬や水葬用に、死者に着せる衣装も、生分解性の製品も製作されているという。

 

 日本も、遺灰を海に撒いて「水葬」と呼んだり、木のそばに遺灰を埋めたり、バラまいたりして、「樹木葬」や「散骨」とか言ったりしているが、よく考えると、みんな「火葬後」の遺灰の処分でしかない。一部の地方で土葬がまだ残っているところはあるようだが、多くの都市や市町村では、死後、火葬が当たり前と考えられている。しかし、火葬というのはあくまでも選択肢の一つでしかない、というのが欧米の発想のようだ。

 

 火葬はエネルギー消費、CO2発生、それに「焼かれて熱い(死んでいても)」等を考えると、決して、ベストな処理法ではないのかもしれない。死後、堆肥になって地球の自然の一部になっていく。これこそ、本当の樹木葬のように思える。葬儀のESG化と呼べるかな(?)。

 

https://www.theguardian.com/society/2020/feb/16/human-composting-could-be-the-future-of-deathcare