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グレタ・ツゥーンベリさんをめぐる新たな動き。ノーベル平和賞のマララさんと共鳴。いじめや摂食障害等で家庭崩壊の危機にあったことを母が語る。『ライバル』の反グレタ少女が登場(RIEF)

2020-02-27 19:49:33

Greta89キャプチャ

 

 スウェーデンの環境活動家、グレタ・ツゥーンベリさんに新たな関心が集まっている。気候変動を求める抗議行動への参加のため英国を訪問したグレタさんはノーベル平和賞を受賞したマララ・ユサフザイさんと「歴史的な会合」を持った。最近、グレタさん自身と母親らが出版した本では、学校での“イジメ”や、登校拒否、摂食障害等の壮絶な日々が明らかになった。一方、ドイツでは「反グレタ」の19歳の少女が「ライバル」として名乗り出た。

 

 (写真は、若いころのツゥーンベリさん一家。父のスヴァンテさん㊨に抱かれているのがグレタさん。㊧は母マレーナさんと、赤ちゃんは妹のベアタさん)

 

 グレタさんは、28日に英ブリストルで開く「気候スト」に参加するため訪英し、途中、オックスフォードに寄って、同大学で学ぶマララさんに会った。女性の権利を求める活動を一人で始めたマララさんと、気候対策を一人で訴えてきたグレタさん。

 

英オックスフォード大で会ったグレタさん㊧とマララさん㊨
英オックスフォード大で会ったグレタさん㊧とマララさん㊨

 

 マララさんが学ぶ同大カレッジのレディ・マーガレット・ホール校で会った二人は、校内のベンチに座った写真をそれぞれツイッターで投稿した。ツイッターによると、グレタさんは、女子教育の向上を訴えてきたマララさんと会ったことについて、「私の(人生の)お手本と出会えた」と喜びをコメント。マララさんも「私が授業をサボっても会いたい友人は彼女だけ」とツイートした。

 

 2人が何を話したかは不明。だが、二人の「共闘」には多くの期待が集まる。同校のアラン・ラスブリジャー校長は、グレタさんが、学生たちに「科学、投票、抗議行動の限界、投資引き揚げ、(温室効果ガスの)本当のゼロと実質ゼロなど」を語ったことを紹介した。

 

アラン・ラスベルジャーさん
アラン・ラスブリジャーさん

 

 ちなみに、このラスブリジャーさんは、英ガーディアン紙で名編集長だった人で、米国家安全保障局(NSA)の元社員だったエドワード・スノーデン氏による機密書類を掲載し、ピューリツァー賞を受賞したことで知られる。

 

 グレタさんがスウェーデン議会前で温暖化対策を求める「一人ストライキ」を始めるまでの家庭事情を赤裸々に綴ったのが、最近出版された母親のマレーナ・エレマンさんらグレタさんの家族共著の「Our House Is on Fire: Scenes of a Family and a Planet in Crisis(我が家は大変)」。 「我が家」は、家族と地球の両方を指している。https://guardianbookshop.com/our-house-is-on-fire-9780241446737.html

 

 同著によると、グレタさんは自閉症の一種の「アスペルガー症候群」だが、症状がわかるまで学校では変人扱いされるなどのイジメを受け、友達無し、登校拒否、拒食症等で、オペラ歌手のマレーナさんも父親の俳優のスヴァンテさんも、苦しい日々を過ごしたことが詳細に描かれている。

 

 グレタさんへの対応に追われ、妹のベアタさんもADHD(多動性症候群)になるなど、一家全員が追い詰められていく。そうした苦闘が長期化する中で、グレタに向き合ってくれる学校の先生に出会うなど、周辺の理解も進んで、少しずつ病気が好転していく。同時にグレタさんは温暖化問題の深刻さに目を向けるようになっていく経緯も綴られている。

 

 オペラ歌手として日本を含め世界中を公演していたマレーナさんはグレタさんから「セレブ」と批判される下りもある。確かに普通の家庭よりも豊かな家族だが、それ故に、豊かさの半面で引き起こしている温暖化問題や廃棄物問題、人権無視等の「負の側面」に、感受性の強いグレタさんが、人一倍、心を痛めていたこともわかる。

 

現在の一家。㊧から妹ベアタ、グレタ、母マレーナ、父スヴァンテ
現在の一家。㊧から妹ベアタ、グレタ、母マレーナ、父スヴァンテ

 

 マレーナさんも驚くのは、そこからグレタさんは、たった一人で世間全体を変えようと行動に移していった点だ。「大変だな」「困ったな」と感じても、多くの人が「動かず」にいる中で、彼女は「大変だから変えないと」「困ったら直さないと」と立ち上がったわけだ。

 

 そんなグレタさんに、世界の子供たちや若者が賛同し、ともに気候変動への対応を求める抗議行動の輪を広げている。一方で、グレタさんの影響力を懸念する批判や中傷も後を絶たない。トランプ米大統領による嘲笑はその代表。そこへ、「反グレタ」を鮮明にする19歳の「温暖化懐疑論者」の少女が名乗りをあげ、「若者世代の対決」を強調する動きが出てきた。

 

 「反グレタ」を宣言するのは、ドイツ出身のナオミ・セイプト(Naomi Seibt)さん。自身を「気候懐疑論者」「気候現実主義者」と呼ぶ。今週 、米ワシントンで開く「Conservative Political Action Conference(CPAC)」に出席し、トランプ大統領らとともにスピーチをするという。

 

ナオミ・セイプトさん
ナオミ・セイプトさん

 

 セイプトさんは、ドイツで台頭している極右政党AfDのユース・メンバーとみられるが、本人はAfDとの関係を否定している。現在は保守的でリバタリアンの公共政策シンクタンクとして知られる米Heartland Instituteに勤務している。ドイツから同Institute入りした経緯は不明。

 

 セイプトさんはユーチューブで、グレタさんが強調する温暖化に関する科学を取り上げ、「科学は知的謙虚さを土台にしなければならない。科学的説明を単に促進するのではなく、科学ではとらえられないことへの疑問を持ち続けることが重要。現在の気候科学は科学とは言えない」と挑発的発言をしている。https://www.youtube.com/watch?v=WS90yFZnfBU

 

 セイプトさんのネットでの活動をみると、あきらかにグレタさんを模倣し、グレタさんを挑発する筋書きを演じている様子が伝わってくる。若者世代の温暖化認識を混乱させようと、誰かが仕掛けているようだ。米産業界の温暖化懐疑論者等があらゆる手段を使ってグレタさんを本気で攻撃し始めたと思われる。ドイツの極右政党と関係の深い少女が、トランプ政権肝いりのシンクタンクに「雇われ」て、反温暖化を語る絵姿は不気味だ。

 

 グレタさん、負けないで!

 

                               (藤井良広)

 

https://www.theguardian.com/uk-news/2020/feb/25/greta-thunberg-and-malala-yousafzai-meet-at-oxford-university

https://www.theguardian.com/environment/2020/feb/23/great-thunberg-malena-ernman-our-house-is-on-fire-memoir-extract

https://www.theguardian.com/us-news/2020/feb/25/anti-greta-teen-activist-cpac-conference-climate-sceptic