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中国・武漢市。新型コロナウイルス肺炎での「閉鎖」で、企業活動停止が長期化。大気汚染が飛躍的に改善。NASA等の衛星写真で明確に(RIEF)

2020-03-02 11:59:57

Nasa1キャプチャ

 

  新型コロナウイルス肺炎が蔓延する中国の武漢市は、企業・工場の活動を停止し続けているが、その結果、同市を覆ってきた窒素酸化物(NOx)等の大気汚染物質の濃度が飛躍的に低下していることがわかった。また、北京等の中国全体でも「青空」が戻っている。NASA(米航空宇宙局)等の衛星観測で判明した。

 

 (写真は、㊧が1月10~20日、㊨が2月10~25日のMOxの濃度)

 

 NASAによると、2月の中国のNOxの濃度は「大幅に削減」した。NOxは自動車の排ガスや、発電所、建設機械の稼働等から排出され、光化学スモッグの原因物質になるほか、ゼンソク等を引き起こす。またPM2.5も急減しているという。

 

 中国は石炭火力発電が発電の6割を占めるほか、家庭の石炭暖房、ガソリン車の排ガス等も重なって、特に冬期に各地で大気汚染が深刻化する。大気汚染は呼吸器疾患を高めるだけでなく、早死の原因にもなっている。

 

上が従来の汚染状況、下が現在の武漢周辺
上が従来の汚染状況、下が現在の武漢周辺

 

 しかし、上記の衛星写真が示すように、中国政府がコロナウイルス発生源となった武漢市の閉鎖を決めた1月23日以前と以降の中国の上空の大気状況を比べると、明瞭な大気汚染の減少がみられる。衛星写真では、オレンジ色が濃いほど、自動車や工場などからのNOx濃度が高いことを示している。

 

 NASAの宇宙航空センターの大気汚染研究者のFei Liu氏は「こんなに広範囲にわたって、特別のイベントによって大気汚染が劇的に改善した事例は、初めてみた」と驚きを示している。同氏によると、リーマンショックが発生した2008年の経済不況時にもNOx濃度の低下が観測されたが、低下のスピードは緩やかで、今回のような急激な低下は初めてとしている。

 

 中国では1月後半から2月初めにかけての春節時期に、経済活動が停止して大気汚染物質が低下することが知られている。だが、春節が終わると再び汚染濃度は上昇するのが常だった。しかし、「今年は大気温泉濃度の低下率は例年以上に大きく、その後も継続している」と指摘している。

 

 EUのESA(欧州宇宙機関)の衛星写真でも同様に、武漢周辺を中心に大気汚染物質濃度のドラスティックな改善が観測されている。コロナウイルスによる感染か、大気汚染による呼吸器疾患か、自然とのバランスを欠いた経済・生活活動のツケが健康に影響を与えているといえる。


https://www.nasa.gov/

https://www.bbc.com/news/world-asia-51691967