HOME |旧ソ連・チェルノブイリ原発の使用済核燃料の乾式中間貯蔵センターが完成。現在の不安定な一時保管の燃料がようやく安定保存に。100年間の貯蔵可能(RIEF) |

旧ソ連・チェルノブイリ原発の使用済核燃料の乾式中間貯蔵センターが完成。現在の不安定な一時保管の燃料がようやく安定保存に。100年間の貯蔵可能(RIEF)

2020-09-11 22:49:43

EBRD003キャプチャ

 

 欧州復興開発銀行(EBRD)は、ウクライナのチェルノブイリ原発で事故後、仮保管状態が続いていた使用済核燃料等をより安全な中間貯蔵センターに移管する作業を開始した。同センターは国際協力によって4億㌦を投じて完成した。1986年に事故を起こしたのは同原発の4号機だが、残りの1~3号機で使われた使用済核燃料や高放射能汚染物質は一時的にプールに保管されている。中間貯蔵センターでは最低でも100年以上保管されるという。

 

 (写真は、チェルノブイリの使用済核燃料を中間保管する貯蔵センター)

 

 中間貯蔵センター(Interim Storage Facility 2 :ISF-2)はすでに2017年には完成していたが、このほど、実際に放射性物質を使ったホットテストを開始した。世界最大の使用済核燃料の中間貯蔵施設となる。1~3号機は事故を起こした4号機と同じ旧ソ連開発の RMBK型原発。いずれも事故後、いったん閉鎖されたが、段階的に再稼働された。しかし、その後、改めて閉鎖され、2000年に3号機が操業を停止して以来、同原発全体が閉鎖されている。

 

使用済核燃料を保管する乾式収納容器
使用済核燃料を保管する乾式収納容器

 

 1~3号機で使用されていた核燃料は、原子炉から取り出し、2万1000以上にのぼる燃料集合体と追加吸収材2000個を合わせてサイト内の湿式中間貯蔵施設(ISF-1)と冷却プールで保管中。しかし、3号機の閉鎖からでもすでに20年を経過し、設備の劣化が懸念されていた。そこで、国際社会の協力で、より安全性の高い乾式貯蔵方式の中間貯蔵センターに移すことになり、このほど実際の放射性物質を使ったテストを開始した。

 

 仮保管のプールから新設の中間貯蔵センターまでは鉄道を敷設して運搬する。貯蔵センターにおいて、分割・乾燥した後、特別に設計した二重壁構造の乾燥式保管容器(DWC)232基に格納、それらの容器は、水平定置するコンクリート製の貯蔵モジュールに保管する。モジュールには、廃棄物を不活性させるガスが充満され、100年間は保管できるという。

 

 DWCの設計製造からシステム運営は米ホルテック・インターナショナル社が主導するコンソーシアムが引き受けた。ファイナンスはEBRDが主導した。ホルテック社は2007年から、ISF-2の建設工事を国営チェルノブイリ発電所・運営専門会社(ChNPP)から請け負っている。EBRDのファイナンスには、欧州各国のほか、日本、ロシア、米国、カナダなども参加している。

 

 EBRDの原子力安全担当のBalthasar Lindauer氏は「安全で確実な中間貯蔵施設の確保は、チェルノブイリでの安全確保上の最大の課題の一つ。今回、貯蔵施設での本格的な試験が始まったことは、大きな一歩だ。技術的にいろんな課題はあったが、ここまでこぎつけることができた」と成果を強調している。

 

 わが国では、各電力会社は原発敷地内に使用済み核燃料を保管しており、保管限度に近づいているとされる。青森県むつ市に使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設しており、原子力委員会は今月2日、同施設の安全審査について事実上の合格となる審査書案をまとめている。同施設では東京電力と日本原子力発電の原発で出た使用済み燃料を一時保管する計画で、2021年度の操業開始を目指すとしているが、当初の予定から20年以上遅れている。

https://www.ebrd.com/news/2020/hot-testing-starts-at-chernobyl-spentfuel-storage.html