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日米英等の原子力産業団体が連名で、「気候リーダーズサミット」に対し、「クリーンエネルギーとしての原発」をアピールする共同声明発表。事故リスクや安全性については言及せず(RIEF)

2021-04-23 17:47:43

JAIF001キャプチャ

 

 米国主催の「気候リーダーズサミット」に参加した世界の首脳に向けて、日本原子力産業協会(JAIF)をはじめとする各国の原子力産業団体が連名で、温室効果ガス削減対策に原子力エネルギーの活用を促す共同声明を発表した。声明では「現在世代と将来世代に対して、今、利用できるもっとも効率的な低炭素電力の選択肢を閉ざすな」と強調している。東京電力の福島第一原発事故や現在の汚染水処理の課題等については一切、言及していない。

 

  共同声明を発表したのはJAIFのほか、カナダ原子力協会、欧州原子力協会(FORATOM)、米国の原子力エネルギー機関(Nuclear Energy Institute)、英国の原子力産業協会(Nuclear Industry Association)、世界原子力協会(World Nuclear Association)の6団体。

 

 声明では、サミットに参加した世界の首脳に向けて、「気候変動対策への挑戦という緊急性と大きな影響度に適応するために、われわれはすべてのセクターの問題解決に資する、現実的で、化学に基づいたアプローチをとらねばならない。世界は現在、保有するクリーンエネルギーの数倍のクリーンな発電が必要。原子力はそうした技術の一つだ」と、原子力をクリーンエネルギーとしてアピールした。

 

 そのうえで、原子力エネルギーの利点として、すでに世界で60年以上も操業し続けており、低炭素電力供給の最大の電源だと指摘。再生可能エネルギー発電の不安定性を柔軟に補完し、電力網のレジリエンスを高めるとも強調している。気候変動緩和の面での費用対効果が高く、既存の原発はもっとも低コストで、新規原発はシステムコストや排出削減効果を含めると、やはり競争力が高いとしている。

 

 さらに原発の多様性もアピールしている。電力供給だけでなく、熱供給、海水からの水製造、グリーン水素製造、合成カーボン燃料等にも活用できると指摘。また長期にわたって熟練労働を確保し、地域経済にも貢献できる等もメリットに数えている。

 

 原発、原子力エネルギーの利点を列挙する一方で、この60年間に発生した、旧ソ連でのチェルノブイリ事故、米スリーマイル島事故、そして日本の東京電力福島第一原発事故等による放射能汚染による環境被害や健康被害、地域社会への影響等についての記載はない。

 

 操業中にCO2は出さないとしても、事故が起きると膨大な放射性物質が万年の単位で放出されることも記載していない。福島事故からやっと10年、「のど元過ぎる」のは早すぎる。

 

 JAIFには現在も東京電力ホールディングスをはじめ、各電力会社や、日本製鉄、日立製作所、三菱重工、三菱商事、東京海上日動、日本政策投資銀行、北海道、石川県、福井県等、企業、団体、自治体等388機関が参加している。「原子力ムラ」である。

https://www.world-nuclear.org/press/press-statements/climate-leaders-need-nuclear-energy-to-achieve-net.aspx

https://www.jaif.or.jp/international/leaders_summit_on_climate