ドイツ、12月31日に原発3基を稼働停止。残る3基も22年末までに停止し、国内の脱原発完了へ。エネルギー・電力の柱は再エネを軸。脱石炭火力も「2038年目標」から前倒しへ（RIEF）
2022-01-01 00:36:18
ドイツの電力会社E.ONとRWEは2021年12月31日、ドイツ国内で稼働中の原発6基のうち3基の稼働を停止した。日本の東京電力福島第一原発事故を受けてメルケル前政権が決定した脱原発政策に沿う。残る3基についても2022年中に停止し、脱原発を実現する。メルケル政権を引き継いだショルツ現政権は脱原発政策も変更なく進め、エネルギー・電力源は再生可能エネルギーを柱として展開する。
31日の大晦日で稼働を停止した3原発は、ドイツのシュレースヴィヒホルシュタイン州シュタインブルクにあるブロークドルフ（Brokdorf）原発、ニーダーザクセン州のハーメルンピルモント地区のグローンデ（Grohnde）、バイエルン州ギュンツブルク地区のグンドレンミンゲン（Gundremmingen）のユニットC原発の3基。前2基はE.ONの子会社のPressenElektraが、グンドレンミンゲン原発はRWEが主要株主だ。
いずれもこれまで約35年間、稼働してきた。稼働を停止した3基を含め、2021年中の6基の原発はドイツ全体の発電量の12％分を供給した。同年の発電量に占めるシェアは再エネが41%、石炭火力が28%、天然ガスが15%だった。
ドイツは石炭火力についても2038年の全廃を掲げている。昨年12月に発足した社会民主党（SPD）、緑の党、自由民主党（FDP）の連立政権の連立協定では、脱石炭の完了時期を「理想的には」2030年に前倒し、2030年に自然エネルギーで総電力需要の80％を供給することなどを打ち出している。
原発をめぐっては、EUのサステナブルファイナンス行動計画のタクソノミーのリスト化で、原発を「クリーンエネルギー」としてタクソノミーに含めることを、フランス、フィンランド、東欧諸国等が主張している。だが、ドイツ経済気候保護相Robert Habeck氏は「ドイツ国内では、脱原発政策を弱めようという動きはみられない」と強調。定通り、22年末までに残りの3基も稼働を停止する方針としている。
ドイツのエネルギー企業で構成するエネルギー産業連合BDEW代表のKerstin Andreae氏も「ドイツのエネルギー産業にとって、原発廃止はすでに最終局面に入っている」と述べ、今回の3基に続いて、22年の「原発ゼロ」は織り込み済みとのスタンスだ。
環境団体も、予定通りに3基の稼働が停止され、22年中の全基稼働が見込める状況に入ったことを歓迎している。ただ、環境団体BUNDのArne Fellermann氏は「まだ完全な脱原発ではない。別途、ウラン濃縮プラントがあるほか、研究炉もある」と指摘している。
ウラン濃縮プラントは、ノルトラインヴェストファーレン州のボルケン地区のグローナウ（Gronau）にある。バーバリア州のガルヒング（Garching）にはFRMⅡ（Forschungsreaktor München II）プロジェクトの研究炉がある。研究炉は兵器クラスのウランを燃料として稼働しているという。
稼働停止による原発従業員の雇用については、各原発の廃炉作業が2040年前後までかかることから、石炭火力等の廃止問題とは異なり、大きな問題は生じないとされている。グンドレンミンゲン市長のTobias Buehler氏は「原発従業員は稼働停止後、原発解体の廃炉作業で、今まで以上に忙しくなる。廃炉作業は今後10~20年はかかる」としている。
E.ONによると、廃炉コストは、1基当たり11億ユーロ（約1430億円）と見込んでいる。E.ONは2020年に、廃炉期間の原子炉解体や放射性廃棄物処理等の費用として、94億ユーロの引当金を計上している。
残る3基の原発は、エッシェンバッハ近辺のイザール2（Isar 2）、ニーダーザクセン州のエムスランド（Emsland）原発、バーデン＝ヴュルテンベルク州のネッカーヴェストハイムⅡ（Neckarwestheim II）の3基。
脱原発・再エネ主導はドイツが世界に先駆けて実証する形だ。原発事故、再エネ政策の紆余曲折は、日本が「悪いモデル」になってきたかもしれない。ドイツの「実証」から学ぶべきことは多い。
https://www.nbcnews.com/news/world/germany-pull-plug-3-its-last-6-nuclear-power-plants-n1286771
Research Institute for Environmental Finance