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ウクライナでの原発攻撃事件で、メドヴェージェフ前ロシア大統領が、「(ウクライナで起きたことは)原発を抱えるEUでも偶然に起き得る」と発言。ロシアが隣国の日本の原発は(?)(RIEF)

2022-08-15 22:55:28

Medvejefキャプチャ

 

 今月に入って、ロシアが侵攻するウクライナのザポリージャ原発で火災の発生やロケット弾の着弾等が起きた問題で、ウクライナとロシアがお互いを非難しているが、ロシア前大統領で現在、国家安全保障会議副議長を務めるディミトリ―・メドヴェージェフ(Dmitry Medvedev)氏は、「西側諸国は火災は偶然に起きたと指摘する。ならば、EUも原発を抱えており、そこでも(ウクライナと同様のことが)偶然に起きる可能性があるということだ」と述べた。EU側は同氏の発言を、原発サイトを狙った攻撃はEUでも起き得るとする「間接的な脅し」と受け止めている。日本の原発サイトもそのリスクがあるともいえる。

 

 (写真は、メドヴェージェフ前ロシア大統領。プーチン大統領の忠実な腹心だ)

 

 ザポリージャ原発は欧州最大の原発サイト。同原発は3月にロシア軍によって占拠されたが、原発の運転はウクライナ側の国営原子力企業「エネルゴアトム」が続けている。しかし同社によると、今月5日、原発敷地内が砲撃を受け火災が発生、送電網が損傷する事態が発生。6日にはロシア軍によってロケット弾が撃ち込まれたと発表した。11日には攻撃により原子炉一基が緊急停止したことが報告されている。

 

 これに対して、ロシア側は「攻撃は、ウクライナ軍によるもの」と発表し、双方で非難の応酬が続いている。メドヴェージェフ氏は先週、自らTelegraphで「ウクライナ側とその同盟国はロシア軍が同地域を攻撃したと非難している。だが、そうした主張は明らかに100%ナンセンスだ。ロシア嫌いの人でもそんなバカげた主張はしない」とツィートした。

 

ロシア軍が管理するザポリージャ原発
ロシア軍が管理するザポリージャ原発

 

 そのうえで、「キエフとその同盟者たちは、『ロシアがやった』と言っているが、(仮にウクライナがやった場合でも)偶然そうしたことが起きたとしている。どうしてこんなことが言えるのか。EUも原発を抱えていることを忘れるな。偶然の事故だというなら、EUでも同様のことが、今後、偶然に起きるということだ」と指摘した。

 

 EUで波紋を呼んでいるのは、このメドヴェージェフ氏の発言が、ロシアとの対立がエスカレートすると、EU各地にある原発がテロの標的になり得ることを示唆したと受け止められるためだ。原発の占拠は、ザポリージャ原発で起きているように、占拠したロシア軍が原発を盾にして、そこからウクライナ側を攻撃できる一方で、ウクライナ側は原発内のロシア軍を攻撃しづらいという戦術上の「彼我の格差」が生じる。

 

 少し考えると、この問題は、ロシアを隣国として抱え、北朝鮮からのミサイル攻撃のリスクも指摘される日本にも、同様に当てはまる。万一、ロシアと日本の対立が生じると、サハリンⅡプロジェクトの「接収」といったレベルにとどまらず、ロシア軍が日本に進出してくるリスクもゼロではない。自衛隊ではこれまでもロシア軍による北海道占領のシュミレーションを実施してきた。

 

 仮にそうなると、北海道電力が抱える泊原発は、ロシア軍にとっては「ウクライナでの教訓」を生かして、真っ先に占領対象にあげられるだろう。また日本海側に点在する関西電力、中国電力等の原発も、北朝鮮等との対立が激化すると、真っ先に占領されるか、あるいは攻撃される可能性を否定できない。

 

 ロシアのウクライナ侵攻で表面化したリスクの一つが、こうした国内原発の被攻撃・被占領リスクだ。だが、わが国政府や政治家は、「ロシアへの信頼」がよほど厚いのか、目の前のウクライナでロシアが展開している「原発人質戦略」への脅威論はほとんど考慮されていないようだ。むしろ、原発再稼働論を超えて、原発新設論を声高に唱える向きも出ている。

 

 メドヴェージェフ氏の発言は、EUのウクライナ支持国への「ブラフ」であると同時に、ロシアの周辺国家に対しても向けられていることを見逃してはならない。ロシアが約束を守らない国であることは、サハリン開発の見直しだけでなく、1945年の日ソ中立条約破棄による千島列島侵略行動でも明らかだ。

 

 ザポリージャ原発での火災や攻撃の影響について、国際原子力エネルギー機関(IAEA)は、同原発の状態を調査したいとしている。だが、戦闘状態が続く現状では身動きが取れない。国連事務総長のアントニオ・グテレス氏は、両軍に対して同原発周辺を非軍事地帯とするよう呼びかけている。G7(先進7カ国首脳会議)は、ロシアに対して同原発をウクライナ側に返還するよう要請している。

 しかし、ロシア下院外交問題委員会の議長を務めるLeonid Slutsky氏は「ザポリージャ原発のコントロールをウクライナ側に返還するというのは、安全性を担保することを考えると、ばかげた主張だ。G7等の要求は、原発テロリズムを支援するものでしかない」と否定している。

https://t.me/medvedev_telegram/11

https://www.euractiv.com/section/europe-s-east/news/accidents-can-happen-at-european-nuclear-plants-too-russian-ex-president-says/